Wシリーズ前日のダルビッシュと前田 それぞれの思いと共通の目標

丹羽政善

「すごいドキッとする」と前田は心境を明かす

ワールドシリーズ前日会見に臨んだ前田。このシリーズでも勝負どころでの中継ぎ起用が期待される 【写真は共同】

 一方、隣のテーブルで会見に応じた前田健太。ポストシーズンではブルペンに回っているが、5試合に登板し、5イニングをパーフェクトに抑え込んでいる。影の立役者――そう呼んでもいいが、主軸のジャスティン・ターナーも地区シリーズでダイヤモンドバックスを下した時、こう評価していた。

「このチームには自己中心的な選手がいない。ケンタを見てみろ。先発の彼が、リリーフの仕事をきっちりこなしている」

 チームのために――。その象徴が前田というわけだが、前田本人はしかし、その役割を「難しい」と認める。

「(ブルペンの)電話が鳴るとすごいドキッとする。自分の名前が呼ばれなくても電話が鳴った瞬間にドキっとしてしまう。あの緊張感はやっぱり慣れないというか難しい」

 それでも結果は出ているわけだが、そこに彼自身、葛藤を抱えているようだ。

「単純に結果が出ているだけ。5試合抑えただけでリリーフのほうが向いているって言われるのは、僕にとってはすごく悔しいというか心外というか。誰でもこういうことは起こりうる」

 裏には、先発投手としてのプライドがのぞくが、それでもプレーオフではチームに求められた役割に徹する。評価されているのは、リリーフとしての適正ではなく、やはりその姿勢なのだろう。

 第1戦は明日、米西部時間午後5時9分(日本時間25日午前9時9分)プレーボール。

 ダルビッシュと前田は、それぞれに別々の思いを抱きながら、それでも頂点という共通の目標を見据え、ワールドシリーズに挑む。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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