なでしこは楽譜を持たないオーケストラだ 個の強さは必要だが、「組織」の整理を
確実性を積み上げておかなければ
今のなでしこジャパンは楽譜を持たないオーケストラだ 【Getty Images】
たとえるならば、なでしこジャパンは楽譜を持たないオーケストラだ。即興がかみ合って美しいハーモニーを奏でれば、それは奇跡のような音楽となるだろう。世界大会のメダルが懸かった試合で成功すれば伝説のチームになれるが、大事な試合、格上との試合で望みどおりに奇跡が起こせるものでもない。確実性を積み上げておかなければ。
来年4月にはヨルダンで女子ワールドカップ(W杯)予選を兼ねた女子アジアカップが行われる。予選参加国8に対し、世界への切符は5枚。8チームはA・B2つのグループに振り分けられ、両グループ2位以内のチームと、3位同士によるプレーオフの勝者にW杯出場権が与えられる。
B組の日本はベトナム、韓国、オーストラリアとの争いで2位以内を目指す。万一、3位となっても、プレーオフの相手はタイ、ヨルダン、フィリピンのいずれかになると予想されるため(A組は中国の1位抜けでほぼ間違いない)、日本が取りこぼすとは、いくらなんでも考えられない(ちなみに北朝鮮はアジアカップの1次予選で敗れたため、すでにW杯本大会への道が絶たれている)。
19年W杯本大会、東京五輪に向けて
2019年のW杯本大会に向けて、チームに戦術を植え付けるにはまだ間に合う 【写真:田村翔/アフロスポーツ】
つまり、決め切る場面と奪い切る場面は個の強さが必要だけれど、その局面に至るまでの過程を組織的に整理した方が、弱点を補いつつ長所を発揮しやすい。何より世界の強豪国に「個の力で戦う」方針で挑むのは、まだ今のチームではリスクが大きい。
なでしこジャパンの監督には、1対1にひるまない、フィジカルを言い訳にしない個人に目をかけると同時に、個人を生かす組織のマネジメントが求められる。高倉監督がこれまで個人の課題を明確にするために、あえて組織論を持ち出すことを控えていたのなら、そろそろ封印を解いていい。
また、高倉監督が1人で頭を抱えてしまうようなら、日本サッカー協会も問題解決に向けたサポート体制を構築するなり、あるいは監督を交代させるなり、早めに手を打つべきだろう。