ワールドシリーズはシーズン100勝対決 ドジャースとアストロズの歴史を振り返る

菊田康彦

カブスを破り、29年ぶりのワールドシリーズを決めたドジャース 【写真は共同】

 ヤンキースがア・リーグ優勝決定シリーズに敗れ、36年ぶりとなるはずだったドジャースとのワールドシリーズ(以下、WS)は幻に終わった。両者の対決は過去に11度も行われたWSきっての名物カードであり、今シーズンはヤンキースに田中将大、ドジャースには前田健太とダルビッシュ有が在籍していることもあって、このカードが実現しなかったことを残念に思うファンも多いだろう。

 だが、個人的にはこれで良かったのではないかと思う。「番狂わせ」はポストシーズンの醍醐味の1つであり、ア・リーグ東地区2位のワイルドカードからここまで勝ち上がってきたヤンキースの健闘は称賛に値するが、やはりワールドチャンピオンの座は「強いチーム」に与えられるのが理想だと思うからだ。

 その意味ではドジャースとアストロズによる今年のWSは、理想的なマッチアップといえる。今季のドジャースは6月下旬からナ・リーグ西地区の首位を突っ走り、両リーグ最多の104勝をマーク。アストロズも夏場に調子を落としはしたものの、ほぼシーズンを通してア・リーグ西地区の首位を独走し、101勝を挙げている。8月下旬から怒涛の22連勝を記録した中地区王者のインディアンスには1勝及ばなかったものの、5月の終わりからは常に2位を10ゲーム以上引き離すなど、安定感は群を抜いていた。

 シーズン100勝以上したチーム同士によるWSは1970年のオリオールズ(108勝)対レッズ(102勝)以来であり、両リーグを代表する「強いチーム」が相まみえる今年のカードはメジャーリーグの頂上決戦にふさわしい。ただし、こと過去の実績となるとドジャースとアストロズには大きな差がある。

かつての“常連”も29年ぶりのWS

1988年のワールドシリーズ第1戦、代打で逆転サヨナラ本塁打を放ったカーク・ギブソン。この勝利でドジャースは勢いに乗り、このシリーズを制した 【Photo by Focus on Sport/Getty Images】

 これが88年以来、実に29年ぶりのWS出場となるドジャースだが、出場19回はカージナルスと並び、ジャイアンツの20回に次いでナ・リーグ2位タイ。メジャー全体でも、ヤンキース(40回)とジャイアンツに次ぐ出場回数を誇る。これに対してアストロズのWS進出は、まだナ・リーグ所属だった2005年に続いて2度目。今回はア・リーグ所属で、両リーグから出場するのはこのアストロズが初めてとなる。

 ドジャースのWS初出場は、まだニューヨークのブルックリンを本拠地としていた1916年のことだ。この時は投手だったベーブ・ルースを擁するレッドソックスに、1勝4敗で敗れている。その後は20年のWSでインディアンスに敗れると、41、47、49、52、53年はいずれもヤンキースとの「サブウェイ・シリーズ」に敗退。「Wait till next year(来年まで待ってろよ!)」はドジャースの選手たち、そして地元ブルックリンのファンにとっての合言葉となった。

 ようやく、その「来年」が訪れたのは55年。就任2年目のウォルター・オルストン監督のもと、2年ぶりのナ・リーグ優勝を飾ってWSに進出すると、ヤンキースに「6度目の正直」で勝利。2連敗で迎えた第3戦で完投勝利、そして最終第7戦では完封勝利を挙げた左腕、ジョニー・ポドレスがMVPに選ばれている。

 翌56年もナ・リーグを制したドジャースは、再びヤンキースとのWSに臨むが、第5戦でドン・ラーセンにWS史上初の完全試合を達成されるなど、前年とは逆に3勝4敗で惜敗。それでも58年から西海岸のロサンゼルスに移転すると、翌59年にはWSでホワイトソックスを破って4年ぶりの王座に返り咲く。

 60年代はサンディ・コーファックス、ドン・ドライスデールという左右の絶対的なエースで、3度のリーグ優勝、そして2度のWS制覇(63年、65年)。しかし、74年のWSで黄金期のアスレチックスに敗れると、23年間続いたオルストン政権は76年限りで終焉を迎える。後任は、後に野茂英雄の入団で日本でも脚光を浴びることになるトミー・ラソーダ監督。新生ドジャースは77年からリーグ連覇を果たすが、WSは2年連続でヤンキースに敗退。ファンはまたしても「来年まで待ってろよ!」と叫ぶしかなかった。

 ラソーダ監督率いるドジャースは、81年のWSでついにヤンキースに雪辱。88年にはホセ・カンセコ、マーク・マグワイアらのアスレチックスと対戦すると、カーク・ギブソンの代打逆転サヨナラ本塁打で勢いに乗り、オーレル・ハーシュハイザーの快投もあって4勝1敗で通算6度目の世界一。これは当時としてはヤンキース、カージナルス、アスレチックスに次ぐ回数だったが、その後は28年もの長きにわたってWSから遠ざかる。

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著者プロフィール

静岡県出身。地方公務員、英会話講師などを経てライターに。メジャーリーグに精通し、2004〜08年はスカパー!MLB中継、16〜17年はスポナビライブMLBに出演。30年を超えるスワローズ・ウォッチャーでもある。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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