ヤンキースとRソックスが迎える新時代 “特別なライバル関係”の復活は間近
両軍のゲーム差は3.5
本塁打を量産するジャッジ(写真左)を中心に、今季のヤンキースは若き才能が頭角を現している 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】
現地9月3日、ヤンキース対レッドソックス戦が行われたヤンキー・スタジアムに漂っていた空気をそう呼んでも大げさではなかっただろう。
ア・リーグ東地区首位のレッドソックス、2位のヤンキースが争った4連戦の最終戦。ヤンキースが2勝1敗と勝ち越したあと、両チームがクリス・セール、ルイス・セベリーノというエース格を送り出したことも決戦ムードをあおった。
大舞台で支配力を誇示したのは、ア・リーグのサイ・ヤング賞候補のセールではなく、23歳の若武者・セベリーノの方だった。セールが4回1/3で3本塁打を許したのに対し、セベリーノは6回で自責点0(1失点)、9奪三振の快投。100マイル近い快速球でスタジアムを沸かせたセベリーノは、ヤンキースが9対2で大勝する最大の原動力となったのだった。
「昨日の田中(将大)も、CC(・サバシア)も、先発ピッチャーがみんな良いピッチングをしている。互いに助け合っているし、励みにもなる。続かなければいけないという気になるよ」
試合後にセベリーノはそう述べたが、実際に今シリーズ中は8月31日の第1戦ではサバシアが6回1失点、第3戦は田中が7回1失点とそれぞれ好投してチームに勢いをつけた。インディアンスに3連敗を喫した後、最大のライバルであるレッドソックスから4戦中3勝を挙げた意味は大きい。
これで両チームのゲーム差は3.5。シーズン中の直接対決は終わりだが、レースは終わらない。ヤンキースが戦線に踏みとどまり、9月中はメジャー最大のライバルと言える両雄のプレーに注目が集まり続けるだろう。
ともにフレッシュなロースター擁する
当時の熱さが余りにも凄かっただけに、徐々にクールダウンしていったのは仕方ない。09年以降、ヤンキースとレッドソックスがどちらもプレーオフに出たシーズンはゼロ。往年のスターたちが一人また一人とフィールドを去るとともに、スタジアム、記者席にも空席が目立つようになった。
しかし――。“メジャー最大のライバル関係”がここに来て熱気を取り戻そうとしている。今季は久々に両チームがそろって好成績を残し、ともにプレーオフ進出を果たす可能性も十分。伝統の2チームがコンテンダー(優勝候補)に戻り、直接対決もあらためて大きな話題を呼ぶようになったのだった。
「ライバルとの対戦ではいつも以上のアドレナリンが湧き出るのを感じる。(ヤンキース戦では)いつもよりハードに投げていた。楽しいものだ。激しいレースの中で、ファンも楽しんでいるようだった」
昨季にレッドソックスに加わったドルー・ポメランツがそう述べていたが、やはりこの2チームの対戦には他とは毛色の違う興奮がある。
何より素晴らしいのは、現在の両軍は多くの生え抜き選手たちが主力になっていることだ。レッドソックスはムーキー・ベッツ(24歳)、ザンダー・ボガーツ(24歳)、ジャッキー・ブラッドリー(27歳)というトリオが野手の中心。ラファエル・デバース三塁手(20歳)、アンドルー・ベニンテンディ外野手(23歳)といった楽しみな選手も芽を出してきた。
一方のヤンキースからも、アーロン・ジャッジ(25歳)、ゲーリー・サンチェス(24歳)、グレグ・バード(24歳)、セベリーノ(23歳)らの才能あふれる若手が続々と頭角を現している。これらのいわゆる“ホームグロウン”たちが順調に育てば、ファンが愛着を感じられるチームになっていくだろう。かつてのペドロ、ラミレス、A−Rodのような強烈な“悪役”こそまだいなくとも、フレッシュなロースターは魅力十分である。