ハリル「W杯のレベルからはまだ程遠い」 国際親善試合 NZ戦後の会見
修正点は把握している
ハリルホジッチ監督はペナルティーエリア付近でFKを得られていないことを課題のひとつに挙げた 【Getty Images】
テクニックを見せたかったからだ(笑)。いいテクニックだった。われわれの選手がけがをしているかもしれない中、レフェリーが(試合を)止めなかったことに少しフラストレーションがあった。グラウンダーのいいボールを蹴れることを見せたいというのもあった。監督というのはたまにフラストレーションを感じるものだ。よくないジェスチャーをしてしまうこともある。その後は第4の審判にしっかりと謝った。
──シュートを18本打って2ゴールしか挙げられなかった。本大会に向けての解決策は?
得点の機会は10回はあったと思う。ミドルシュート、ロングシュートについても、今日は選手たちに強調して要求した。ただ不運なことに、枠にいかないシュートがいくつかあった。(香川)真司のポスト(に直撃したシュート)もあった。それから、相手のペナルティーエリア付近でFKをゲットしようということも、試合前に強調して話した。ここ最近、20試合くらいで相手のペナルティーエリア付近でのFKがまったくなかった。それは受け入れ難いことだ。
W杯では、そこからのFKでいいボールを蹴れば決まるし、勝利にもつながる。南アフリカ(W杯)のデンマーク戦では、日本がFKで2点を決めたからこそ(グループリーグを)突破できた。われわれは、そうした直接FKを蹴ることができていないし、いいポジションからのFKを得ることもできていない。
メンタル的にも戦術的にもテクニック的にも、いろいろなところで選手たちもトレーニングしている。そして今が最高の状態ではないことも分かっている。ただし、修正点は把握している。10回ゴールチャンスを作れたなら、少なくともその前に、そうしたプレーがあったということだ。そして試合前の2回のトレーニングセッションでは、フィニッシュで終わらせていた。これからも、しっかりトレーニングしていかないといけないし、もちろんチームを成長させないければいけない。
──たくさんのシュートを打ちながらも枠にいかないという話だが、枠にいくためにはどのような技術が必要なのか。フランスリーグの元得点王としてコメントしてほしい。(小谷紘友/フリーランス)
(現地時間5日に行われた)W杯予選でドイツがアウェーで(北アイルランドに)勝利した。美しいゴールではなかったものの、25メートルからの得点が2つあった。それらはトレーニングから生まれるものだ。今日は慌てる姿が選手から見られた。最後のシュートのところで集中が少し足りなかった。身体の向き、足の向き、そういった最後のところでコントロールしないといけない。コントロールすべき部分で、最後のところでフッと息を吐き、落ち着いて蹴る。早く、そういうところまでいかないといけないのだが、しっかりコントロールしないといけない。
それにはトレーニングしかない。クラブでもたくさんトレーニングをしてもらいたい。先ほども言ったが、試合前の2つのトレーニングでは、最後のところでフィニッシュできていた。不運なことに、代表でのトレーニングの時間は限られている。選手たちに話した中で、個人トレーニングをクラブでも行ってほしいと伝えた。トレーニングを続ければ、先ほど言った(ドイツのような)シュートが打てるようになる。
特に井手口(陽介)や(山口)蛍のような選手──。ホタルには、たまに憤りを感じてしまう。なぜなら彼は、クラブでの試合で、そういうトライが見られないからだ。だから私は彼にプレッシャーをかけている。彼は正確で素晴らしいシュートを持っているし、その精度を上げるためにトレーニングしてほしい。25メートル、30メートルからのシュートを決められるようにするにはトレーニングが必要だ。決まらなかったものの、少なくともそういったシュートが見られたことは、一歩目を踏み出せたと思う。(長友)佑都は2回、ミドルを打った。彼のシュートがどこにい行ったのか分からないので、今も探しているみたいだが(笑)。
今年はたくさんの選手を見て、何ができるか見極めたい
中村(俊輔)を含め、いいFKを蹴れる選手がいたのは知っている。ただその前に、FKを得ることができていない。だから選手たちにFKをもっと得ないといけないと強く求めている。オーストラリアはCKやFKから得点の6割を得ている。そして強豪と呼ばれるチームも、セットプレーから点を取っている。
今の日本には、中村のようなキッカーがないのは事実かもしれい。だがそれ以前に、FKを得られなければ話にならない。今日はCK(からのゴール)がなかった。もちろん、トレーニングをしていないということもあるが、ボールが少し遠いところに行ってしまい、高いレベルのものを見せることができなかった。また選手たちと話をして準備し、全員で自分たちが向上できるというビジョンを持つようにしたい。
以前、私は(今のままでは)W杯では通用しないという話をした。オーストラリア戦、UAE戦、サウジアラビア戦など、非常に高いレベルのプレーができることを見せたこともあった。だが、まだまだ選手たち自身が修正できる点もたくさんある。選手たちも、それを意識している。それはいいことだ。選手たちも自分たちで、修正、向上しようとしている。そういう姿勢の選手がいれば、成長しやすくなる。
──監督が目指した縦方向に速い、デュエル(球際の競り合い)の強いサッカーは浸透しつつあると思う。ただし、押し込んだときにボックスに遅れて入ってくる選手が意外に少ないのではないか。ボックス正面で遅れてきて、ミドルシュートを狙うパターンがあれば、今日の2点目のような攻撃のバリエーションが増えるのではないかと思うが、そういう認識はあるか?
倉田の(ゴールシーンの)話をされていたが、交代のときに彼には「フィニッシュまで行け」と言った。なぜなら杉本(健勇)が(前線で)孤立していたからだ、(小林)祐希にもそれを要求した。乾(貴士)が入ることで、(他の選手も)絡んでチャンスが生まれると思ったし、逆サイドからも飛び込んできた。ただ、25メートルや30メートルの距離からのシュートでは、少し焦るような場面もあった。井手口はまだ若く、これから成長していくだろう。
前半も久保(裕也)と武藤(嘉紀)が(サイドに)開きすぎていた。彼らにボールを出して、彼らが内側に向かって走り出せば、フリーで受けられた。もう少しテクニックがしっかりと使えて、ボールをプロテクトできていれば、より良い場面を作ることができた。もっと一緒にプレーすれば、もっと連係も深まっていくだろう。
次の試合では、まったく特徴の異なるチームと試合をする。われわれも形を変えていくので、自動的に連動する回数は減るかもしれない。今年はたくさんの選手を見て、それぞれに何ができるのかを見極めることにしたい。そして3月以降は、より選手やプレーの仕方が固定されていくと思う。今のところは、より多くの選手を見て、最終的に誰が残るかを見たい。それを見たあと、しっかり分析をして誰がW杯に行けるのかを選択したい。
その道程の中で、選手たちもレベルを上げていく。つまりこのチームが見せられる、最高のレベルからはまだ遠いということだ。この期間中、私はできるだけ多くの選手にプレーをする機会を与えたい。クラブと代表で、役割が異なる選手もいる。私が行おうとしているのは、日本人の特徴をいかした日本式のサッカーでプレーすることだ。毎回、良いパフォーマンスが見せられるか分からないが、それを目標に準備をしていきたい。(今は)われわれが見せられる最高のレベル、W杯のレベルからはまだ程遠いと思う。
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