【UFC】自然体で正規王者狙うウィテカー 来年にビスピンvs.GSPの勝者と対戦

長谷川亮

UFCミドル級暫定王者に付くウィテカーにインタビュー 【スポーツナビ】

 今週末に迫った「UFC217」(日本時間5日、米国・ニューヨーク)ではミドル級王者マイケル・ビスピン(イギリス)が、過去にウェルター級で9度の防衛を成し遂げた元王者ジョルジュ・サンピエール(GSP)の挑戦を受けるタイトルマッチが行われる。しかし、この階級で暫定王者に君臨しているのがホナウド・ジャカレイ(ブラジル)、ヨエル・ロメロ(キューバ)とミドル級屈指の実力者を連破し存在感を示しているロバート・ウィテカー(オーストラリア)。その実力は正王者ビスピン以上とも評されるウィテカーに、この一戦を予想してもらいつつ、これまでの歩みを聞いた。

来日の理由は「アニメやゲームが好き」

最初に始めた格闘技が空手。そして日本のアニメやゲームにも興味を示している 【スポーツナビ】

――今回はUFC日本大会に合わせての来日となりましたが、日本には初めて来たのですか?

 昨年、家族と一緒に旅行で来たことがあって2度目です。

――ほかにも候補地があったと思いますが、その中でも日本を選んだのはどうしてだったのでしょうか?

 もともと日本のアニメやゲームが好きで、ずっとプレーしたり観たりしていたから一度来たいと思っていたんです。実際に来てもすごくイメージと合っていて、とても気に入っています。日本のアニメは今も新しいシリーズが出るとすぐに観ていて、最近のお気に入りは『ワンパンマン』。すべての敵をワンパンで倒しちゃうんだけど、自分もそうなりたいと思ってます(笑)。

――そもそもウィテカー選手は最初に始めた格闘技が空手だったそうですね。

 とにかく負けず嫌いな子どもで、親がセルフディフェンスだけでなく礼儀やしつけといったことを学べるのがいいと思って兄弟2人で始めたんです。それでまず剛柔流空手で黒帯を取って、それから別の格闘技へ移っていきました。

――今も戦う中で空手が役立っている部分はありますか?

 戦い方を見てもらえば分かると思うんですけど、やはり動きだったりは空手でつちかったものがかなり生かされています。そういう意味では空手は自分の特徴でもあり、強さの秘訣というかポイントでもあると思います。

練習環境を変え、連勝街道へ

練習環境をシドニーに移し、トレーニングをしている。コーチと二人三脚で連勝が続いている 【Getty Images】

――現在の練習環境についてお聞きしたいのですが、トレーニングは今シドニーで行っているのですか?

 今は完全にシドニーだけでトレーニングをしていて、1日を6つぐらいのセッションに分けて練習しています。1回目はジョギングとかですが、そういう感じで毎日を細かなセッションに分けてトレーニングを積んでいます。3、4年ぐらい前に今のパフォーマンスコーチと出会ってからこのスケジュールを組んでいて、彼に全面的に任せてトレーニングをしています。科学的に確立された理論に沿ってメニューを作ってくれているので、自分はそれに従っています。1度のセッションは大体1時間を目途にしていて、基本的には高い強度で行いますが、ストレッチだけで1時間という場合もあります。

――ウィテカー選手は2014年6月の試合から現在まで8連勝と好調です。ちょうどパフォーマンスコーチとトレーニングを始めた頃と時期が重なりますが、やはりその成果が出ているのでしょうか?

 自分もそうだと思っているし、今もそう信じてやっています。彼と出会ってこのトレーニングに変えたことで結果もついてきているので、だからこそ今もこのトレーニングを続けていられるのだと思います。

――では、それ以前というのはどのようにトレーニングをしていたのですか?

