DeNA・宮崎、首位打者の打撃術 「内角と外角で打ち方を変えました」

週刊ベースボールONLINE

プロ入り5年目の今季、自身初のタイトルとなる首位打者を獲得。飛躍のシーズンを過ごした宮崎 【写真:BBM】

 横浜DeNA・宮崎敏郎はライバルたちも舌を巻く巧みなバットコントロールで首位打者のタイトルを手にした。足で稼ぐ内野安打が期待できない右の中距離砲は、純粋に打撃技術だけで安打を積み重ねた。プロ入り5年目、29歳の遅咲きは首位打者争いのさなかでも、「数字」を追いかけなかったことが最高の結果をもたらした。

初の日本Sは「意外とすんなり」

──今季はクライマックスシリーズ(CS)、日本シリーズと戦いましたが、シーズンを振り返ると。

 すでに気持ちは来年に向かっています。でも、あらためて振り返るとCSは雨で試合が流れたこともあり、日程が詰まってギュッと濃縮していたシリーズでしたね。その流れで日本シリーズまでトントンと来た感じでした。

──日本シリーズまでのCSも過酷な戦いでした。甲子園での“泥だらけの決戦”、広島でも雨に泣かされました。チームの雰囲気はどうでしたか。

 試合に負けてもチーム全体の雰囲気が沈むことはなかったですね。昨年もCSを経験して雰囲気も分かっていたので、シーズンどおりでした。昨年とは違った感じだったことは確かです。

──CSを勝ち進んでいく中で、得たものはありますか。

 とにかく負けられない戦いが続いていたので、雨が降ろうが、グラウンドに水がたまろうが、絶対に勝つという気持ちでやれたことですかね。泥だらけの甲子園でも水溜りがないような感覚、気持ちでプレーしていました。

──CSを突破して初の日本シリーズへ。どんな気持ちで開幕を迎えましたか。

 意外とすんなり入ることができました。緊張感もそれほどなかったです。リーグ優勝して日本シリーズに行くのとは違うと思うんです。セ・リーグ3位ということもあって、「どこまで行けるのか?」「自分たちの野球がどこまで通用するのか?」という期待感のほうが大きかったです。

──福岡ソフトバンクとの日本シリーズは6試合で20打数8安打の打率4割、2本塁打、5打点とバットでチームに貢献しました。ヤフオクドームでの第2戦では森唯斗投手から勝ち越し2ラン。フルカウントから真っすぐをインコースに2球続けられた末の「技あり」の一発でした。

 体の反応で打ったような1本でした。瞬間にくるっと体が回れたような感覚です。手応え、感覚的にはあまり良くなかったですが、「頼むから入ってくれ!」と祈りながら打球を追いかけていました。なんとかスタンドまで届いてくれてよかったです。

──濱口遥大投手が好投した第4戦も先制ソロ。第5戦ではセンター前へ同点タイムリー。

 短期決戦では先制点がカギを握ります。そういう意味でも、何とか塁に出てという意識の中でしっかりと振り切ったことが結果につながりました。第5戦のタイムリーは相手の守備位置が前だったし、カウントが追い込まれていたので、指1本分バットを短く持って、「当てれば何か起きる」くらいの気持ちでしたね。

──第6戦は2安打を放つもチームは惜敗。ベンチでソフトバンクの胴上げを眺めながら何を思っていましたか。

 次はリーグ優勝して、ここに戻ってきたいなという思いですね……。本当にそれだけだった。CSで勝ったあとにビールかけはやりましたけど、監督の胴上げはまだですからね。来年こそは、です。

規定打席到達もキャリア初

表彰選手が集まる『NPB AWARDS 2017』に出席し、喜びの声を伝えた 【写真:BBM】

──話題を首位打者のタイトルを獲得したレギュラーシーズンに移します。シーズン中は、プロ入り初めて規定打席到達したことが価値があると何度も語っていました。

 そうですね。でも、タイトルは素直にうれしいです。同時に初めての規定打席に到達することができて、ほぼフルシーズンを1軍でプレーできた。来年につながる1年だったと思います。

──初めてのタイトル、首位打者獲得で周囲の反応はいかがですか。

 僕より周りの方がすごかったですね。球場に来ている関係者の方からも「絶対に(タイトルを)取れよ!」と発破をかけていただきましたし、たくさんの方から「おめでとう」と連絡をいただきました。

──シーズン中は打率のことは気にしていないそぶりでしたが、実際には?

 僕は本当に数字は見ずに、とりあえず毎日試合に出続けることに必死でした。例えば本塁打とか盗塁は積み重ねだから数字が減らないですよね。でも、打率は増えたり、減ったりするので難しいです。上がり続けている数字もいつかは下がる可能性があるわけで、そういう部分も数字にこだわってこなかった理由です。

──とはいえ、例えば3打席ノーヒットで迎えた4打席目。「1本出さないと打率が下がるなぁ」と思いませんでしたか。

 打率うんぬんよりも、明日につなげるためにも1本出したいな、とは思って打席に入ってましたね。首位打者のタイトルを取るためにプレーしたというより、チームの勝利を目指して1シーズンプレーし、規定打席に到達できたことが大きいと思います。その結果、残せた数字じゃないでしょうか。

──例年、ケガでの離脱が多かったです。

 毎年、何カ月も休んでいましたからね。今年は大きな故障もなく完走できました。

──技術的にハイアベレージを残すことができた要因はどこにあると考えていますか。

 インコースの対応だと思います。インコースに来たボールの反応がよくなったことですね。

──アウトコースは昨年からしっかりと逆方向へ強い打球を放っていますが、インコースも回転でしっかりさばけていた印象です。今年はさらにレベルアップしたということですか。

 そうですね。具体的にはインコースとアウトコースの打ち方を変えました。スイングの軌道、腕の出し方。分かりやすく言うとインコースはアッパースイング、アウトコースはレベルというイメージです。

──コースによって振り分けている。

 そうですね。インコースはこの打ち方、アウトコースはこの打ち方という具合でバットを出しています。

──瞬時に内、外のボールに反応するためにスイングを体で覚えるわけですか。

 それもありますけど、やっぱりコースで(打つボールを)待っていて、来たボールに対応していく感じです。当然、状況に応じてコースではなく球種で待つこともありますが、そういうスイングのイメージを持つことで打撃は変わりました。

──日本シリーズ第2戦で森投手からレフトスタンドに運んだ本塁打はインコースを張っていた。

 外に意識を置きながらも、インコースの準備はしていました。

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