【新日本プロレス】勢いを加速させた新日本の2017年 1.4東京ドームへ年内最後の前哨戦

高木裕美

突出した人気と集客力・知名度を確立

2017年も勢いが増した新日本プロレス。オカダ(左)と内藤がけん引した1年でもあった 【写真:SHUEHI YOKOTA/宮木和佳子】

 新日本プロレス本興行としては年内最終戦となる18日の「Road to TOKYO DOME」東京・後楽園ホール大会では、札止めとなる1721人を動員した。

 2017年の新日本は、まさに順風満帆、上昇気流と追い風の相乗効果で、どんどん勢いを加速しながら突き進んでいく1年であった。

 新日本は1972年3月にアントニオ猪木によって旗揚げされ、今年が創立45周年。かつてはゴールデンタイムで放送され、社会現象を起こしたが、00年代には「冬の時代」を迎えた時期もあった。しかし、12年にブシロードの子会社となり、世間への露出が増加したことをきっかけに熱が高まり、いまや超満員札止めを連発。今年7月には米国にも本格進出し、日本プロレス界の中でも突出した人気と集客力・知名度を確立した。

 今年11月にテレビ朝日系列で放送された「アメトーーク!」の「プロレス大好き芸人ゴールデン」でも、「プロレス」と言いながら、ほぼ新日本プロレスだけが紹介されていたり、「プロレスファン」を公言するAKB48・松井珠理奈やオードリー・若林正恭が新日本しか見ていないように、「新日本にあらずんばプロレスにあらず」的な風潮すらあるほど、とにかく新日本は今、ノリに乗っている。今年はその人気が衰えるどころか、さらに過熱していくことになった。

オカダはIWGP戦で衝撃 内藤はLIJで旋風

今年はLIG旋風も巻き起こり、ファンからの支持も絶大となった 【写真:SHUEHI YOKOTA/宮木和佳子】

 その象徴が、団体の看板であるIWGPヘビー級王者“レインメーカー”オカダ・カズチカである。オカダは昨年6月に戴冠して以来、1年半に渡って王座を死守。しかも、その防衛戦の内容すべてが、オカダ、そして対戦相手の評価を高める、素晴らしいものであった。特に今年のプロレス大賞・ベストバウトを獲得した、1.4東京ドームでのケニー・オメガ戦は、世界に衝撃を与えた、実にエポックメイキング的な死闘となった。また、2.5札幌での鈴木みのる戦、4.9両国での柴田勝頼戦もすさまじく、6.11大阪でのオメガとの再戦では、60分フルタイムドローという新境地も開拓。まだ30歳のオカダが、これからも新日本プロレスにカネの雨を降らせ続けることは間違いない。

 また、新日本人気を加速させたもう1人の立役者が、ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンの“制御不能男”内藤哲也だろう。内藤は、今年開催された雑誌Numberの「プロレス総選挙」でぶっちぎりの1位を獲得。リング上では、IWGPインターコンチネンタル王座戦線で棚橋弘至と抗争を繰り広げ、真夏の祭典「G1 CLIMAX」では、4年ぶり2度目の優勝を達成。歯に衣着せぬ会社批判やベルトを破壊する暴挙を繰り返しつつも、観客の圧倒的な支持を集め、2年連続で東京スポーツ制定のプロレス大賞MVPを獲得した。

 かつて一世を風靡したnWo JAPANの再来ともいえる、ヒール軍団ブームを巻き起こした手腕は、大の新日本ファンであった内藤だからこそ成せるもの。もし、18年の1.4東京ドーム大会でIWGPヘビー級王者に返り咲いた場合、チャンピオンとしてどんな爆弾を投下するのかにも期待が高まるところだ。

 IWGPジュニアヘビー級王座戦では、“TIME BOMB”高橋ヒロムが人気・実力ともに大ブレーク。昨年末に凱旋帰国し、1.4東京ドームではKUSHIDAから秒殺勝利を挙げると、その後もリング内外で注目を集め、特に入場時に抱えている猫のダリルにまつわるドラマは、ネット上でも話題となった。その後、ベルトはKUSHIDA、ウィル・オスプレイ、マーティ・スカルへと移動したものの、その陰には常にヒロムの存在がチラついており、王座挑戦をアピールしようとしてはKOされる“お約束”も含めて、まさに“ヒロム劇場”であった。

 タッグ戦線では、ヘビー、ジュニアとも、王座が目まぐるしく入れ替わった。IWGPタッグ王座戦では、矢野通&石井智宏、天山広吉&小島聡、ハンソン&レイモンド・ロウ、タマ・トンガ&タンガ・ロア、ハンソン&ロウ、ランス・アーチャー&デイビーボーイ・スミスJr.といずれも短命。IWGPジュニアタッグ王座戦でも、ロッキー・ロメロ&バレッタ、金丸義信&タイチ、ロメロ&バレッタ、マット・ジャクソン&ニック・ジャクソン、田口隆祐&リコシェ、SHO&YOHへと移動した。来年は、長期政権を築くチームが現れるのか注目だ。

試合中の大ケガ、ベテランの衰退もあった

 活気づく一方で、明るい話題ばかりではなかった。3.3沖縄大会では、邪道のグリーンキラーを食らった直後に救急搬送された本間朋晃が中心性頸椎損傷で入院。4.9両国大会では、オカダとIWGP戦で死闘を展開した柴田勝頼が硬膜下血腫で手術を受けるなど、主力レスラーの負傷欠場が相次いだ。

 また、若手選手の台頭が目立つ一方で、天山広吉、小島聡、永田裕志、中西学の第三世代の衰退が顕著となり、今年の「G1 CLIMAX」「WORLD TAG LEAGUE」では惨敗続きという結果に。新日本の選手層が厚いからとはいえ、今年、新日本マットに約2年ぶりに舞い戻ってきた鈴木軍大将の鈴木みのるは、2月にオカダと真っ向勝負を繰り広げた上、4月にはNEVER無差別級王座を獲得。また、他団体ではDRAGON GATEの望月成晃がオープン・ザ・ドリームゲート王座を戴冠し、全日本プロレスの秋山準&大森隆男組も世界タッグ王者に君臨するなど、“アラフィフ”の同世代選手たちが第一線で活躍していることを思うと、第三世代の現状には、一抹の寂しさを覚えてしまう。

 とはいえ、オカダが5.3福岡でのIWGP王座V5直後にリング上からファンに訴えたように、本当に、プロレスラーは超人である。超人だからこそ、ケガを克服して立ち上がっていくドラマや、年齢を超越した戦いを期待したい。

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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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