若手奮闘もCS敗退「この経験を財産に」 変革の種がまかれた西武の2017年

中島大輔

赤く包まれたメットライフドーム

CSファーストステージ敗退が決まり、肩を落とす西武の選手たち 【写真は共同】

 3日間で9万6810人。10月14日からメットライフドームで行われたクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージの埼玉西武vs.東北楽天は全試合ともに満員の観衆で埋まり、その大部分が炎獅子の赤色に包まれた。4年前、千葉ロッテを迎えたCSファーストステージで球場の半分近くが黒に染まったのとは、明らかに異なる光景だった。

 過去3シーズン連続でBクラスに沈み、辻発彦新監督を迎えた今季。CSで本拠地を包んだファンの熱は、ライオンズが変わりつつある証だった。10月16日、楽天に1勝2敗で敗退が決まった3戦目の後、指揮官はこう振り返っている。

「最後まで応援は力強かったし、この3試合で選手たちもそういうものを感じたと思う。いい試合をすれば、勝てば、ファンは来てくれる」

 そう言った辻監督は、「ただ」と言葉を紡いだ。

「俺が思うところには、反省するところがいっぱいある。選手個々もそう思っていると思う。この悔しさをしっかりと反省しつつ、また来年に向けていく。シーズン、終わったんだよね? よく頑張ったよ。最後、選手たちが必死にやっている姿をちょっと冷静に見ていた。そりゃあ、緊張するさ。緊張した中で、(CSで)4年ぶりに緊張する中で野球ができた。悔しさが倍だと思うけど、外崎(修汰)、源田(壮亮)、山川(穂高)も初めて経験できて、それが大きな財産になってくれればいいかなと思います」

「すべてが成長している」と振り返る指揮官

 エース・菊池雄星の完封と10得点で初戦を完勝しながら、2連敗で逆転負け。指揮官が反省を口にしたように、敗因を挙げればきりがない。

 2戦目の十亀剣、3戦目の野上亮磨ともに両先発が初回に先制点を与えたのが響いた。2、3戦目ともに初回のチャンスをモノにできなかったのも痛かった。リーグトップの打率2割6分4厘と打ち勝ってきた打線は、2戦目は相手先発の岸孝之に抑え込まれ、3戦目はあと1本が出なかった。

 ベンチワークを振り返れば、短期決戦の経験豊かな梨田昌孝監督が積極的に動いてきた楽天に対し、流れを変えにいく手を効果的に打てなかった西武の戦いぶりには疑問も残る。2戦目は3点を追いかける5回、2死二塁で岡田雅利に代打を送って反撃の狼煙(のろし)をあげる選択はなかったか。3戦目は1点を追いかける7回1死一塁、外崎の打席でヒットエンドランを仕掛けてもよかった。8回の守りではシュリッターが2死からウィーラーに本塁打を打たれた後、岡島豪郎、枡田慎太郎と左打者が続くシーンで左腕の武隈祥太を投入する策をなぜ取らなかったのか。痛恨の本塁打を打たれたシュリッターを続投させた結果、岡島に四球、枡田に2ランで致命的な追加点を献上した。

 だが、すべて「たら・れば」の話だ。指揮官はCS敗退という結果を受け止めた上で、あくまで前を向いた。

「これだけ使ってもらっているという感覚は、ルーキーの源田も外崎も山川もあると思う。彼らの姿を見ていて頼もしかった。山川は自分の結果がダメになったらメヒアに代えられるという危機感の中で、4番に座ってずっとやってきた。外崎は(CSで)悔しさがいっぱいあると思う。これが本人の次のステップアップにつながってくれればいい。ピッチャーでは(シーズン)序盤から後ろの3人(増田達至、シュリッター、牧田和久)を酷使したところもあったけど、(後ろに)3人がいたから先発ピッチャーが頑張ってくれた。(先発陣は)雄星一人で引っ張っていってくれたという形だったけど、本当によく頑張ってくれた。そういう意味では、すべてが成長していると思う。『変わらなければいけない』というところをスローガン(=「CATCH the ALL つかみ獲れ!」)にやってきた中で、去年のチームはそこまで知らないけど、変わったんじゃないかなと思うけどね」

1/2ページ

著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント