ポスティング制度成立もいよいよ大詰め 大谷の代理人が語る二刀流の可能性

丹羽政善

メディアに対応する大谷の代理人ネズ・バレロ氏 【写真は共同】

 MLBのゼネラルマネージャー(GM)会議2日目も静かに幕を閉じようとしていた14日午後9時過ぎ(現地時間)、会場のホテルを後にしようとしていると、ちょうど外出していた大谷翔平の代理人ネズ・バレロ氏が戻ってきた。

 挨拶だけでも――と考えたが、耳にスマートフォンを当てている。

 本当に電話をしているのか、話し掛けられないようにしているのか分からなかったが、いずれにしても声を掛けられず、やがてその背中は廊下の向こうで小さくなり、エレベーターホールに消えた。

 もっとも、ポスティング制度に決着がつかない限り、結局、何も話せないはず。捕まえて話を聞いたところで、「コメントできない」と交わされるのが目に見えている。実際、翌15日に午後5時過ぎから応じた取材でも同じだった。

日本メディア向けにバレロ氏が対応

 その日、バレロ氏は彼のスイートルームに20人ほどの日本人メディアを招き入れた。

 取材が行われたのは、各球団のGMらと交渉を行うリビングルームで、その広さはざっと16畳ほど。入ってすぐのところにミニキッチンと小さなダイニングテーブルがあり、横長のソファーと一人掛けのソファーが2つあった。

 そこでふんぞり返っているのが、大物代理人のイメージかも知れないが、バレロ氏は立ったまま出迎え、メディアの一人一人と握手をし、初対面の記者らには「初めてかな?」と声を掛けながら、「ネズです」と自己紹介をした。いかにも彼らしく、この辺は実に律儀な人間でもある。

 しかし、そうしてフレンドリーな振る舞いを見せた一方で、会見には当初、ポスティング制度も含めて不透明な部分も多く、また交渉事でもあることから、質問を受けず声明だけを発表するという制限がかかった。

 ただ一方通行では意味が半減する。結局、バレロ氏の事務所でメディア対応を行うエド・プライス氏と交渉し、代理人になった経緯、二刀流の可能性については質問に応じる、ということで折り合った。ゼロよりは……という程度だが。

 さて、その2点のうち、例えば、二刀流の可能性についてはこう答えている。

「今年のドラフトでは、高校生の二刀流選手が指名された。しかし、彼が活躍したのはあくまでも高校レベル。一方の翔平は、日本のプロ野球という高いレベルで両方の力を証明した。彼が両方に挑戦したいという限り、われわれはそのために全力を尽くす」

 だがやはり、肝心のポスティング制度が合意に至っていないこともあって、声明では、各球団は二刀流として興味を持っているのか、起用法について話をしたか、インターナショナルボーナスプールの規定についてはどう思うのか、ポスティングについてはどうか、といった肝心のことには触れず、彼自身もどかしさを感じているようでもあった。

「今日も何球団かがわれわれの部屋を訪れたが、ポスティングの新しい制度が決まらない限り、そのルールを互いに尊重する意味でも、(大谷については)話を進めることはできない。そこが決まれば、前に進むことができるんだが……」

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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