田中将大の力投で逆転劇の歯車が動く 「それを自分で言ったらダサいでしょ」

杉浦大介

地区シリーズ終了後にシャンパンファイトでよろこぶ田中(左端)らヤンキースの選手 【Photo by Gregory Shamus/Getty Images】

 10月11日(現地時間)、MLBのア・リーグ地区シリーズ第5戦の9回表2死――。ブレット・ガードナーの適時打とライトのエラーでヤンキースが決定的な2点を挙げると、クリーブランドのプログレッシブ・フィールドは沈黙した。昨季のリーグ王者で、今季もシーズン102勝を挙げたインディアンス。ア・リーグの大本命に挙げられたタレント集団のプライドが、音をたてて崩れていった瞬間だった。

 2勝2敗で迎えたこの試合で、ヤンキースが5対2で劇的な勝利を収めた。2連敗からまさかの3連勝。ワイルドカードから勝ち進んだチームは、ドラマチックな形でア・リーグ優勝決定シリーズ進出を決めたのだった。

試合後、目を潤ませたジラルディ監督

「私たちは戦い続けた。若手とベテランがうまくかみ合ったチームだ。そして、信じられないことだが、私たちは素晴らしいチームを倒したんだ」

 シリーズ終了後、ヤンキースのジョー・ジラルディ監督は目を潤ませながらそう語った。指揮官の“it's hard to believe(信じられない)”という言葉に、誰もがうなずくことだろう。クリーブランドでの最初の2戦を連勝したインディアンスは、下馬評通り、より完成されたチームに見えた。その時点で、その後に待ち受ける結果を予想できたものは存在しなかったはずだ。

 しかし、ヤンキースはそこから驚くほどの粘り強さを発揮していく。第3戦、第4戦を田中将大、ルイス・セベリーノの好投で連勝すると、第5戦ではディディ・グレゴリアスの2本の本塁打、ガードナーの気迫のタイムリーなどでインディアンス投手陣を攻略。尋常ではない敵地の空気の中で、CC・サバシア、デービッド・ロバートソン、アロルディス・チャプマンと投手をつないで逃げきった。

 シーズン最後の37戦で33勝と圧倒的な強さを誇ったインディアンスだったが、第3戦以降は驚くほどの脆さをさらけ出していった。ホセ・ラミレス、フランシスコ・リンドアという2枚看板が合計38打数4安打と信じられない不調。大黒柱コリー・クルバーが、今シリーズでは2試合連続で3回も持たなかったことは、大誤算としか言いようがない。

 去年のワールドシリーズでも3勝1敗からカブスに逆転負けをくらったインディアンスは、これでエリミネーションゲーム(王手がかかった状態で迎える試合)で6連敗。1999年以降ではエリミネーションゲームに3勝17敗という勝負弱さは、長く優勝から見放されてきたフランチャイズに暗い影を落としている。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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