挑戦者として臨む王者・栃木ブレックス 田臥「新しいメンバーで、新しいバスケを」

大島和人

初代王者はオフに激動

Bリーグ初代王者となった栃木。キャプテン田臥は「去年は去年で、今年は今年」と気持ち新たに新シーズンへと臨む 【石田祥平】

 昨季の栃木ブレックスはBリーグ初代王者にふさわしい好チームだった。大きくリードされても、そこから流れを引き戻してしまう戦いぶりが圧巻だった。

 例えばチャンピオンシップ(CS)のクォーターファイナル第2戦は、22点差から千葉ジェッツを逆転している。シーホース三河を下したセミファイナル第3戦(5分ハーフの延長時限)も、ビハインドから追いつき残り2秒で勝ち越した。ファイナルは1点のリードのみだった残り2分から川崎ブレイブサンダースに1点も与えず、最後の最後で突き放した。

 2016−17シーズンの栃木は失点数がB1最少で、リバウンドはB1最多。その2項目が明らかな強みだった。また流れが悪くても自滅せず「我慢できる」チームだった。

 田臥勇太は昨季を振り返って、まず内面的な収穫を口にする。

「長いシーズンですので、良いときがあれば悪いときもある。そういう長丁場の中で、どう最後まで諦めずに成長し続けるかというのを、チーム全員で共通理解を持ってやることが大事だと感じました。最初から最後まで激しい戦いばかりだったので、全員で勝つ、優勝するためにはどうしなければいけないかと考え続けられた。そういうところがすごく大きかったし、得られた部分かなと思います」

 一方で、田臥は29日に開幕を迎える今季についてこう述べる。

「コーチも変わりましたし、メンバーも変わりました。去年は去年で、今年は今年のチャレンジをしなければいけない」

今季は地区2位以内も困難な挑戦に

 今オフの栃木は苦しんだ。激動の兆候は6月末から表面化し、須田侑太郎の琉球ゴールデンキングス移籍、熊谷尚也の大阪エヴェッサ移籍が相次いで発表された。同時期に渡邉裕規の引退も発表されている。彼らは主に試合途中からコートに立つセカンドユニットだが、「誰が出ても崩れない」「流れが悪くてもチームで戦える」という栃木を支える存在だった。

 7月4日には古川孝敏の琉球移籍が発表された。古川は守備、シュート力などさまざまな強みを持ったオールラウンダー。日本代表で、CSのMVPを獲得した中心選手で、クラブとしても引き留めたい戦力だった。そして7月11日にはトーマス・ウィスマンヘッドコーチ(HC)の退任も発表された。

 キャプテン、ポイントガード(PG)としてチームの柱を担う田臥は栃木に残留している。ただ言葉を選ばず表現すればチャンピオンチームが大きく崩れたわけで、栃木ファンにとっては悪夢のような日々だったろう。

 また188センチ、110キロの体躯(たいく)を生かしたパワフルなプレーでチームの勝利に大きく貢献したジェフ・ギブスとは再契約をしているものの、彼は5月27日のCSファイナルで左アキレス腱を断裂。6〜8カ月の治療期間を見込む必要があり、復帰はシーズン半ばとなる。

 ギブスの復帰まで、リバウンドの脅威はどうしても薄れるだろう。パワーフォワード(PF)の竹内公輔はこう述べる。「ジェフは素晴らしい選手ですし、僕には彼のまねはできない。自分がどうやったらこのチームに貢献できるかを考えて、積極的にやりたい」

 加えて、今季は昨季の8強のうち5チームが東地区にひしめいている。5月のファイナルで対戦した川崎も東へスライドしてきた。昨季は地区優勝を成し遂げ、CSではホームの利を得た栃木だが、今季はまず2位以内に入ること自体が困難な挑戦になる。

 竹内はこう危機感を強調していた。

「チャンピオンであぐらをかいて、という感じは全くないですね。チャレンジャーのような気持ちで臨まないと、また頂点に立てない。選手が抜けてしまったので、自分が去年より活躍しないと去年のような成績を残せないという自覚があります」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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