ドジャース、生みの苦しみ乗り越え地区V ダルビッシュが歓喜の中で口にしたこと

丹羽政善

現地22日のジャイアンツ戦で5年連続16度目の地区優勝を果たしたドジャースナイン 【写真は共同】

 クラブハウスのドアが空いた瞬間、シャンパンの香りが鼻をつく。22日(現地時間)、マジックを1としていたドジャースがジャイアンツを破って、5年連続16度目の地区優勝を決めると、恒例のシャンパンファイトがクラブハウスで始まった。

 10分ほどして、メディアにも入室が許されたが、選手らが盛大にシャンパンを掛けあっている中に飛び込んで、ダルビッシュ有や前田健太の姿を探すのは、勇気がいる。中央の床は少し低くなっているのか、シャンパンとビールが混ざった液体が浮いていて、それを予期してビーチサンダルで取材に向かったものの、足を踏み入れた瞬間、べたつくのが分かった。

 その中央にいると、どうしてもいろんな方向から飛沫(ひまつ)が飛んで来る。顔や首がべたつき、目に入ると痛い。だから選手にとってゴーグルは必需品なのだが、周辺のバトルが激しくなると、クラブハウスの端っこにいる選手の子どもたちの近くへ退散。選手らもさすがにそこへシャンパンの瓶の口を向けることはない。

ダルビッシュと前田のバトル勃発

チームメートからシャンパンを浴びる前田 【写真は共同】

 そうして一進一退を繰り返しているさなか、クラブハウスの奥では、ダルビッシュと前田のバトルが始まっていたよう。前田がバレないように、こっそりシャンパンをかけたが、ダルビッシュに返り討ちにあった。

「次から、バレないようにやらないと」

 まだ、やるんだ。

「2回目、3回目、無礼講で、どんどん仕掛けていきたい」

 前田、ダルビッシュに対して、堂々の宣戦布告である。

 もっとも、ダルビッシュもまんざらではない。昨年も、レンジャーズで地区優勝を経験したが、次の日に先発予定だったため、シャンパンファイトには参加しなかった。対照的に今回は、前田を仕留めたあと、デーブ・ロバーツ監督らにシャンパンを浴びせ、チームメートらと喜びを分かち合った。そして、「元々、あんまりお酒が好きじゃない」と言うダルビッシュが、こう続けた。

「まあ、家に帰ってビール一杯ぐらいは飲もうかな」

 やがて、シャンパンが尽き、ビールが尽きると、選手らは葉巻を吸い始めたが、どの表情も、何かから開放されたように、穏やか。それは、最後の最後で味わった、生みの苦しみの大きさを物語っていた。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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