大谷翔平、エンゼルス入りの真相 自ら語る“冬用スーツ”が示す誠意

丹羽政善

現地ファンの熱烈な歓迎

ソーシア監督(左から2番目)、エプラーGM(同4番目)らと写真に収まる大谷 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 人垣がみるみるうちに膨れ上がっていく。

 現地時間9日午後3時から本拠地エンゼル・スタジアムの正面広場で行われた大谷翔平の“青空会見”は一般にも公開され、午後1時過ぎに球場に着くとすでに多くのファンの姿があり、それから1時間もすると、会見スペースを取り囲む柵の周りには、立錐(りっすい)の余地がなくなった。土曜日ということもあったが、告知から1日も経っていないというのに、熱い歓迎ぶりである。

 そんな中で午後2時58分、特設ステージの裏から大谷が姿を見せると、ファンから歓声が上がる。午後3時1分、司会者が「GOOD AFTERNOON!」と一声を発し、「機嫌はどうだい!?」の問いかけに、ファンは一層の歓声でそれに応えた。

 壇上には、アルトゥーロ・モレノオーナーの他、マイク・ソーシア監督、ビリー・エプラーGMらが顔をそろえ、代理人のネズ・バレロ氏の姿も。それぞれが紹介された後、最後に「ショーヘイ・オータニ!」とアナウンスされると、ファンの盛り上がりはピークに達している。

監督、GMに続き大谷があいさつ

 会見セレモニーではまず、ソーシア監督がマイクの前に立ち、「彼のような二刀流の選手を獲得できたのは歴史的な日だ。ショーヘイ、ようこそ」と語りかけると、大谷が少し、はにかむ。続いてスピーチを行ったエプラーGMは、「(成長のための)エスカレーターはない。互いに一歩一歩前進しよう」と話し、「選手のためなら、われわれはすべてを尽くす。オオタニさん、ようこそエンゼルスファミリーに」と締めくくっている。

 そして、いよいよ大谷の番。

 割れんばかりの拍手に迎えられると、まずは英語で、「ハイ! マイネームイズ、ショウヘイ・オオタニ」と自己紹介。拍手のボリュームが一段と増した。

 続けて、「こんなに多くの人の前で喋るのは緊張しますし、今まで考えてきたことが全部飛びそうなので、つまずいたら申し訳ないと思ってます」と日本語で話すと、通訳が訳し終わるまで微妙な間があったが、「本当にたくさんの人達に支えられて、今日、このメジャーリーグのスタートラインに立つことができて、本当に感謝していますし、これからエンゼルスの一員としてファンの皆さんとともに優勝目指して頑張っていきたいなと思っています」と、つまずかずに決意を口にした。実に堂々としたものだった。

 質疑応答に移ると、米メディアから「メジャーでも二刀流ができると思うか?」という質問が飛ぶ。するとそれに真っ先に答えたのは、ファンだった。

「お前なら、できるさ!」

異例づくしの移籍過程

会見中に笑顔を浮かべる大谷。堂々とした受け答えを見せていた 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 さて、こうした会見が行われるのは、メジャーでも異例だが、大谷の移籍の過程も異例づくしだった。

 まず、11月中旬のGM会議の後、選手会が承認し、新ポスティング制度が大筋で合意すると、代理人のバレロ氏は、大谷の獲得を目指す球団に、起用方法などを具体的に英語と日本語の両方で提出するよう求めた。これは交渉期間が通常の30日ではなく、大谷に限って21日間に短縮されたことによる措置だが、その“書類選考“に通ったチームだけが“面接”に進むことができた。

 そこでまず本命視されていたヤンキースが脱落。そのとき、西海岸のチームか、小さな市場規模の球団を望んでいる、とも報じられたが、セレモニーが終わってから球場内で行われた囲み取材で、そうした真相が、本人の口から明らかになっている。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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