ハリル「恐怖心を抱いてはならない」 ブラジル戦、ベルギー戦メンバー発表

スポーツナビ

全く違う2つのオーガナイズになる

招集しなかった香川、本田、岡崎について「本来のパフォーマンスを見つけるべき」とコメント 【スポーツナビ】

――長年、日本代表にいた本田、香川、岡崎が外れているが、それぞれ外した理由は?

ハリルホジッチ まずは他の選手をテストするために選んだということだ。その選手は今、パフォーマンスがいい。今挙げた選手たちは、前回の合宿で私は評価していない。彼らの本来のパフォーマンスを見つけるべきだ。他の選手よりもいいパフォーマンスを見せてくれたらここ(代表)にいるだろう。それぞれとディスカッションをしたし、説明もした。これを競争と呼ぶのだろう。

 こういった変更に慣れていない人もいただろう。例えば長澤をここ最近見たが、A代表でどうなるか興味が沸いた。パフォーマンスがよければここに選ばれている。就任会見でも言ったが、各自が戦ってA代表の席を勝ち取らなければならない。パフォーマンスが良ければ、名前がどうであれ関係ない。ただ、みんなのことはリスペクトしている。グラウンド上で判断している。あとはオーガナイズ、システム、ゲームプランによって変わる。それからタクティクスチョイスで誰が合うのだろうというのもある。

――この強豪国との2試合で、最もテーマになるところは?

ハリルホジッチ この2試合ともかなり厳しい試合になるだろう。特に守備。例えばブラジルの3人のアタッカーを抑えなければならない。それからドリブルに優れたネイマール、ジェズス、ウィリアン、(フィリペ・)コウチーニョ。小さいが速く、方向転換、突破、全てうまい。どのように彼らを抑えるのか。それから中盤にも、フィジカル的にかなり強い選手が控えている。しっかりオーガナイズしてくる。組み立てがうまく、ボールを奪うのがうまい。おそらく違ったタイプのデュエルになるだろう。もちろんできるだけ高い位置で奪いたいが、3人のアタッカーを抑えながらとなると話が変わってくる。みなさんにサンドイッチの守備、カバー、ゲームの予測、密度といってもなかなか分からないかもしれないが、そういったテーマが重要になってくる。

 それからオフェンス面だが、ブラジル人はゲームを読む力が優れている。例えば背後でフリーになるような動きがそうだ。われわれは守備もするが、まずしっかりとブロックで守備をしなければいけない。でも、前回の合宿のような守備ではない。もっと高い位置でブロックしなければいけない。より近く、コンパクトにしなければいけない。それぞれが、自分のゾーンで一人ずつ受け持たなければいけない。特にブラジル戦はデュエルに厳しく臨んでいかなければいけない。

 オフェンスの話に戻すが、相手の背中でフリーになることが重要になる。われわれの中盤と3人のアタッカーの関係性だ。ボールの有りなしでスプリントをしっかりすることがテーマになる。いかにフリーなスペースを作り使うかだ。もしかしたら1人でそこを使うことになるかもしれない。もしくは組織的にそのスペースを作り出す必要。フリーなスペースを誰かが作り、もう一方の誰かがそのスペースを使うなど。それは考え方次第だが、阿吽(あうん)の呼吸を作るためにはしっかりトレーニングしないと。それから今までの習慣を変えなければいけない。なぜかと言うと、われわれのアタッカーのほとんどは(相手を)背負ってプレーしてしまう。だが、ジェズスや(エディンソン・)カバーニやネイマールを見てほしい。。長い時間できるだけゴールを向いている。自分がゴールを向いて勝負をしている。相手のリストをここに持っているが、彼らを個人的にどう抑えるか、そして組織的にどう抑えるか、ビデオも用意しているが頭と心で理解しなければいけない。つまり勇気だ。

