“大衆娯楽”のプロレス文化を根付かせた 24年間の歴史に幕を引いた大分プロレス

長谷川亮

地方にいるからこそできることがある

藤原組長も関節技でアッチィーを苦しめるなど、元気な姿を見せた 【写真:チナスキー】

 引退試合では阿蘇山とタッグを結成し藤原喜明・船木誠勝の師弟コンビと対戦。組長の関節技、船木の蹴りを浴びながらも空中殺法を駆使して反撃したが、最後は船木のハイブリッド・ブラスターを受けマットに沈んだ。

「僕はプロレスをやりたいという原点がUWFで、船木さんとは昨年、藤原さんとは3年前にシングルで戦って自分の中では納得していたんですけど、最後になる相手を考えた時、やっぱりどうしても最初のきっかけの選手たちと戦いたいっていう気持ちが強くなって、お2人にお願いしたというのが経緯です」

ケンドー・カシン(左)は、この日が引退試合となるケンドー釜山(右)の相手を務めた 【写真:チナスキー】

 大会はつぼ原人や怨霊といった怪奇派が第2試合に登場して会場を温め、桜花由美vs.日向小陽の女子プロレスを挟み、ケンドー釜山が“ケンドー対決”でカシンに挑んだ引退試合、そして試合巧者4人による金本浩二&田中稔vs.藤田ミノル&ビリーケン・キッドによるタッグマッチと、プロレスのさまざまな要素を凝縮して満員の会場を沸かせた。

つぼ原人(写真)や怨霊といった怪奇派、桜花由美vs.日向小陽の女子プロレス、金本浩二&田中稔のジュニスタらも登場し、バラエティーに富んだ大会となった 【写真:チナスキー】

「ほとんどの選手がよく出ていた選手で、初参戦でも参戦して欲しかった選手だったので、集大成として良いカードがそろったんじゃないかなという気持ちです。大きい会場だったので埋められるか不安だったんですけど、それなりの形がついたし、最後にふさわしくて、お客さんもそれなりに納得してくれたとは思います」

 解散興行から1カ月を経て、やり切った清々しい気持ちというアッチィーは振り返る。

「地方にいて、地方にいるからこそできることもいろいろあるんだなっていうのは実感しました。九州という離れた場所だからこそ交渉をするのも交流を持つのもいろいろ大変でしたけど、これはプロレスだけに限らず、逆に離れているから、地方だからこそできることもあるなというのは感じました。九州の福岡とか熊本ではなく、大分というちょっと一歩ずれたところからのラブコールというのは受けやすかったのかなと思います。その代わり、熱意と情熱はもう何回も伝えました」

“情熱”と“継続”がチャンスを呼び込む

現役引退となったアッチィーだが、これからも地域にプロレス文化を普及させるための活動をしていくと話す 【写真:チナスキー】

 アッチィー自身、入門テストで不合格となりながらも諦めず、大分プロレスを自身で立ち上げ、夢を復活させかなえてきた。「子どもに夢を 若者に道を 大人に勇気を――」は大分プロレスのキャッチフレーズだ。

「本当に月並みなんですけど“情熱”と“継続”というか、情熱を燃やし続けていくとチャンスが訪れて、それをつかむかどうかだと思います。あとは“きっとうまくいく”と自分を信じること、あまり力まず“なんとかなる”の精神。情熱を消すことなくやっていくと、いろいろチャンスが訪れるよっていうメッセージはこれからも発信し続けていきたいと思います」

 大分プロレスとしての興行は幕を下ろしたが、今後もアッチィーは「依頼があれば裏方としてプロレスを地域のイベントやお祭りにプロデュースします。形は変わっても地域にプロレス文化を根付かせていく形で活動します」とその思いは冷めない。

「“社会とプロレス”できたらいいなと。社会でレスラーとして生きたいという思いは非常に強いです」

 大分プロレスは活動を停止しても、形を変えて生き続けている。

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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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