後半は打率3割超のイチロー 前半戦と打撃の違いは?

丹羽政善

前半戦は打率2割前後だったが、7月、8月は月間3割を超えるなど調子を挙げてきたイチロー 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 インパクトの瞬間、やや泳いだように見えたが、芯で捉えた打球はライトのフェンスを超えていった。

 9月14日(現地時間)、敵地でのフィリーズ戦前の打撃練習。およそ半分をイチローはスタンドまで運んだ。マーリンズ・パークのライトほどではないが、マリナーズの本拠地セーフコ・フィールドよりは広いシチズンズバンク・パークのライトフェンスが、近く見えた。

 春先と比べて、打球が飛んでいるように見えるのはしかし、必然といえば必然。後ほど触れるが、飛ばないはずがないのである。

 そこへ話を進める前に、前半と後半の違いを俯瞰したい。

6月以降は打撃上向き

 いまでこそ、今季の打率が2割6分ちょうどとなっているイチローだが、今季の前半は、2割前後に低迷。以前も紹介したが、“メンドーサライン”を長くさまよった。打数の少ない時点では打率はさほど意味を持たないが、それでも6月半ばになっても打率が1割台をさまよい、さすがに目を疑った。

 ところが、4月は1割4分8厘、5月は1割9分5厘だった月間打率も、6月に2割7分3厘と少し上向き、7月は3割2分1厘、8月は3割4分6厘、9月は3割1分8厘で、後半だけなら、3割をキープしている。このままの勢いなら2割7分台でシーズンを終える可能性もあるが、では何が、どう変わったのか。

 一つの可能性として、打球方向に理由を求めることができるかもしれない。

 イチローの場合、センターから左方向への打球が多いときというのは、結果が伴うことが多い。2007年以降のデータしかないが、年間200安打を記録していた10年までの4年間の打球方向を記したものが以下の図である。
 ざっと見ると、内野への打球は右方向、左方向ともあまり変わらないが、フィールド全体に目を凝らすと、センターから左方向への打球の方が多いことが分かる。この4年間、イチローは631試合に出場し、890安打をマーク。打率は3割3分3厘で、出塁率3割7分5厘だった。

打球方向を前半と後半で比較すると

 今度は、今季の打球方向を前半戦と後半戦を分けて調べてみた。

 まず、前半だが、こういう結果になっている。

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 この図を見る限り、まんべんなく、左右に打ち分けているように見える。ヒットになった打球も全体に広がり、フィールド全体を使っているといえるが、だからといって、結果と連動しているかといえば、そうではない。前半の打率は2割2分(109打数24安打)だったのである。

 一方で後半はどうかといえば、こうなっている。

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 外野へ飛ぶ打球に関しては圧倒的にセンターから左方向が多い。そもそもライトへ飛んだのは、二塁打の2本しかなく、傾向としては07年から10年までに近い。

 結果はどうかといえば、後半の打率は3割2分4厘(68打数22安打)で、出塁率4割1分8厘、OPS(出塁率+長打率)では.844となっており、後半はやや極端でもあるものの、打球が左方向へ飛んでいるときというのは、まんべんなく左右に打ち分けるよりは、イチローにとって結果が出やすいといえる。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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