 いろいろな場所へ出掛けてトレーニングをしていました。でも、一貫したトレーニングができなかったり、家族と離れて練習を行うので、その環境に慣れないということがありました。なのでシドニーに拠点を置いてトレーニングをしたことで、精神的にも落ち着いて集中できるようになったし、あとは14年11月の試合からミドル級に階級を上げたことも上手くいったと思います。やはりバランスの取れた練習とバランスの取れた生活が送れているのが大きいのではないかと感じています。そういう意味で常に家族と近くにいて会うことができる、それでいて練習もちゃんと積むことができる、この環境が自分にとっては本当に大切だと思います。

――すぐにも試合ができそうなグッドシェイプですが、普段から食生活に気をつけたり節制をしているのでしょうか?

 いえ、見た目より体重があるんです(苦笑)。ただ、普段から日本食をたくさん食べていて、それがいいのかもしれません(笑)。基本的にはなるべくクリーンなフードというか、加工品であったりカロリーの高いもの、スイーツであったりは食べないようにしています。ただ、自分としてはそんなに節制している意識はなくて、今はミドル級でやっていますが、この階級はそこまで減量せずに戦えるし、自分には合っているのかなと思います。

ビスピンの挑発は「本当に気にしていないんだ(笑)」

現正規王者のビスピンに挑発をされているが「本当に気にしていないんだ」と笑い飛ばす 【Getty Images】

――7月のUFC世界ミドル級暫定王座決定戦では、ランキング1位でレスリング五輪銀メダリストのヨエル・ロメロと激しい試合となりました。勝利したものの序盤に膝を傷めたとのことですが、回復具合はいかがですか?

 過去に前十字じん帯を傷めたことがあって弱い箇所ではあったのですが、今はリハビリをしていてだいぶ回復してきています。次の試合はマイケル・ビスピンvs.GSP戦の勝者になると思うので、年が明けてからになるでしょうね。

――この試合をウィテカー選手はどのように予想しますか?

 今回はGSPにとって厳しい試合になると思います。ビスピンはこの階級で1番強い選手ですし、スピードもパワーもあって簡単には勝てない相手だと思います。GSPは引退をしてしばらくトレーニングと試合から離れていたので、どのようにカムバックしてくるのかというのが見どころだと思います。でもGSPは素晴らしいチャンピオンでレジェンドなので、彼がどういう試合をしてくれるのか楽しみでもあります。

――現在の正王者ビスピンは、ウィテカー選手に対して挑発的なコメントが目立ちます。それに対しウィテカー選手はほとんど取り合っていませんが、どのように感じていますか?

 いや、本当に気にしていないんだ(笑)。自分が気にするのは自分のことだけだし、他に気にしなきゃいけないことや考えなきゃいけないことがある。対戦相手のことは別に気にしないし、相手が何を言おうが気にしないっていうのが自分のスタイルなんです。

――そうした自分のやるべきことに集中したり、周囲にわずらわされない姿勢というのは空手時代に学んだ精神なのでしょうか?

 何か1つ、空手の影響だというのは難しくて、そもそも自分の性格がそうなのかもしれません。ただ、どのみちいつか戦うのだから、何を言ってきたって気にすることはないというのが自分の考えです。だから自分から何か相手のことを言う必要もないし、いずれ戦って分かることです。

――ジャカレイ、ロメロとミドル級でも屈指の強豪を連破したウィティカー選手を正王者のビスピン選手より高く評価する声も少なくありません。

 自分が気にしているのは次の相手と試合のことだけなので、何連勝したとか強い相手に勝ったっていう過去のことは本当に気にしていません。それは別に終わったことだし、今は逆にビスピンとGSPが戦って、その勝った方と戦うことが分かっているので、そのことだけを考えています。

――では、まずその試合を待つこととなりますが、来年行われる王座統一戦への意気込みを最後にお願いします。

 自分のやることは自分の持てる力をすべて出す、ファンが求めているものを試合の場で見せるということだけなので、それは相手がビスピンであってもGSPであっても変わりません。それを見てほしいし、自分への期待は裏切りません。
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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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