阪神・大山を立浪和義氏が分析 若き4番に語る「リセット」の重要性

週刊ベースボールONLINE

CSで爆発もシーズンは低打率に終わる

豪快なスイングに将来性を感じさせる阪神・大山。立浪氏いわくタイミングの取り方を勉強すれば、さらにスケールの大きな打者へと成長するとのこと 【写真=前島進】

 2017年の阪神のドラフト1位・大山悠輔選手は、身長は181センチと最近の選手にしてはさほど大きいほうではありませんが、パワーもあるし、非常に思い切りのいい、ほれぼれするようなスイングをします。1年目から4番も張っていますし、金本知憲監督の期待も大きいようです。

 彼の隠れた武器は守備です。プロではファーストがメインでサード、セカンド、外野も守っていましたが、どのポジションもそつなくこなすし、何より肩がいい。打つだけの選手ではないので、首脳陣も使いやすいと思います。

 もちろん、これからの本人の努力次第ですが、将来、阪神の中心的選手になる力は十分にあります。ポジションはサードがいいのかなと思って見ていました。あの肩はお客さんにも魅力的です。

 バッティングは最初、テレビの映像で見ましたが、本当に素晴らしいスイングをしていました。もちろん、試合のダイジェスト版では、ほとんどが好機でのヒットやホームランばかり流れるので、いいスイングで当然ではありますが、キラリと光るセンスを感じました。

 ただ、クライマックスシリーズ(CS)こそ、通算打率5割3分8厘とよく打ちましたが、シーズンでは2割3分7厘と決していいとは言えません。

 あれだけ振る力があるのに、なんでだろうとずっと思っていて、終盤はかなり細かく観察しました。プロの速球や変化球に対し、崩れず、しっかり振るというのは、それだけでも高い身体能力とセンスが必要です。あのスイングができるなら、もっと打率が上がってもいいはず、と思ったのです。

投手に合わせ一瞬止まるような動き

 一つ気が付いたことが、構えからの「リセットする動きがない」ということでした。

 これは感覚的な部分もあり、なかなか言葉だけで説明するのは難しいのですが、たとえば、前からトスしてもらってスイングするときを思い浮かべてください。

 相手がボールを投げるときに、一瞬、タイミングを合わす動きがありますよね。構え自体は、どのようなものでもいいのですが、構えから一瞬リセットしてスイングしていかないと、下半身の力がうまく上半身に伝わらず、結果的に強い打球を打ち返すことができないのです。

 トップ選手でいえば、引退していますが、巨人の高橋由伸監督の現役時代が分かりやすいと思います。構えでは体を揺らしていますが、投手に合わせ、一瞬止まるような動きをしますよね。微妙なのですが、このリセットして投手にタイミングを合わす動きがバッティングでは非常に重要になります。高橋監督は天才型のバッターでしたが、感覚面だけではなく、理にかなったスイングをする選手でした。

 大山選手の場合、一見では分からないと思いますが、そのリセットするアクションがなく、極端に言えば、構えから一気にスイングに行ってしまいます。だから、たまたま投手とタイミングが合えば、素晴らしいスイングで、素晴らしい打球が飛ぶのですが、どうしても、いまはその確率が低く、それが打率にも表れてしまっていると思います。

 ただ、彼にはトップ選手に大切な素直さがあるようです。あまり人の言うことを聞き過ぎると迷ってしまいますが、自分にとっていいと思ったことは素直に吸収するのも若いうちは大事なことです。あれだけのスイングができる選手ですから、タイミングの取り方について勉強すれば、きっとスケールの大きな大打者に成長するのではないでしょうか。
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