ダルビッシュも称えた一発が思わぬ余波…「これでいろいろな人が学べる」と前向き

丹羽政善

過去にも出場停止処分の例あり

2回、グリエルの本塁打後の行為が差別行為と問題に。ダルビッシュは「完全な人間はいない。これによっていろいろな人がまた学べると思う」と前向き 【写真は共同】

 例えば今年5月、ブルージェイズのケビン・ピラーが、対戦相手の投手に向かって同性愛者への偏見を助長するような発言をしたとして、球団から2試合の出場処分を受け、さらには性的少数者団体が行うチャリティに寄付をした。同じブルージェイズでは2012年にユネル・エスコバル(現エンゼルス)がやはり、同様の発言をしたとして、チームから3試合の出場停止処分を受け、加えてその問題に関して教育を受けることを義務付けられた。今年8月には、アスレチックスのマット・ジョイスが、ファンに対して差別用語を使ったとして2試合の出場停止をリーグから受けている。

 そうした前例を考えれば、グリエルにも2試合程度の出場停止処分が下る可能性が十分にあるが、グリエルが処分に異議を申し立てた場合には、処分の決定を来季に遅らせることもまた可能である。しかし、ワールドシリーズという世界的にも注目されるイベントであり、それでは大リーグ、グリエル双方に批判が集まり兼ねない。そのために1試合の出場停止とし、その代わり異議申し立てをさせないという取り引きが交わされる――そんな見方も出ている。

 いずれにしても28日には、何らかの決断をロブ・マンフレッドコミッショナーは下すことになる。

スライダーの修正できず4失点

 ところで――もう一方の当事者であるダルビッシュだが、試合後、米メディアからもこの行為について質問を受け、日本メディアとのやり取りでは、こう話した。

「客観的に見ると、絶対にアジアの人だけじゃなくて、いろんな人種の人たちを区別するようなことをするっていうのは、もちろん良くないことだとい思いますし、ああいうことをパブリックのところでしてしまっている以上はちゃんとMLBとかも、それなりの処置をしないといけないとは思います。

 けれども、完全な人はいないので、彼もそうでしょうし、自分もそうでしょうし、ここにいる人たちもそうでしょうから、それも彼の中でも一つのミスであって、これによってまたいろいろな人が学べると思うので、人類として――本当に大きなことになるけど、人類としてまた一つ学んで、前に行くステップにできれば、ただのミスで終わらないんじゃないかなと思います」

 ダルビッシュとグリエルの試合後の対応は、大きく明暗を分けた。

 なお、ワールドシリーズ初登板となったこの日のピッチングに関してダルビッシュは、「スライダーが良くなかった」と総括。「スライダーが良くないとカーブも投げられないので、それで速い球に合わされてしまった」と続けた。そのスライダーも通常ならイニングを追うごとに修正をしていくのがダルビッシュだが、1回2/3(4失点)という短いイニングでは、その時間がなかった。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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