強い日本選手を育てる「伊達公子コート」 テニス界の未来につなぐ経験と財産
「伊達公子コート」の成果
伊達のアドバイスもありハードコートに改装された長良川テニスプラザ。写真は17年5月、ひざの故障からの復帰戦に挑む伊達 【写真は共同】
そのように若手育成で効果を発揮するハードコートが生んだ最大の果実が、数々のジュニア国際大会で活躍してきた、現在18歳の堀江亨だ。少年時代から多くの試合を長良川で戦ってきた堀江は、世界に出てもハードコートで培った軽快なフットワークと早いリズムの攻撃を武器とし、トップジュニア相手に伍して戦う。特にダブルスでの躍進は目覚ましく、ジュニアの登竜門と呼ばれるオレンジボウル優勝をはじめ、今年の全豪オープンジュニアベスト4、さらに9月の全米オープンジュニアでは優勝まで1ポイントに肉薄する準優勝のタイトルを手にした。
「国体の3位も堀江の活躍も、いずれもハードコートの存在が大きいです」
そう岩崎氏は述懐した。
ハードコートの環境が「日本テニスの強化に必要」
「まだまだ、一般の方はハードコートというと“硬い”という印象を持つかもしれません。ですが今は何層もの構造になっているので、皆さんが思うほど身体へのダメージはないということを認識して欲しいです」
まずはそう切り出すと、彼女は口調に熱を込めて続けた。
「強化ということを考えても、先進国でここまでハードコートが少ない国も少ないと思います。砂入り人工芝で戦い慣れた選手が、世界に行ってハードコートに切り替えるのは、足踏みにもなりかねない。高校レベルでもハードコートで戦える環境が、もっともっと日本テニスの強化には必要になるし、その辺りの動きが岐阜以外でも出始めているのは間違いない。それがもっと広がっていくことが必要だし、それが自分にできることであれば、やらせて頂きたいという思いはあります」
戦いの場を去ってなお、彼女がテニスに寄せる情熱や言葉は、絶大な存在感と効力を放つ。
第2のキャリアの始まりの地は、彼女がこれまで獲得してきた経験と財産を日本テニス界に還元していく、新たなスタート地点となる。