三冠王・王柏融ら若きスターずらり アジアの頂点を狙う台湾代表

駒田英

直前合宿のNPBロッテ戦は3連敗

2年連続打率4割を超すなど“大王”の異名を取るLamigo王柏融。ロッテとの練習試合では不振に陥ったが、日本のファンの前で、台湾を代表する強打者の実力を示してもらいたい 【CPBL(中華職業棒球大連盟)】

 台湾代表は、10日から12日にかけ、NPB・ロッテを桃園市に迎え、3試合の練習試合を行った。しかし、初戦が1対6、2戦目が4対6、3戦目は1対9と、井口資仁新監督の「初陣」となるロッテに3連敗を喫した。
 
 陳冠宇、林樺慶、林政賢の各先発投手がいずれも先制を許し、5回を持たずに降板となった。結果、3戦目は、連投となった救援陣に負担が掛かり、終盤にダメ押し点を奪われた。投手陣は3試合で19四球を出し、31安打を浴びた。

 投手陣の中には、CPBL使用球よりも「縫い目が太く、大きく、粘り気を感じる」大会使用球への適応に苦しんだ選手もいるようだが、呉俊良(ウー・ジュンリャーン)投手コーチは「慣れていくしかない」と対策を挙げた。

 また、頼みの打線も、1戦目、2戦目は、安打数こそロッテとほぼ互角ながら、畳み掛けることができず、3戦目は散発5安打に終わった。中でも心配なのは“大王”王柏融だ。。ストレートには詰まらされ、タテの変化球にバットは空を切り、3試合で12打数1安打5三振。唯一のヒットも内野安打だった。

 王柏融は、プレッシャーについては否定したものの、不調でタイミングが合っていないことを認めた。そして、「シーズン中のスランプと同様で、大きな問題ではない。日本についてからの2日間でしっかり調整したい。次の試合で1本いい打球が打てれば、感覚はすぐ取り戻せる」と前を見据えた。

井口監督は「台湾は強打者が多い」

 先発投手の不安が露呈、頼みの打線も湿り気味と、課題が目立った練習試合だったが、好材料がなかったわけではない。打者では、3試合連続でヒットを放った陳傑憲のほか、3試合目で4番に座った高卒5年目の左の強打者、陳子豪(チェン・ヅゥハォ/中信兄弟)が2本の長打を放つなど、気を吐いた。

 投手では、中継ぎ陣が踏ん張り、3連投となった王鴻程が最速153キロと力ある直球、キレのあるスライダーで計2回2/3で3三振を奪った。また左腕の彭識穎は、シーズン終盤からの好調を維持。イニング跨ぎもこなし、ロングリリーフが可能であることを示した。

 台湾メディアから、台湾代表へのアドバイスを問われた井口監督は、「台湾代表には強打者が多く、失投は危険だ。ただ、日本の投手は制球がいいので、台湾打線は対応が求められる」とコメント。また、「日本は大砲は少ないが、バッティングの技術が高く、足を使った攻撃ができる。台湾バッテリーはその点も注意しなければならない」と指摘した。
 
 洪一中監督は、3人の先発投手がいずれも5回を投げきれなかったことは不安と振り返りつつ、できる限り調整を続けていくと強調。そして、「今回の結果(3連敗)をひきずらず、勇敢に立ち向かっていく。東京で結果を出すことが重要だ」と、決意を示した。

日本の縁とあるメンバー多数

第1回、第3回WBCで台湾代表入りするなど経験豊富なベテラン・陽岱鋼。オーバーエイジ枠として今大会にも選出され、キャプテンを任命されている 【写真は共同】

 今回の代表メンバーには、NPBから陽岱鋼、陳冠宇、呉念庭の3選手が代表入りしているが、他にも日本と「縁」のある選手も多い。陳傑憲は、岡山県共生高校で、呉念庭の1年後輩に当たる。王鴻程は、陽岱鋼と同じ福岡第一高の出身で、日本経済大、独立リーグ・石川でプレーした。また内外野を守れ、打撃もいい陳品捷(チェン・ピンジェ)は昨年から今年にかけて独立リーグ・徳島で、投手の羅国華は今年の上半期に独立リーグ・高知でプレーした。朱俊祥は、今シーズンLamigoの2軍投手コーチを務めた杉山賢人氏(西武)による熱心な指導を受け、成長の手応えをつかめたと語る。

 また、日本戦先発予定の林樺慶は、2015年のオフにロッテの秋季キャンプに参加。当時の落合英二コーチ、小林雅英コーチを介し、石川歩のシンカー、大嶺祐太のスプリットを学んだ。今年の台湾シリーズで、シリーズ記録となる1試合8打点をマークした内野手の林承飛(リン・チォンフェイ/Lamigo)も同年、ロッテの秋季キャンプに参加している。

 このほか、クローザーの陳禹勲は、NPB・ロッテのほか、CPBL兄弟など6カ国でプレーした小林亮寛氏が経営する施設で、オフに自主トレを行っている。

今大会に向けて新ユニホームお披露目

 CPBLは今大会に向け、日本の野球メーカー「ハイゴールド」の台湾向け新ブランド「ALUKA」とコラボレーションし、新たなユニホームを作成した。黒と白を基調としたデザイン、「台湾」の「T」を強調した新たな「CT(チャイニーズタイペイ)」のロゴ、台湾固有種の「台湾犬」を使ったチームロゴなどは、いずれも斬新だ。

 CPBLではまた、今大会のために、ライブ配信アプリとコラボレーションし、オーディションで12人組のチアガール「棒球女孩(ベースボールガールズ)」を選抜した。東京ドームで行われる本大会には、この「棒球女孩」から4人、CPBL4チームから各1名、合計8名のチアガールが参加する予定だという。このほか、CPBLの各チームの応援団も参加予定となっており、東京ドームで台湾プロ野球の「応援文化」を楽しむこともできそうだ。台湾からの観戦ツアーも組まれており、台湾ファンの多くの来場も期待される。こうしたファンとの交流も国際大会の醍醐味といえるだろう。

2/2ページ

著者プロフィール

台湾野球好きが高じて2006年に来台。語学学校でまず中国語を学び、その後、大学院で翻訳を専攻。現在、政府系国際放送局で日本語放送のパーソナリティーを務め、スポーツ番組も担当。『台湾プロ野球<CPBL>観戦ガイド 』(ストライク・ゾーン)に執筆者の一人として参加した。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント