前進か、後退か―― 緒方広島の敗因と3連覇への課題
日本シリーズ進出を逃し、ファンに挨拶をする広島ナイン。リーグ連覇をしながら、CS敗退の要因は? 【写真は共同】
日本シリーズが終了し、レギュラーシーズンで94勝と圧倒的な強さを見せた福岡ソフトバンクが2年ぶり8度目の日本一に輝いた。しかし、その舞台にセ・リーグで88勝を挙げた広島の姿はなかった。
シーズンで14.5ゲーム差を付けた3位の横浜DeNAに、クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージで“まさか”の敗退。今季も勝率7割超と神がかり的な強さを見せたマツダスタジアムで4連敗を喫しての敗退は、衝撃を超えてむしろ拍子抜けとも言える結末だった。昨年よりも1段階早いステージでの敗退に、最強赤ヘル軍団の再来、新たな黄金時代の到来などと色めき立った周囲も、一気にトーンダウンした感が否めない。果たして、その敗因はどこにあったのか。
空白16日間の影響
広島がリーグ連覇を達成したのが9月18日。ここから10月1日のシーズン最終戦まで約2週間もあったが、これは独走優勝ゆえの致し方ない。問題はその後のCSファイナルまでの期間、18日の開幕まで実に16日間の空白があったこと。地元開催試合での雨天中止が少なく、12球団でもっとも早い全日程終了という事情があったとは言え、この長過ぎる空白期間は異常と言うしかない。その後のCSファーストステージでの雨天試合決行問題などを考えても、日程面では再考の余地ありと言わざるを得ない。
この期間中に、広島はフェニックス・リーグへの主力選手の派遣を行わず、対外的な実戦は、地元の社会人チームとの3試合だけだった。この3試合で計34得点を奪い、丸佳浩が3試合連続本塁打を放つなど、打線は好調を維持していると思われた。投手陣も薮田和樹、野村祐輔、ジョンソンらが軒並み好投し、長いブランクへの不安を一蹴したかと思われた。
しかし、いざ本番を迎えると、打線は濱口遥大や井納翔一、リリーフで登場した今永昇太ら、DeNA投手陣の力のある速球に自慢の打線が封じられ、野村や薮田もファーストステージ突破で波に乗ったベイ打線を封じることができなかった。それ以外でも、攻守に渡ってシーズン中にはあまり見られないミスが目立つなど、微妙な実戦感覚のズレを感じざるを得ないシーンが相次いだ。
離脱と疲労、流れをつかめなかった采配
そして戦力面での最大の痛手は、今季4番打者に定着した鈴木誠也の離脱が、やはり痛かった。代役の松山竜平が9月に月間成績が打率4割2分6厘、5本塁打と大活躍したが、CSでは2試合無安打に終わった後に4番を外れ、計5試合で放った安打は3本だけだった。さらにチームの看板だった菊池涼介、丸も打率2割台にとどまり、特に菊池は3月のWBC出場からの長いシーズンの中で疲労困憊なのは目に見えてわかるほどだった。
投手陣も、特に先発陣はシーズン半ばから、少しずつだが歯車の狂いを見せ始めていた。8月の先発防御率4.70が示すように、この時期から先発陣の早い回での降板が目立ち、リリーフ陣に負担がかかる状況が続いた。前半戦を引っ張った薮田や岡田明丈はシーズンを通して活躍した経験がなく、頼みのジョンソンと野村は最後までエースとしての存在感を発揮できなかった。
また、昨年の日本シリーズで指摘された緒方孝市監督の短期決戦での采配が、今年も振るわなかったのも敗因のひとつと言わざるを得ない。昨年は栗山英樹監督、今年はラミレス監督と、対峙した相手監督の臨機応変な采配が当たりまくったこともあり、余計に緒方監督の采配面がクローズアップされる部分はあったにせよ、スタメン起用や代打選手の選択などが、ことごとく裏目に出たことは否めない。故障者が続出するなどの致し方ない事情もあったにせよ、不在の選手をカバーしたシーズン中の戦いぶりがCSでは見られなかった。何より首脳陣の「普段着の野球を貫く」という姿勢は、言い換えれば融通が利かないということでもあり、“流れ”が重要な短期決戦に対応できず、昨年の日本シリーズと同じ轍を踏んでしまったとも言えるだろう。