手で相手を“見る”パラ柔道の魅力 独自ルールが生み出す激しい攻防戦

スポーツナビ

激しい技の応酬が醍醐味なのがパラスポーツの柔道。日本のお家芸として東京パラリンピックでのメダルが期待されている競技の1つだ 【写真は共同】

 日本のお家芸「柔道」。パラリンピックでは視覚障がい者による競技として行われる。激しい技の攻防、そして一本勝ちの多さ。数多の障がい者スポーツの中でも1、2を争うアグレッシブさだ。「はじめ」の合図の瞬間から、技の応酬で一瞬の隙が雌雄を決する。選手も見る者も試合終了まで油断は一切許されない緊迫感が魅力と言える。

 開催まで1000日を切った東京パラリンピックでも柔道はメダル獲得が期待される競技だ。その中で注目されているのが男子90キロ級の廣瀬悠、女子57キロ級の順子の夫妻である。リオデジャネイロ大会では、五輪・パラリンピックを通じて3例しかない、夫婦そろっての出場で話題となった2人。さらに順子は同大会で銅メダルを獲得し、パラアスリートを代表する選手の1人となった。

 2人は陸上・十種競技の元全日本王者でタレントの武井壮さんがパラスポーツに挑戦するNHKの番組に出演(12月25日放送)。スポーツナビはこの収録に同席し、両選手にパラ柔道の魅力を聞いた。

最後の一瞬まで見逃せない

 パラリンピックの柔道は、ほかのパラスポーツと異なり、弱視や全盲など障がいの重さによるクラス分けはなく、健常者の柔道と同じく体重別で区分されている。また、基本的なルールや練習方法も同じのため、パラスポーツの中でも見ていて分かりやすい競技と言える。

 日本障害者柔道連盟の佐藤雅也強化副委員長(女子強化責任者)は「ルールは健常者の柔道とほぼ一緒、普段の練習では健常者とも乱取りをします。柔道は障がい者だ、健常者だとか分け隔てなく、根本的に変わらない。そこが一番の魅力でしょう」と力を込める。

 もちろん、視覚障がい者ならではルールも存在する。それは「両者が互いに組んだ状態で試合が始まること」。そして、これがパラ柔道をさらに魅力あるスポーツに昇華している。健常者の柔道では、試合の多くの時間を組み手争いに費やす。終盤ではポイントで優位に立った選手が組み手争いをしながら試合時間を使い、逃げ切りを図る戦術を取ることもある。一方で、パラ柔道は、組んだ状態から始まるため、序盤から技の掛け合いになったり、残り5秒から逆転の一本勝ちという展開も起こりやすく、ダイナミックな試合が展開される。最後まで諦めない選手の姿勢、最後の一瞬まで見逃せないのも醍醐味だ。

「一般の柔道よりも技の攻防が激しいですし、一本も取りやすい。おそらく見ている方にとって勝ち負けが分かりやすいので、楽しんでもらえると思います」(順子)

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