ハミルトンかベッテルか、V争いは横一線 F1残り7戦のポイントは?

田口浩次

速さではメルセデスだが…

第13戦イタリアGP終了時点で3ポイント差でトップに立つハミルトン 【写真:ロイター/アフロ】

 2017年のF1シーズンは09年から始まった夏休み(コスト削減を目的に始まったファクトリーの閉鎖ルール)後に、ベルギーGP、イタリアGPとヨーロッパラウンドのレースを終えて、いよいよ最後のフライアウェイラウンド(ヨーロッパ以外でのレース)を迎える。ただし、フライアウェイラウンドと言っても、残りは7戦。まだまだシーズンの行方は分からない。

 これまでに終えた13戦を振り返ると、13戦目にしてランキングトップに立ったルイス・ハミルトン(メルセデス)はシーズン6勝、2位のセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)はシーズン4勝。それ以外は、バルテリ・ボッタス(メルセデス)が2勝、ダニエル・リカルド(レッドブル)が1勝を挙げている。

 この結果だけを見れば、メルセデスの8勝に対して、フェラーリは4勝と明らかに劣勢状態にある。実際、予選結果を振り返っても、メルセデスはハミルトンが8回、ボッタスが2回で合計10回のPPを獲得。一方のフェラーリは、ベッテルが2回、ライコネンが1回とわずか3回のPP獲得に留まっている。速さという面においては、メルセデスの方が有利な立場にあることは間違いない。

 しかし、それだけで今シーズンのチャンピオン争いがハミルトン有利と言い切るのは難しい。というのも、残り7戦のサーキットを見ると、ストリートコースを利用するシンガポールGPと、ヨットハーバー沿いに設計されている最終戦のアブダビGPは明らかにフェラーリに有利な低速サーキット(実際、今季は低速サーキットであるオーストラリアGP、モナコGP、ハンガリーGPはベッテルが勝利している)。

 一方、ベルギーGPとイタリアGPで見せたようなメルセデスの圧倒的なパワーが生かされる高速サーキットは残っていない。強いて挙げれば2本のロングストレートがあるマレーシアGPと、同じくロングストレートがあるメキシコGPではメルセデスが有利と言えよう。残りは低速から高速まで複雑に組み合った日本GP、アメリカGP、そしてブラジルGPと、速さではほぼ互角なサーキットだ。

 つまり、現在238ポイントでトップのハミルトンと、それを3ポイント差の235ポイントで追うベッテルにとって、残りのフライアウェイは再びスタート時点からシーズンを戦うのに等しい状態だ。

タイトルの行方を左右するレッドブルの存在

 こうなるとチーム体制の盤石さなど、あらゆる細かい点も今後を見極めるポイントになる。現在、ランキングトップのメルセデスだが、じつはハミルトン、ボッタスともに今シーズン限りで契約が切れるのだが、いまだ契約延長の話は出ていない。一方のフェラーリはつい先日、ベッテルが3年間、続いてライコネンが1年間の契約延長を発表した。つまり、残りのシーズンを周囲の雑音に乱されることなく戦う環境は、フェラーリの方が整ったと言える。

 13年のターボ復活以降、メルセデスが圧倒的な強さを見せてきたため、ライバルチーム間の争いを振り返ると、12年のベッテル(当時はレッドブル)とフェルナンド・アロンソ(当時はフェラーリ)との争いにまでさかのぼらなければならない。この12年シーズンは、速さではレッドブルのベッテルが勝っていたが、チャンピオンシップ争いはフェラーリのアロンソがリードしていた。しかし、夏休み後、一気にベッテルが追い上げ、逆転でタイトルを手にした。最終的な差はたったの3ポイント。まさにあと一歩でアロンソは手にしかけたワールドチャンピオンの座を逃してしまった。

 この12年のシーズンを今シーズンに当てはめてみると、現在のベッテルは、まさにこの時のアロンソの立場と似たような状態にある。

 では、ベッテルが王者に挑戦するなかで、果たしてライバルはメルセデスだけだろうか?

 正直なところ、ベッテルのワールドチャンピオン挑戦における最大のキーポイントとなるのは、レッドブルの2台ではなかろうか? というのも、レッドブルのマシンが得意とするサーキットは、フェラーリと同じシンガポール、アブダビ、そして日本GPだと言われている。もし、これらのサーキットでベッテルが勝利し、レッドブルがメルセデスの前でチェッカーを受ければ、チャンピオンシップ争いはベッテル有利に働く。しかし、レッドブルが前を走った場合、ベッテルには間違いなく黄信号が灯るだろう。

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