ヤクルト・奥村が狙うショートの定位置 憧れは父の同僚・宮本ヘッドコーチ

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甲子園親子アーチが実現

高校は日大山形高へ進学、2013年夏の甲子園では山形勢初の4強入りに貢献した 【写真提供:高校野球ドットコム】

 山形大会18打数12安打3打点、打率6割6分7厘のハイアベレージによって甲子園でも注目打者の1人となった奥村は、聖地で次々と記録を打ち立てる。

 初戦の日大三高戦の初回2死三塁から甲子園初打席に立った奥村は、エース・大場遼太郎(筑波大)から先制2ラン。実は父・伸一さんも、甲西高時代、1986年夏の三沢商高戦で大会第1号を放っており、甲子園でも稀有な「親子弾」となった。この一打で勢いづいた日大山形高は、7対1で日大三高に勝利。3回戦では作新学院高を破り、山形勢として2度目の8強入りを決める。

 準々決勝の明徳義塾高戦でも奥村は3打数1安打1打点の活躍で、山形勢初の準決勝進出に貢献。準決勝では優勝した前橋育英高に1対4で敗れたものの、桐光学園高・松井裕樹(東北楽天)、広島新庄高・田口麗斗(巨人)、花咲徳栄高・若月健矢(オリックス)、仙台育英高・上林誠知(ソフトバンク)らとともにU−18侍ジャパンに選出され、「第26回IBAF 18Uワールドカップ」準優勝に貢献する。

 かくして最後に充実したシーズンを送った奥村は、満を持してプロ志望届を提出。ドラフト会議で巨人から4位指名を受け、プロの世界に足を踏み入れることに。その入団会見時、あこがれの人として即答したのが宮本慎也氏だった。

人的補償で巨人からヤクルトへ

 14年のプロ1年目から2軍で86試合に出場し、2本塁打、20打点。巨人のホープとして2年目が期待された。だが、15年1月9日、彼の下に思わぬ報が舞い込んだ。14年11月にヤクルトから巨人にFAで移籍した相川亮二の人的補償選手として、ヤクルトのユニホームを着ることになったのである。もちろん19歳で人的補償選手として移籍するのは、史上最年少である。

 こうして2年目も慣れない環境から始動することになった奥村。だが、彼は技、体に加え心のタフさを発揮。成長の歩みを止めることはなかった。15年は2軍で107打席に立って経験を積むと、3年目の16年は2軍で96試合出場。1軍にも初昇格を果たし4試合に出場した。

 そしてプロ4年目、ヤクルト入団3年目の今シーズン、奥村は壁を破る。開幕1軍こそ逃したものの、2軍でじわじわと調子を上げて、夏に1軍昇格。7月11日の巨人戦で、エース・菅野智之からプロ初ヒット。翌日の巨人戦でも4打数2安打と初のマルチヒットを記録すると、その後も安打を重ねて1軍に定着。9月16日、広島のリーグ優勝が懸かった試合では胴上げを阻止する決勝犠飛を放つなど、随所に印象的な活躍を見せた。結果、今季は44試合に出場。125打席に立ち113打数27安打5打点で打率2割3分9厘。初盗塁もマークするなど飛躍の1年となった。

 今季は屈辱の最下位に終わり、来季こそ巻き返しを図るヤクルト。その主力としての活躍が望まれる奥村にとって、この秋、大きな転機も訪れた。4年ぶりに復帰した小川淳司監督の参謀役としてヘッドコーチに就任したのは宮本。そう、奥村にとって憧れであり、常に目標としている人である。

 そして宮本ヘッドコーチも、奥村にかける期待は大きい。実は彼が巨人からヤクルトに移籍した15年1月9日、当時解説者だった宮本コーチは「奥村展征」という題名でブログを更新し、最後はこう結んでいる。

「頑張れ! ノブ! 応援してるぞ!」

 当面のライバルはショートとして今季チーム最多の78試合に出場したベテラン・大引啓次、47試合に出場した西浦直亨。その先に見据えるのはもちろん「宮本慎也」越えだ。すでに各球団の主力として活躍する侍ジャパンU−18代表でともにプレーした盟友たちと肩を並べるためにも、奥村展征は5年目の定位置取りへ勝負を挑む。
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