【全日本プロレス】変化と進化を続ける“王道”の17年 諏訪魔&石川が最強タッグリーグ制覇

高木裕美

諏訪魔&石川組が連戦を制して優勝

「暴走大巨人」の2人は宮原健斗&ヨシタツ組と、あわや時間切れ引き分けとなる大熱戦を制し優勝決定戦へ 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 この日は「2017 世界最強タッグ決定リーグ戦」最終公式戦5試合が行われ、6勝3敗の12点で並んだ諏訪魔&石川修司の「暴走大巨人」と、大日本プロレスの橋本大地&神谷英慶の「大神」が、全試合終了後の優勝決定戦で激突。直前に25分間に及ぶ死闘を繰り広げ、わずか10分間のインターバルで2試合目に臨んだ暴走大巨人が、執念で優勝の栄冠をもぎ取り、笑顔で1年を締めくくった。

 10チームが参加した今年の最強タッグでは、この日の最終公式戦を前に、5チームが5勝3敗の10点で並び、2チームが8点で後を追う波乱の展開。全部の公式戦を終えた結果、2チームが12点で並んだため、全試合終了後に優勝決定戦が開催されることになった。

 諏訪魔と石川は、4.16後楽園ホールでの「チャンピオン・カーニバル」公式戦や7.17後楽園での三冠ヘビー級戦、9.23仙台での「王道トーナメント」決勝戦という3度の一騎打ちを通じて絆を深め、タッグを結成。開幕前はその個々の実力から「全勝優勝もあり得る」と優勝候補の大本命であったが、リーグ戦序盤は誤爆や不協和音が続き、黒星を連発。だが、このケンカやいざこざを通じて逆に絆を深め、1位グループに並ぶ形で最終戦にこぎつけた。

 最終公式戦では、宮原健斗&ヨシタツ組と、あわや時間切れ引き分けとなる大熱戦を展開。20分を過ぎても、諏訪魔のバックドロップとヨシタツのジャーマンスープレックスによる投げ合いや、宮原のブラックアウトと石川のニーリフトによるヒザ蹴り対決など、一進一退の攻防が続くも、諏訪魔がドロップキック、レフトハンドラリアットからのラストライドでヨシタツに勝利。残り時間5分を切る綱渡りの状況ながら、優勝決定戦の舞台へ辿り着いた。

25歳タッグの「大神」も後一歩まで迫った

「大神」は野村直矢&青柳優馬組に圧勝し、ひとまず先に優勝決定戦進出を決めていた 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 一方、大地&神谷の「大神」は、大日本「最侠タッグリーグ戦」優勝決定戦となる10.15後楽園で、デスマッチブロック代表のアブドーラ・小林&伊東竜二組を破って初優勝。当初、関本大介&岡林裕二組がエントリーされていた最強タッグ出場枠が、岡林の負傷欠場で空白となると、代わりに出場を直訴し、11.9後楽園で関本&野村卓矢組を破って最強タッグ出場権を獲得した。

 最終公式戦では、現アジアタッグ王者組の野村直矢&青柳優馬組と対戦。青柳に対し、大地が延髄斬り、神谷がラリアット、大地がシャイニングウィザードとたたみかけ、ひと足先に12点を獲得し、単独首位へと躍り出た。

 41歳の諏訪魔&42歳の石川に対し、「大神」は共に25歳。さらに、約15分で試合を終え、40分以上のインターバルがあった「大神」に対し、暴走大巨人は25分間の激闘の末に、休憩時間もわずか10分。試合開始のゴングを前に、気力・体力十分の「大神」と、疲労困憊の暴走大巨人では、明らかにハンデがあった。

「大神」はこの機に乗じようと、序盤から一気呵成(かせい)に攻め立て、大地が諏訪魔にSTFを仕掛ければ、神谷も石川にストレッチプラム。諏訪魔&石川組も、このリーグ戦を通じて編み出した必殺技ラストマウンテン(諏訪魔のラストライドと石川のスプラッシュマウンテンの合体技)を神谷に炸裂させるも、大地がカット。逆に神谷が石川にバックドロップを食らわせれば、諏訪魔がカットに入る。10分過ぎ、石川が神谷にニーリフト、カミゴエを繰り出すと、諏訪魔も大地にバックドロップ。勢いづいた石川が神谷をファイヤーサンダー、ジャアイアントスラムでマットに突き刺し、3カウントをもぎ取った。

MVP級の活躍をした石川 年始は世界タッグ挑戦へ

今年はMVP級の活躍をした石川(左)。来年の年始早々に秋山&大森組に挑戦することになるだろう 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 まさに紆余(うよ)曲折を乗り越えて栄冠をつかんだ諏訪魔と石川は、疲れも見せずに優勝トロフィーを高々と掲げると、終始笑顔でインタビューにも応じた。

 フリーでありながら、今年の全日本マットMVPともいえる大活躍を見せた石川は「この1年、全日本さんのリングでずっと戦ってきて、こうして最高の形で締められたのは、パートナーの諏訪魔選手のおかげ。強力なパートナーと、もっともっと暴れていきたい」と、来年以降もタッグ継続を宣言すれば、諏訪魔も「石川選手、オレのワガママを聞いてくれてありがとう」と感謝。石川は「これからもこの全日本を盛り上げるために、体を張ってガンガン戦っていく」と、40代の今こそ全盛期であると訴えた。

 バックステージでも、「途中、ケンカもしたけど、最後、濃密な時間が過ごせた」と頭を下げた諏訪魔に対し、石川も「衝突は何回もあったけど、終わってみると優勝するために必要だったのかな」と、“雨降って地固まる”結果に納得顔。諏訪魔は「石川につなげば何とかなると思った。頼りになる。最強のパートナー。オレらはまだまだ全盛期。若いヤツらには負けない。跳ね返してやる」と、来年も暴走大巨人としてタッグ戦線を活性化させることを予告した。

 早ければ来年の1月2日もしくは3日の後楽園大会で、現世界タッグ王者組である秋山&大森組へのタイトル挑戦が決定的となった諏訪魔&石川組。共に48歳、キャリア25年と、大先輩である現王者組に対し、暴走大巨人旋風を再び巻き起こし、ベルト奪取でもう一度、笑顔の花を咲かせることができるか。

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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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