「演技の質」重視するベテランの戦い方 ボロノフ、リッポン、ビチェンコが表彰台

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「今まさに花を咲かせているとき」

NHK杯の表彰台に立ったボロノフ(中央)、リッポン(左)、ビチェンコ。ベテラン勢の活躍が示したものとは 【坂本清】

 11月10日から開催されたフィギュアスケートのNHK杯・男子シングルでトップ3に入ったのは、セルゲイ・ボロノフ(ロシア)、アダム・リッポン(米国)、オレクシイ・ビチェンコ(イスラエル)と、最近ではあまりない顔ぶれとなった。もちろん優勝候補の筆頭と目された羽生結弦(ANA)がケガで直前に棄権し、当初はエントリーしていたパトリック・チャン(カナダ)が欠場した影響もあるだろう。ただ、それを差し引いても、彼らが表彰台入りに値する演技を披露したことは間違いない。

 特筆すべきは、彼らが今大会の出場選手における、年齢トップ3だったことだ。ボロノフが30歳、リッポンが28歳、ビチェンコが29歳。フィギュアスケートに限らず、多くの競技においても“ベテラン”とみなされだす年齢である。10代後半から20代前半の若い選手たちが、トップ戦線で活躍することも多いフィギュアスケートにおいて、表彰台をベテラン勢だけで占めることは珍しい。もっとも当の本人たちは自身の年齢をあまり気にしていないようだ。

「ロシアでベテランという言葉は、戦争から帰ってきて、長生きしている人に使われていますし、その人たちは非常に尊敬されています。30歳の私がベテランと言われてしまうのかなと思いますけど、私としては今まさに花を咲かせているときだと思っています」(ボロノフ)

「私も来年の2月で30歳になります。ただ、30というのはあくまで数字です。30歳で人生が始まったばかりだという人もいるでしょうし、何歳であろうと氷の上に立って自分が何をするか、どう感じているかが大切だと思っています」(ビチェンコ)

4回転時代にたどり着いた彼らの戦い方

GPシリーズ初優勝のボロノフ。表現も技術も含めて、「求められるのは質」と話す 【坂本清】

 現在の男子フィギュアスケート界は空前の4回転時代。トップ戦線に生き残っていくためには、複数種類の4回転ジャンプを複数回跳ぶ必要がある。羽生や宇野昌磨(トヨタ自動車)、ネイサン・チェン(米国)らはフリースケーティング(FS)で違う種類の4回転ジャンプを4回ないし5回は挑戦する。彼らに付いていくために、他の選手たちも積極的に4回転ジャンプにトライしている。

 しかし、今大会におけるトップ3のFSを見てみると、ボロノフとビチェンコがコンビネーションと合わせて4回転トウループを2回、リッポンが4回転ルッツを1回挑んだだけ。それでも彼らは表彰台に立った。ボロノフは言う。

「フィギュアスケートはもちろんジャンプも大事ですが、スピンや表現もあるし、音楽を選んだうえでどういう演技をするかというのも大きなテーマです。ユヅルやネイサンのように本当に軽々と美しく4回転を跳ぶ選手もいます。その一方で跳んではいるけど、重い感じで跳んでいる人もいるので、求められるのは質なんだと思います」

 ビチェンコもそれに同調する。

「4回転をとても苦労して跳ぶ選手と、3回転なんだけどそれを美しく跳ぶ選手。フィギュアスケートとしてどちらが優れているかというと、やはりミスなく滑らかに跳べた方がいいと個人的には思っています。大切なのは自分をどう見せたいか。それが難しいジャンプの人もいれば、表現だったりする人もいる。何が特別というわけではなく、むしろ氷上でやる1つ1つのことを自分でも楽しむことで、お客さんも楽しんでくれると思うので、4回転を何回跳ぶかというよりも、最終的には演技の質が求められると思います」

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