“スラッガー”清宮幸太郎の育て方 高校通算83本塁打のOB鈴木健氏に聞く

ベースボール・タイムズ

高校通算111本塁打を放ち、今ドラフトの目玉として騒がれている早稲田実・清宮。同じ左打者で高校時代に当時の最多記録となる通算83本塁打を記録し、プロでも西武、ヤクルトで活躍した鈴木健氏に清宮の今後について話を聞いた 【写真は共同】

 10月26日に行われるプロ野球ドラフト会議。最大の注目は、やはり歴代最多の高校通算111本塁打を誇る稀代のスラッガー・清宮幸太郎(早稲田実)の交渉権をどの球団が手にするかだ。そしてそれ以上に大切なことは、プロ入り後にどのような成長を遂げられるかどうか。

 浦和学院高時代に当時最多記録となる高校通算83本塁打を記録し、超高校級スラッガーとして騒がれた鈴木健氏。1987年ドラフト1位で西武に入団し、勝負強さを持ち味にプロで20年間現役を続けた鈴木氏に、清宮の今後について聞いた。

「まぐれでは111本も打てない」

――進学かプロか、それとも別の道か。さまざまな選択肢があった中で、プロ志望届を出した清宮選手に対して率直な感想は?

 僕自身、野球ファンの一人として、清宮君がプロ野球の世界に入ってくるというのはすごくうれしいことですし、早く1軍の試合で、打席に立っている姿を見たい。大学に行っても社会人に行っても目指すところはプロだと思うので、それならば早くプロの世界に入って、プロの水に慣れた方が、結果は早く出ると思います。何十年に一人の逸材であることは間違いない。プロのユニホームを着てプレーしている姿を早く見たいですね。

――魅力はやはり高校通算111本塁打の長打力になりますか?

 そうですね。でも、一発もあるけど、パワーだけじゃなくてハンドリングの柔らかさがあって、広角に打てることも特徴。比べるのはおこがましいけど、同じ左バッターとして僕と似ている部分もある。引っ張るだけじゃないですし、プロ向きのバッティング技術を持っている。高校通算本塁打の指標に関してはいろいろな意見があるでしょうけど、一つ言えることは絶対にまぐれでは111本も打てないということ。やっぱり力がないと打てないし、飛ばす能力というものはずば抜けたものがある。

――金属バットと木製バットの違いで苦しむこともあると思うが?

 どうでしょうね。僕らの時代は木製のバットで練習することはあまりなかったですけど、よく竹のバットを使って練習していたこともあって、プロに入ってからそれほど木製バットに苦しむことはなかった。清宮君も木製バットの練習もしているでしょうし、実際にU−18の試合などでは木のバットでホームランを打っていた。軟式と硬式の打ち方は違いますけど、そもそも金属と木製の違いはそれほどないですよ。その部分で深く考えすぎない方がいい。

清宮の打撃フォームスライドショー

(撮影:中原義史)

「プロの世界で何を感じるかが大事」

――高校通算〇〇本という肩書きが、時にはプレッシャーに感じることもあると思いますが?

 僕の場合は、そういうものはプロに入ってからはまったく関係なかった。僕が西武に入った時は、まさに黄金時代で、本当にすごいメンバーがそろっていた。目の前で清原(和博)さんや秋山(幸二)さんのバッティングを見たら、とてもじゃないけど自分はかなわないと思いましたよ。だからそこで自分のバッティングを方向転換させましたね。

――方向転換というのはいつ頃の話ですか?

 プロ3年目か4年目ぐらいには、切り替えていましたね。僕の場合は、強烈な1軍メンバーがそろった中で、どうやったら試合に出られるかということが優先だった。いくら2軍で試合に出ていても給料は上がりませんからね。やっぱり1軍の試合に出てこその世界なので、そのために必要だったのは結果だった。だから、ホームランを捨てて、どうしたらヒットを打てるかをずっと考えていた。チャンスをもらえるにしても、最初は代打での1打席とかだったので、その1打席でどうやって結果を出すかを考えると、やっぱり大振りするのではなく確実にヒットを打つということだった。これが4打席チャンスをもらっていたのなら、また別だろうけどね。

――清宮選手のプロ志望届提出時の会見では「王さんの868本を目指す」という発言もあったが?

 可能性がないとは言えない。それを目指すのであれば、そのための練習法だったり、バッティングの形を早く見つけて、自分のものにするのが大事だと思う。そして早く1軍の試合に出て経験を積むことが大切になる。清宮君がどこの球団に入るか分からないけど、例えば(福岡)ソフトバンクに入ったとしたら、やっぱりすぐには試合に出られないでしょう。逆に戦力の足りていないチームに入れば、1年目からチャンスをもらえると思うし、その方が打者として伸びていくと僕は思う。自分のバッティングを貫ける環境のある球団に入ってもらいたいですね。

――その意味では球団の起用法、育成法と言った部分も今後の清宮君の成長度合を左右する?

 そうですね。僕自身、少ないチャンスをものにして徐々に結果を残すことができたし、ホームランよりもヒットを追求したことで、20年という長い時間、プロとして野球を続けることができたと思う。だから清宮君自身が、プロの世界でどうやって生きていくかを自分で見つけ出してもらいたい。今はまだ外から見ているだけなので、妄想だとか、期待だとか、夢とかいうものでしかない。実際にプロの世界に入って、何を感じるかが大事になるでしょうね。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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