ドーハ組、北澤豪がもたらしたもの 集中連載「ジョホールバルの真実」(4)

飯尾篤史

カザフスタン戦では中山雅史と高木琢也(中央)にゴールが生まれ、日本代表は2位を確定させた 【写真:築田純/アフロスポーツ】

 4−4−2の導入と北澤の合流とともに、チームは息を吹き返していく。だが、北澤自身は難しさを感じていたという。
「結局、UAE戦も引き分けに終わったからね。自分ひとりで立ち回っていくのは厳しいな、と感じていた。試合に出るメンバーだけではなく、チーム全体で雰囲気を作れなければ勝っていけない。だから、カザフスタン戦の前にゴンさん、高木さんが戻って来たのは、本当に心強かった」
 ソウルでの韓国との第7戦で警告を受け、出場停止となったカズと呂比須ワグナーの代わりに、岡田が呼び寄せたのは、ドーハ組である中山雅史と高木琢也だった。カザフスタン戦ではその2人にゴールが生まれ、日本代表は上り調子の中でグループ2位を確定させたのだ。
 アジア第3代表決定戦に向けたクアラルンプールでの事前合宿も、好ムードの中でトレーニングが行われていた。
 キャンプ2日目の11月12日。シャーアラム・スタジアムで行われた午後の非公開練習後、ロッカールームから出てきた北澤のまぶたの上には絆創膏(ばんそうこう)が貼られ、血がにじんでいた。報道陣に「誰とぶつかったのか」と尋ねられても、「紅白戦のメンバーが分かってしまうから」と一切明かさなかった北澤が、当時を振り返る。
「トシ(斉藤俊秀)とぶつかったんだ。クアラルンプールに入ってから、連係を深めるためにある程度メンバーを固定してやっていたんだけどね、それだと普通、Bチームはやらされているような感じになってしまう。でも、そういうのが一切なかった。充実感を持って紅白戦に臨んでいて、トシがバーンって来てくれたことが嬉しかったね」

<第5回に続く>

集中連載「ジョホールバルの真実」

第1回 戦士たちの休息、参謀の長い一日
第2回 チームがひとつになったアルマトイの夜
第3回 クアラルンプールでの戦闘準備
第4回 ドーハ組、北澤豪がもたらしたもの
第5回 焦りが見え隠れしたイランの挑発行為(10月31日掲載)
第6回 カズの不調と城彰二の複雑な想い(11月1日掲載)
第7回 イランの奇策と岡田武史の判断(11月2日掲載)
第8回 スカウティング通りのゴンゴール(11月3日掲載)
第9回 20歳の司令塔、中田英寿(11月4日掲載)
第10回 ドーハの教訓が生きたハーフタイム(11月5日掲載)
第11回 アジジのスピード、ダエイのヘッド(11月6日掲載)
第12回 最終ラインへ、山口素弘の決断(11月7日掲載)
第13回 誰もが驚いた2トップの同時交代(11月8日掲載)
第14回 絶体絶命のピンチを救ったインターセプト(11月9日掲載)
第15回 起死回生の同点ヘッド(11月10日掲載)
第16回 母を亡くした呂比須ワグナーの覚悟(11月11日掲載)
第17回 最後のカード、岡野雅行の投入(11月12日掲載)
第18回 キックオフから118分、歴史が動いた(11月13日掲載)
第19回 ジョホールバルの歓喜、それぞれの想い(11月14日掲載)
第20回 20年の時を超え、次世代へ(11月15日掲載)

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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