ロンドンを手本に、東京でも最高の景色を 高桑早生が描く2020年のTOKYO
ハードの問題を「人」がカバーする日常の光景
東京2020でどのような光景を見たいか――。数々の世界大会を経験してきた高桑選手が自らの言葉で語ってくれた 【写真:築田純】
そのロンドンには、パラリンピックの前年から4度赴いていますが、本大会開催を機に多様性を認めるという雰囲気ができ、月日を重ねるごとに変わっていく姿を見てきました。いまでは安心して競技に打ち込める特別な場所ですね。
東京がお手本にすべきは、まさにロンドンです。日本もイギリスも、島国であり、歴史的背景からも“違うもの”に対する壁のある国。イギリスは「スーパーヒューマンに会いに行こう」という広告的な仕掛けでパラリンピックに人を引き寄せ、“障がい者への壁”を突破したように思います。日本も似ているからこそ、まねられる部分がたくさんありそうです。
この7月、ロンドンの地下鉄でこんな場面に出くわしました。ベビーカーを押す若いお母さんが階段を降りようとすると、お母さんは何のアクションもしていないのに、男の人がさっと申し出てベビーカーを運んだんです。古くからの景観を大事にするロンドンは段差が多く、車いすユーザーに不便と聞いていましたが、ハード面の問題を人の手でカバーする日常を目の当たりして、日本が参考にしなきゃいけない部分だなと思わされました。
新・国立競技場で「満員の観客席」が見たい
2012年のロンドン大会では「ゲームズメーカー(大会をつくり上げる人)」と呼ばれるボランティアの人々が活躍。大会を大成功に導き、そのレガシーは今も受け継がれている 【写真:ロイター/アフロ】
そんな経験をさせていただいて、どうやったら日本でもパラスポーツに興味を持ってもらい、会場に足を運んでもらえるかをいつも考えています。
実は高校生だった2009年に、アジアユースパラ競技大会で国立競技場を走りました。グラウンドから見た客席はガラガラで寂しいものでした。でも、2020年はあのときとは違う景色を見られるといいなと思います。新しい国立競技場で「満員の観客席」は絶対、見たいです。そんな中で皆さんの記憶に残るパフォーマンスができたら最高ですね。
高桑早生(たかくわ・さき)
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