並外れた身体能力でスターの資質十分〜巨人7位の奈良学園大・村上海斗〜

週刊ベースボールONLINE

巨人の7位指名を受けた奈良学園大・村上。肩は遠投110メートルで球速145キロを出すロケット砲を持つ。50メートル5秒8の俊足で、身体能力は抜群。あとは打撃を磨き、巨人のスターを目指す 【写真=BBM】

 北照高では夏の甲子園のマウンドも経験。奈良学園大では外野手に転向し、そこからパワーを付けた。189センチ94キロの巨体ながら、50メートル5秒8の俊足で、遠投110メートルの強肩。将来トリプルスリーを狙える身体能力を持つ村上海斗。ただそれだけではない。人を引き付ける天然な言動と明るいキャラクターの持ち主だ。

目標は同郷の阪神・糸井

 東京ヤクルトの6位指名を受けたチームメイトの宮本丈。指名の安堵感から涙が止まらない中、隣で一緒にテレビ画面を見ていた村上は、自らの指名の瞬間、満面の笑顔がはじけた。そして終始笑顔を絶やさない。愛嬌のあるその笑顔と独特の村上語録は、人気者になる資質がありそうだ。

「ヤバッと思いましたけど、……ホッとしました」

 それだけの言葉にもかかわらず会場はなぜか村上の醸し出す独特の雰囲気に笑い声が上がる。10月26日のドラフト会議当日、奈良学園大の講義室に設けられたパブリックビューイング。野球部員やブラスバンド部、宮本が教育実習で教えた中学生の生徒たち約100人が見守る中、なかなか指名が掛からなかった。6位指名の宮本は、会場の関係者に向けてしっかりとしたコメントを残し拍手が起こった。

 だが、村上は……。

 共同の記者会見でも指名されたときの感想を聞かれると、「6位指名のあと、選択終了のチームが多い中、読売巨人軍さんが7位で指名してくれて?……はい、指名してもらえて……はい、よかったです」と微妙な空気で再度笑いが起こる。また目標の巨人の選手を聞かれると「陽岱鋼さんとお話したいです。すべてを習いたいです」。

 質問に対し、まじめに笑顔で答えるのだが、答えの内容が終始少しずれる。「僕が話すとみんなが笑うんです」と本人も自覚はある、天然キャラだ。不思議な、憎めないその雰囲気は、どこか阪神の糸井嘉男に通じるところがある。身長189センチ94キロ。糸井は187センチ88キロ。同じような恵まれた体格を持っている天然男なのだ。

「同じ京都出身の糸井嘉男選手のような、選手になることです」と思い描くプロ野球選手像はしっかり持っている。また身体能力も糸井に近いものがある。「今でも145キロを計測する肩は持っています」と胸を張る。50メートルも5秒8と「足も自信がありますし、将来トリプルスリーを目指す」と身体能力に関しては誰にも負けない。酒井真二監督も「トリプルスリーを達成してほしい」とその才能に期待を寄せる。

粗削りも磨けば光る打撃に期待

奈良学園大のチームメイトに胴上げをされる村上。ヤクルト6位指名の宮本よりも早い1軍昇格と活躍を狙っている 【写真=BBM】

 北照高では投手兼外野手だった。高校3年夏の甲子園は先発のマウンドも経験した。しかし、奈良学園大に入学後は右肩を痛めたこともあり、2年生から野手に専念。その春季リーグから出場を果たした。4年春には打率3割2分、2本塁打、8打点を挙げて、DHのベストナインを受賞した。そして全国にその名を知られるようになったのが、3年春の全日本大学野球選手権、関西国際大戦だ。4回の第2打席、カウントは3ボール1ストライク。サイドスロー左腕が投じた外角への135キロの真っすぐを、長い手を伸ばし一閃。打球はライナーで神宮球場の右中間スタンド中段まで運ぶソロ本塁打。とてつもないパワーを見せた打席となった。

 それでも大学通算では4発のみ。打撃は粗削りな部分も多く、プロ入り後にその打撃開花が期待される。「(僕は)まだまだ伸びると思いますので、プロの指導を早く受けたいです」と、村上本人も独特のフレーズで、プロ入り後の自らの成長を期待している。

 10月31日、巨人の岡崎郁スカウト部長と益田明典担当スカウトから指名あいさつを受けた。「ウチがリストアップしていた外野手の中では上位。一番は足が速いこと。打撃を伸ばすことができれば、レギュラーを狙えるだけの守備と走塁を持っている。順調に伸びてくれたらおもしろい存在です」と岡崎スカウト部長から評価を示された。巨人はまずは村上の身体能力に目をつけ、磨けば光る打撃はプロに入ってから徹底的に鍛える形を取ることを育成方針としている。

 大学時代には宮本のほうが脚光を浴び、ドラフト指名順でもかなわなかった。それだけにプロでは自分のほうが上に行きたいと、成功を強く願っている。巨人とヤクルトという同じ在京球団でもあり、宮本が「1日でも早く、同じグラウンドでプレーできるように頑張りたい」と優等生発言をしたのに対して、村上は同じ内容のことを言いたかったのだと思うのだが、「2人で一緒にやっていきたいですが、そうはうまくいかないと思うので、はい。同じ東京なので、はい、助け合っていきたいです」。“天然”村上節のさく裂は止まらない。ついに会場は笑い声が絶えなくなった。そして、決意表明も村上節で締めた。

「村上選手が、試合に出ていたら“ヨッシャー!!”と思われる選手になりたいです!」。

 体格も言動も超人系の村上。将来のスターになる可能性を秘めた男が、巨人の門をたたく。

(取材・文=椎屋博幸)
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