ブラサカとの出会いが人生を変えた 日本代表選手が誓う東京でのメダル

スポーツナビ

ブラインドサッカー日本代表の加藤健人。ブラサカとの出会い、東京パラリンピックへの意気込みを存分に語った 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

「あの時は1人になってしまったと思いました」

 ブラインドサッカー(ブラサカ)日本代表の加藤健人は、視力を失ったときのことをそう振り返った。文字通り目の前が真っ暗になり、一度は絶望を味わった。だが、ブラサカとの出会いが人生を変え、再び加藤は光に向かって歩き始めることができたという。

 ブラサカは、アイマスクをした選手たちが音の鳴るボールを使い、フットサルと同じ大きさのピッチで行うサッカーで、視覚障がい者のスポーツである。
「1人じゃできないスポーツ。相手をドリブルで抜く人がいて、ゴールを決める人もいる。みんなで声の掛け合いをして、他の人がゴールを決めても自分のことのようにうれしいんです」

 スポーツナビは、陸上・十種競技の元全日本王者でタレントの武井壮さんがブラインドサッカーを体験する、NHKの取材に同行。今回の企画に講師役として参加した加藤は、自らのエピソードを存分に語ってくれた。

ブラサカが「自分は1人じゃない」と気づかせてくれた

相手のディフェンスとの間合いを取る加藤。繊細なボールコントロールと正確なパスが持ち味だ 【スポーツナビ】

 加藤が福島・聖光学院で、健常者として高校サッカー選手権を目指して練習に励んでいた高校3年の時、遺伝性の病である「レーベル病」であることが判明した。ほとんどの視界を失い、選手権の夢も諦めざるを得なくなった。

「自分には何もできないと思っていた。どうしたらいいのか分からなくなってしまいました」

 高校を卒業してからも何もする気が起きず、両親にもつらく当たってしまったという。浪人期の秋まで、目的を持てずに日々を過ごしていた加藤を「何とかしなければ」と思っていた父が、インターネットで見つけてきたのが「ブラインドサッカー」だった。

 初めての体験に、加藤は衝撃を受けた。「自分の知っているサッカーと違う」。“シャカシャカ”と音が鳴るボールを蹴る、アイマスクで視界を完全に遮断した4人のフィールドプレーヤー。ゴールキーパーは晴眼者や弱視者など、視覚がある人が担う。そのほかに、相手ゴール裏には攻撃のキーとなるガイド、そしてピッチ脇には監督がいて、それぞれ大声で選手へ指示を送る。ブラサカはこの7人が声を掛け合い、一丸となってゴールを目指していく。

 仲間から「一緒にやろうよ!」と誘われてピッチに入った加藤。最初はドリブルをしようとして人にぶつかってしまうなど、難しさを味わった。それでも、チームメートに付き合ってもらい、全体練習後に自主練習を繰り返すことで、徐々にボールを自在に操れるようになっていった。

「自分にはサポートしてくれるみんながいる。またサッカーができるようになった」

 ブラサカによって得た仲間が、一度は閉ざされたと思い込んでいたサッカーへの光を、もう一度灯してくれたのだった。

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