 ベルギーはまた違うチームだ。どちらかというとパワー系のチーム。(ロメル・)ルカク、(マルアン・)フェライニ、(クリスティアン・)ベンテケといろいろなタイプの選手がいる。ただ、ブラジル人のような爆発的なスピード(はなく)、(エデン・)アザールやナポリの(ドリース・)メルテンスような選手もいる。パワーも使いつつ、速さもありオフサイドギリギリで仕掛けてくる。ベルギーはサイドをけっこう使ってくる。両サイドバックの(トーマス・)ムニエ、(ヤニック・フェレイラ・)カラスコ、彼らは攻撃を仕掛けるが、どのようにブロックしていくか。

 全く違う、2つのオーガナイズになってくる。ただ、しっかり全員で守備をして、ボールを奪ったら得点を取りに行く。「コンプレックスなしでいこう」と言っている。いろいろ映像などもしっかり見ているので、頭の中でしっかりと準備している。このような相手に何ができるか本当に楽しみ。

 それから、われわれの話すというコミュニケーション能力にはまだ満足していない。怒りたくなるくらいやっていかなければいけない。何人かの選手は、お互いに意見を言うということを伸ばしていかないといけない。少しでも弱点をさらせば、ブラジルでもベルギーでもそこを突いてくる。もっともっと多くのディテールがあるが、そこまで詳細は語れない。

 ジェズスは20歳だが、私にとっては世界で一番うまいアタッカーだと思う。20歳でもだ。身長は174くらい(正しくは175センチ)。背後で垂直にもボールを受けられるし、クロスにも合わせることができる。大きくない選手だが、必ず合わせてくる。常に動きながらプレーしており、ハイレベルなクオリティーを備えた選手だ。彼を守るためにしっかりと話し合いながら守っていかなければいけない。彼はたくさんチャンスを作るので、やられてはいけない。しかも守備でもしっかりとプレッシャーを掛けてくる。20歳でもこんなに良いプレーができるのか、という選手だ。マンチェスター・シティに(セルヒオ・)アグエロが何年もいるが、そのアグエロがベンチに追いやられてしまう選手だ。彼が競争を生み出し、追いやったのだ。(ジョゼップ・)グアルディオラが本当に彼を信頼している。

時には厳しいディスカッションも必要だ

ブラジル代表のG・ジェズスを「私にとっては世界で一番うまいアタッカー」とたたえ、警戒した 【スポーツナビ】

――ハイチ戦は監督も不満だったと思うが、選手たちとは問題を整理できているのか? 2試合で戦術を変えると言っていたが、選手も変えるつもりか?(田村修一/フリーランス)

ハリルホジッチ ハイチ戦は最初の20分はいい試合をして、その後フットボールを台無しにしてしまったので、A代表をもっとリスペクトしてほしいと思った。全く違う2チームにしたのでブロックのトレーニングもした。攻撃した後に、どこに戻るかというトレーニングだ。ただ、それがリスペクトされなかったということだ。でも我慢も覚えないといけない。1回のトレーニング、23分くらいのエクササイズでいきなりぶわっとは変われない。しかもほとんどメンバーを変えたので。その試合のせいで誰かを批判したいとは思わない。私の責任で、私が選んでプレーをさせたからだ。でも試合後、少し厳しく言った。「君たち、W杯行きたくないんだな? 繰り返してはいけないよ」と厳しく、正確な言葉を使って話した。誰しもがジョーカーになれるし、私もジョーカーを使った。このような試合を繰り返してはいけない。W杯がどのような意味か分かっている。

 私はもっと陽気な会見も開けるが、本当にオーストラリア戦は最もいい試合をしたと思うが、その時でさえも私は「このままだとW杯ではうまくいかない」と言った。なぜなら、ブラジル、ベルギーに勝つトライをしなければいけないからだ。もちろん、簡単に負けてしまう可能性もある。現時点でFIFAランク2位と5位かもしれないが、ここ最近の彼らの戦いを見ると本当に2強国だと思う。しっかり準備をしないと数失点をくらう。前回の試合(ハイチ戦)は私の人生でもまれに見る3失点をしたが、この相手は本当に違う。選手ももっと気持ちが沸いてやってくれると思うが、恐怖は抱いてはいけない。試合の中で厳しい時間帯があって、心理面がおかしくなったかもしれない。

