広島・田中が定めた1番打者の方向性 「出塁率と得点を追い求めていく」
石井コーチから教わって踏ん切りつく
最多盗塁と最高出塁率の二冠を獲得。さらに遊撃手のベストナインも受賞し、「NPB AWARDS 2017」では堂々の登場 【写真:BBM】
1番打者として、出塁率は最も意識していた部分です。
――特に四球は16年の77から、17年は89にアップしています。
昨季は途中から、長打を打ちたいという気持ちが強くなってしまいました。序盤は逆方向にうまく打つことができていましたが、「もの足りないな」と強く振り始めて失敗したので、今季は最後まで、我慢をしながらというわけではないですが、出塁を最優先にしてプレーできたのがいい方向につながったと思います。
――昨季は自己最多の13本塁打。パンチ力も田中選手の魅力の一つだと思いますが、どうやって欲を抑えたのでしょうか。
昨季、チームは優勝しましたが、僕自身の打率は2割6分5厘。それじゃあ何か、個人的にもったいないと感じましたし、優勝チームの1番がその打率では格好悪いですからね。
――2年目の15年には141試合に出場しましたが、四球は34。当時は積極的なバッティングを得意としていました。
スタイルを変える上で、相手のボールを待たないといけないところに難しさを感じることもありましたが、そのままでは通用しないと思い、石井(琢朗)コーチ(現ヤクルト)、東出(輝裕)コーチ、迎(祐一郎)コーチなどに話を聞きながら変えていきました。例えば石井コーチは現役時代に1番を打つことが多かったので、出塁率と得点へのこだわりについてはとても多くのことを教わりました。そこで踏ん切りがついたというか。「打てなくてもフォアボールを2つ取ればOK」ということや、「得点をすれば1番の仕事は十分だ」と言ってもらい、「それができればいいんだ」と、僕の心の中で方向性が定まりましたね。
――トップバッターの田中選手の場合、主軸打者のように「与えられた」というよりも、「奪った」四球が多いですが、四球を選ぶ秘訣(ひけつ)はあるのでしょうか。
1年目、2年目には、ファーストストライクの甘いボールを見逃してしまうと、「ああ、もったいないな」という感じがあったのですが、打席に多く立たせてもらい、いろいろな球を見てきた中で、余裕が出てきたので、無理して1球目から振りにいくことは少なくなったと思います。それが結果的にボール、ボールと球数が多くなり、四球が増えているのだと思います。
最高出塁率は結果的に取れたタイトル
いえ、それは変わっていません。やっぱり打率を残せて、盗塁もできて、ホームランも打ててという選手が理想ですよ。それは変わってはいませんが、僕が成長するにあたり、僕だけの野球観では絶対に成長できないですし、僕よりも結果を残してきた選手はいっぱいいる。その選手にたくさんのことを聞きながら成長したいと思っています。
――これからはもっと長打力を求めていきたい。
その気持ちはありますが、まだ打率3割を打ったことがないですし、この先も1番打者を任せてもらえるのであれば、出塁率と得点が、最も追い求めていかないといけない数字ですから。
――最高出塁率のタイトルへの意識はあったのでしょうか。
それはなかったですね。1番打者で数多く打席が回ってきますし、出塁率の高さは気にはしていましたけど、タイトルはクリーンアップのバッターが取るものだと考えていましたから。
――最後はチームメートの丸佳浩選手と大接戦となりました(田中=3割9分8厘2毛、丸=3割9分7厘5毛)。
今季の僕の目標は最多盗塁でしたから、ライバル心はなかったですよ。最多盗塁は狙って取ったもので、最高出塁率は結果的に取れたタイトル。1番打者の仕事を一年間続けてきたことが形になったのだと思っています。
――ほぼ不動のトップバッターとして、2年連続フルイニング出場を果たしました。やはり1番へのこだわりは強いのでしょうか。
もちろんあります。最初は与えられたポジションでしたけど、2年間、しっかりと仕事ができたと思っているので、譲りたくはないですね。
――1番打者として、これからさらに成長するための課題はありますか。
三振が多いので、そこを改善していきたいですね。何とかフルカウントまでは持っていけるのですが、そこでどうにかしてバットに当てればヒットになる確率はあります。三振はもっと減らしていきたいですね。
(取材・構成=吉見淳司)