「自分に勝つチャンスは4年に1回」 高梨沙羅、金メダルへの覚悟を語る

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マエケンから学んだ心構え

前田健太との出会いが高梨の心を楽にさせた 【写真:大橋泰之】

――この4年間で変化した点はありますか?

 この春に(ドジャースの投手)前田健太さんとお会いする機会をいただけたんです。そこでお話できて、「常に100パーセントのコンディション、絶好調の状態にそろえるということは不可能に近いので、8割とか7割の状態でもいかにそこでベストを尽くすかが大事になってくる。そこで、ベストを尽くすための技術をいかに普段からトレーニングするかというのが大事になってくる」という話を聞きました。

 その時にすごく心がスっと楽になりました。

――去年までは違う考え方だった?

 自分は今まで、「コンディションを合わせるためにベストを尽くさなきゃ」と思っていました。もう常に体を大会に向けて合わせていかなければいけないと。体を、コンディションを100パーセント全力で持っていかなくてはと考えていたので相当苦しくて、体は付いていったかもしれないですけど気持ち、精神的に付いていけなかったかもしれないです。やる気満々だったにしろ、空回りはあったと思います。

 それが、8割で自分のベストを尽くせるトレーニングをするようになりました。

――それは今までのトレーニングとは違うもの?

 やることは一緒なのですが、考え方でしょうね。

 コンディション的にも技術的にも、100パーセントの状態なら良いジャンプが飛びやすくなるというのは当たり前だと思うんです。けど、80パーセントの状態でアベレージの能力を上げるトレーニングにすると、80パーセントがこの(下限の)状態になるわけじゃないですか。なので、そういう意識付けのトレーニングをするようにしています。

 そのために自分のやるべきことをしっかり見て、これはいる、これはいらないと、自分のなかでここだけはポイントとして抑えておかなければいけないということをしっかり持ってトレーニングするようにしています。(それは五輪もW杯も)同じです。

高梨沙羅のオンオフスイッチ

試合中、「オン」に入っている高梨の表情は鋭い 【写真:アフロ】

――シーズン中に意識することはなんでしょうか?

 オン/オフの切り替えの速さが大事になってくると思います。オンの状態の時にいかに取り組むことができて、オフの状態の時にいかに休むことができるかが重要になってくると思います。

――スイッチを入れる時のルーティンはありますか?

 自分の良いジャンプを飛んでいる時のイメージを繰り返し考えるようにしています。(ジャンプ台へ上がるリフトの上ではもう)飛んでますね(笑)。

――そのルーティーンはいつから続けているものですか?

 W杯を転戦させていただくことが多くなってからですね。良いイメージを繰り返し考えると、自然とそれができるような感覚になるんです。だからなるべく良いイメージを考えるようにしています。

――そのイメージが実際に飛び始めるときにフラッシュバックしてくる?

 実際に飛ぶ時はそんなに考えていないです。無心なんですよ、いざ飛ぶ時って。それまでは良いイメージが頭にずっと回っていて、いざ自分がゲートに入る時はパンって(消える)。(風の状態なども)考えてないですね。その時スタートを出してくれたコーチを信じて飛びます。

――オフにする時にはどうしますか?

 読書や運転が好きなので、車のなかでいろいろ考えたりとか、ドライブした先の土地のことをいろいろ見たりとかが好きですね。

――どこを走るんですか?

 なかなか競技のことを考えるとあまり走れないので、運転するとしたら(オフの)移動の時くらい。ドライブはちょっと遠出して札幌から小樽くらいまで行ったり、それくらいの距離しかいけないです。(高速ではなく)下で行きます。下のほうが断然楽しいです! でも駐車場はなるべく広めのところに停めるようにしています(笑)。絶対に上引っかかるだろうっていう(屋内の)ところにはなるべく近づかないようにします(笑)。

「最後は自分を信じて飛べるように」

「この4年間ずっと悔しい気持ちをバネに練習してきた」と語る高梨 【写真:大橋泰之】

――あと1勝に迫った歴代最多勝利数54勝への思いはありますか?

 モチベーションにはつながる結果だと思うんですけど、その結果の前に内容をしっかりそろえていかなければいけないなと思います。

――数々の記録を打ち立ててきましたが、その先の目標はどこに置いていますか?

 もちろん記録は塗り替えられるだけ塗り替えられるように頑張りたいと思いますが、結果自体が比較されるとすると男子じゃないですか。レベルも土俵も全く違うので、それが比較して見られるかというと一概にそうではないと思うんです。

 今までの勝利数はこれまで結果を残してこられたというところで練習のモチベーションにはつながります。どれだけ後積み重ねられるかなと思います。

――五輪、今シーズンへの意気込みをお願いします。

 この4年間ずっとソチ五輪での悔しい気持ちをバネにここまで練習してきました。自分に勝つための機会、チャンスを得られるのは4年に1回。今年目指しているのはW杯総合優勝よりも、平昌五輪の金メダルです。

 最後は自分を信じて飛べるように、残された1日1日を大事にして平昌五輪で金メダルを取れるように、まずは平昌五輪への切符を自分の手でつかみ取りたいと思います。

(取材・文:藤田大豪/スポーツナビ)

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