オグリの奇跡、有終の豪脚ディープetc. 有馬記念引退レースをプレーバック

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15年ゴールドシップ 個性派らしい別れのあいさつ

 上記の馬たちのように有終の美を飾ることはできなかったが、それでも引退式では温かい拍手と声援とともに見送られた名馬もいる。それが11年ブエナビスタと、15年のゴールドシップ。

“牝馬の時代”を作った1頭、ブエナビスタの引退式には約6万人ものファンが残り別れを惜しんだ 【写真:中原義史】

 ブエナビスタはまさに2000年代後半から巻き起こった「牝馬の時代」を象徴する名牝。ウオッカ、ダイワスカーレットの2頭だけならある意味“突然変異”的な牝馬の活躍で済まされるかもしれないが、2頭の引退直後にブエナビスタが出現し、牡馬をなぎ倒したことで、「牝馬の時代」が確立されたように思う。

 そんなブエナビスタも有馬記念は2年連続2着と惜敗し、三度目の正直だった引退レースでも7着。国内では初めて掲示板外に敗れたわけだが、最後のこの敗戦でこれまでの戦績に傷がつくわけはなく、牡馬を相手に伍したブエナビスタの奮闘を多くの人は称えた。そして、今度は母ビワハイジから続く新・華麗なる一族の確立へ、名繁殖牝馬としての役目も期待されている。

大きな声でいななく、記念撮影に収まろうとしないなど、ゴールドシップは最後まで個性派らしい姿を見せてくれた 【写真:中原義史】

 ゴールドシップは引退までに4度、有馬記念に出走した。最初の参戦となった3歳時の12年で皐月賞、菊花賞制覇の勢いそのままに古馬を圧倒。一気に現役最強ホースへと登りつめた。ただ、その後は気性の荒さ・モロさが突如として顔をのぞかせるため、圧倒的な強さを見せたかと思えば、あっさり大敗するレースもあり、2015年のGI宝塚記念で歴史に残る大出遅れをしたりと、馬券の買い時が非常に難しい馬となった。それでも、そんなゴールドシップをファンは愛し、応援した。

 ラストイヤーとなった15年は天皇賞・春で横山典弘を背にドラマチックな勝利を挙げるも、その後は前述した宝塚記念で大きな出遅れが響き15着、ジャパンカップも8着と大敗続き。引退レースとなった有馬記念は最初の主戦・内田博幸とのコンビを復活させ、大きな着順での連敗中にも関わらずファンは1番人気に支持した。「それでもゴールドシップならやってくれる!」。そんな期待感を抱かせる馬だった。

 結果は8着に終わったものの、引退式では内田の涙を誘うスピーチに呼応するように大きくいなないたり、記念撮影で人垣の間にまったく入ろうとせず後ずさりしたりと、最後まで“らしい”キャラクターを貫いたゴールドシップ。勝っても負けてもこれほどまでにファンに愛された個性派最強馬という意味では、ここ10年では彼の右に出る者はいないのではないだろうか。

最強古馬テイエムオペラオー(右)が敗れ、若駒マンハッタンカフェが勝つ――世代交代のコントラストが色濃く出た2001年有馬記念 【写真は共同】

 これらのほか、01年テイエムオペラオーも最後を勝利で締めくくることはできず、デビュー以来最も悪い着順である5着でターフを去った。同じく引退レースだった同世代のライバル・メイショウドトウも4着に敗れる一方、頂点に立ったのは3歳マンハッタンカフェ。1つの時代が終わり、また新しい時代が始まる――そんなハッキリとした世代交代のコントラストを目の当たりにし、次代への期待感よりもむしろ、あれほど古馬戦線を席巻してきたオペラオー、ドトウの時代が本当に終わってしまうんだと、どこか物寂しさを感じたことを思い出す。ちなみに、テイエムオペラオーの引退式は年が明けた後の京都競馬場で、メイショウドトウといっしょにという粋な計らいがなされた。

今年は最後にどんなドラマが待っているのか

「有馬で引退」をテーマに、ざっと思い出に残るレースを振り返ってみたが、ここに挙げることができなかった年、馬でも、ファンひとりひとりに思い出深い有馬記念があるだろう。トウカイテイオーやダイワスカーレットも結果的に有馬記念がラストレースとなったわけだが、いずれも強烈なインパクトを残すレースだった。キタサンブラックのラストレースとなる2017年有馬記念もきっと、競馬界の歴史に刻み込まれるレースとなるはずだ。最後にどのようなドラマを見せてくれるのか、今からもうイブ決戦が待ちきれない。

(文:森永淳洋/スポーツナビ)

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