 例えば私が就任して2試合目のウズベキスタン戦(5−1)を思い出す。30分うまい試合をして、15分どこにも存在しなくなった。だからハーフタイムで低いブロックをと言わざるをえなかった。こういうゲームコントロールで、メンタルやコミュニケーション、お互いにしゃべることも向上させてほしい。まだまだ。W杯はまた別だ。だからこの合宿を使って伸ばしていきたい。そして学んでいこう。

 私が言いたいことを本当に理解してほしい。背中を向けるのではなく、ゴールに体を向けろ。世界のアタッカーがそうしているのだから。レッスンを彼らは受けるだろう。日本がブラジルやベルギーにレッスンを与えるわけではない。もちろん逆だ。だが、恐怖心を抱いてはならない。私は侍の歴史を説明するが、挑発する気持ちで言うこともある。わざと選手をイライラさせることもある。つまり勇敢さ、勇気を持ってやってくれということだ。あるスタッフは、「ヴァイッド、そんなに選手に強く言っちゃだめだ」という人もいる。だが、私が嫌いだからそういうことを言うわけではない。大好きだし、愛着もある。ただ、伸びるには揺り動かして、厳しく言わないといけない。習慣がないかもしれないが。例えば昌子と厳しいディスカッションをしたと言ったが、排除したいわけではない。その証明として招集しているわけだから。詳細は離さないが、その選手と私1人で話をした。すべての面で伸ばす、という目的で。フィジカル、メンタル、テクニックも。伸びたければ選手は伸びる。

 このチームにロシアに向けていい道を歩んでほしい。8カ月あるわけだ。A代表の候補がいるJクラブのスタッフにも会いにいった。選手とのコミュニケーション、クラブとのコミュニケーションを伸ばしていかなければいけないという思いからだ。われわれがフィジカルテストをやったが、まだ満足のいく結果は出ていない。われわれはカッコつけてミスをしたというが、それで排除するわけではない。時には厳しいディスカッションも必要だと思っている。要求することは簡単ではないが、われわれA代表の仕事としては、クラブ、選手と一緒に協力してやっていくしかない。

――浦和の選手が5人選ばれている。ACLの決勝を控えているが、クラブとどのような話をしているのか?(大住良之/フリーランス)

ハリルホジッチ 浦和とも話をさせてもらっている。彼らも気になっているだろうし、私も気になっている。私もこの試合をもちろん見に行く。詳細な話はここでは控えたい。なぜなら、私の家はJFA。JFAにサラリーをもらっていて、A代表のために何をすべきかを考えて私は仕事をしている。まず私は自分の家を考えるべきだと思っている。

 私もクラブの監督の経験もあるため、クラブの監督だった時は「代表に行くなよ」ということもあった。でも今は逆の立場。でも日本のことを考えると、浦和のこのファイナルは絶対に大事だ。そして浦和のことをみんな誇りに思っている。ここ9年で日本がファイナルにいっていない。浦和だけでなく、その後ろに日本が隠れていると思っている。もちろん浦和の選手も呼ぶが、移動距離は今回そこまで激しくないと思っているので、そこは理解してほしい。われわれがどのようなディスカッションをしているか詳細は明かせないが、しっかりと配慮しているし、いろいろなことを考えている。浦和のためにすべてのことをやるつもりだ。ただ、A代表が私の家だ。みんなのことをリスペクトしている。それが私の仕事であり、権利でもある。

※質問者に関しては、掲載許諾の確認が取れた方のみ明記しています。記名のない方は確認が取れていない方ですので、拒否されている訳ではありません。

3/3ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント