中島翔哉はポルティモネンセの「宝石」 獅子奮迅の活躍ぶりで、称賛を集める

市之瀬敦

中島翔哉は獅子奮迅の躍動ぶり

第15節までで6ゴールはチームの得点王。残留を目指すチームをけん引している 【Getty Images】

 7年ぶりにプリメイラ・リーガに戻ることになったポルティモネンセは当然のように戦力の補強に動いた。その中の1人にFC東京の中島翔哉が含まれていたのである。小柄だがスピードとテクニックには定評のある中島がどれだけポルトガル・リーグで通用するか注目していたが、9月2日、リーグカップのシャベス戦でデビューして以来、すぐにチームにフィットしてみせた。地元メディアに対し、「フロントも首脳陣も選手たちも皆が歓迎してくれた」と、新しい所属先に適応しやすかったことを明らかにしている。

 監督のビットル・オリベイラは、「昇格請負人」とでも呼ぶべき実績を持つ64歳のベテランだが、中島の特徴を生かすべく、4−3−3の左サイドアタッカーのポジションを任せている。中島も期待に応え、左サイドをドリブル突破したかと思えば、中央に切り込み思い切りのよいミドルシュートを放ち、相手チームの脅威となっている。第15節を終えたリーグ戦ではすでに6ゴールを決めており、チームの得点王(リーグ7位タイ)の地位をキープしている。

 中にはFCポルトの守護神イケル・カシージャス(元スペイン代表)から奪ったゴールも含まれているのだ。「ツバサ(大空翼)って君のことなのか?」、地元新聞紙がそう見出しをつけるのもうなずける獅子奮迅の躍動ぶりである。ちなみに、チームは18チーム中11位を維持している。

年明けにもステップアップの移籍か?

移籍の可能性が報じられた中島。年明けのステップアップはあるのか? 【Getty Images】

 先日、中島が2ゴールを決めた第12節トンデラ戦の実況を見ているとき、不思議な感覚に襲われた。ポルトガル人には「ショーヤ」という名前は発音しにくいらしく、実況アナウンサーも解説者も「ショイア」と口にしていたのである。「ショイア・ナカジマ!」。中島がボールタッチする度に2人はそう叫んだが、いつしか私の耳には「“ジョイア”・ナカジマ!」と響くようになっていた。

「ジョイア」とはポルトガル語で「ジュエル」、すなわち「宝石」のこと。「チームの宝、ナカジマ」。ポルトガルのメディアがそう認め始めたのではないか? そんなことを思ったのである。実際に、数日後、ある地元ジャーナリストが中島のことを「アルガルベの王冠の宝石」と表現しているのを目にした。きわめて貴重な選手という意味である。移籍してわずか4カ月足らず、中島はチーム内にしっかりと居場所を築いたといえよう。

 先月末、気の早いメディアは中島のフランスへの移籍の可能性を報じた。いや、それ以前にも、年明けの移籍期間に、ポルトガルリーグ内のもうワンランク上のチームへ移籍するに違いないという見方がされていた。今季の終わりまでは、順応がスムーズにいっているアルガルベに残るのがよいのではないかと個人的には思うが、ポルティモネンセのように残留を第一の目標とするクラブではなく、2月には、ヨーロッパでの戦いを目指すブラガやギマランエスのような古豪クラブのユニホームを着ているかもしれない。

 まずは地歩を固めるもよし。すぐにステップアップを目指すもよし。いずれにせよ、中島にはポルトガルリーグで最高の成功を収める日本人選手になり、後進が続く道を切り開いてほしい。

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著者プロフィール

1961年、埼玉県生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科教授。『ダイヤモンド・サッカー』によって洗礼を受けた後、留学先で出会った、美しいけれど、どこか悲しいポルトガル・サッカーの虜となる。好きなチームはベンフィカ・リスボン、リバプール、浦和レッズなど。なぜか赤いユニホームを着るクラブが多い。サッカー関連の代表著書に『ポルトガル・サッカー物語』(社会評論社)。『砂糖をまぶしたパス ポルトガル語のフットボール』。『ポルトガル語のしくみ』(同)。近著に『ポルトガル 革命のコントラスト カーネーションとサラザール』(ぎょうせい)

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