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Jデジタル元年、鹿島が挑む新たな領域
「スマートスタジアム化」の狙いとは?

VR動画を使ったメルカリとの共同イベントを開催

大宮戦ではメルカリとのイベントを開催。写真のようなコラボVRキットを組み立てて動画を見ると、ロッカールーム内の様子などをVRで見ることができる
大宮戦ではメルカリとのイベントを開催。写真のようなコラボVRキットを組み立てて動画を見ると、ロッカールーム内の様子などをVRで見ることができる【(C)KASHIMA ANTLERS】

 鹿島がスマートスタジアム化を推進する背景には、ファン・サポーターの満足度向上のほかにも、スポンサーのアクティビティーをどのように充実させるかという“もう1つの側面”がある。

 

 フリマアプリを運営する「メルカリ」と鹿島がオフィシャルスポンサー契約を結んだのは4月7日のこと。「デジタル化によってサッカーの観戦スタイルを変える」という壮大なビジョンを掲げるメルカリとのスポンサー契約に至った経緯を事業部セールスグループの大澤隆徳はこう振り返る。

 

「スマートスタジアム化を目指すにあたって、実は7月ごろにはWi−Fiが導入されるだろうという予測の下、メルカリさんとはスポンサー契約締結前から『スマートスタジアム化において両社で何ができるか』を議論してきました。Wi−Fiが導入されたから、何かをしようというのではなく、あらかじめ予測を立てて準備をしていたからこそ、いろいろな企画を進めることができました」

 

 そんなメルカリとの共同企画の第1弾として、9日に行われる第25節の大宮アルディージャ戦では『mercari day』というイベントを開催する。試合日当日の入場ゲートで配布される「コラボVRキット」を組み立てて、ポータルサイトにアクセスし、スタジアム限定の「360度動画」を選択すると、ロッカールーム内の様子や選手たちが寮から選手バスに乗り込むまでの過程など、普段は目にすることのできない光景をVRで楽しむことができる。

 

 イベント当日は動画が視聴できない、VRキットの組み立て方が分からないといったファン・サポーターのためのサポートブースも設置される。「デジタル」への抵抗感を持つことなく、来場者全員がイベントを楽しむことができるよう、クラブは万全の状態で当日を迎える。今後もJリーグのデジタル化における“先駆者”として、メルカリ協力のもと、新しい観戦スタイルを模索しながら、Wi−Fiを基盤とした新たな企画やイベントを積極的に提案していくつもりだ。

積極的なデジタル化推進の根底にある「危機感」

積極的なデジタル化推進を行う鹿島。共通する思いとは? 写真は左から中田、土倉、大澤
積極的なデジタル化推進を行う鹿島。共通する思いとは? 写真は左から中田、土倉、大澤【スポーツナビ】

 ファン・サポータとスポンサーの両方を意識しながら、積極的なデジタル化推進を行う鹿島だが、そこには共通の思いがあると中田CROは言う。

 

「鹿島は都市部から遠いこともあり、勝ち続けなければ観客は来てくれない。お金も時間もかけてスタジアムに来てくれるお客さんのためにも、1回の満足度を高めなくてはいけないと思っています。そのために、いろいろなものを仕掛けてやっていく。そうしなければ成り立たないクラブだと思っています」

 

 東京駅から高速バスで約2時間。最寄り駅から徒歩5分程度でスタジアムに到着できる都心部のクラブとは、スタジアムに向かうまでの時間も費用も大きく異なる。だからこそ、ファン・サポーターに勝利だけでは得られない満足感を提供するための努力を怠らない。サポーターの満足度を上げることでリピーターを増やし、デジタル化の先駆者として新しい挑戦を行うことで、クラブのブランド価値をアピールしてスポンサー収入にもつなげていく狙いだ。

 

 中田CROは続ける。

 

「選手は頑張ってくれていますが、チームの成績には波があります。そこで僕らフロントがお客さんを呼べるような環境づくりをしなければいけないと思っています。そのために、いろいろなことを先取りしながら仕掛けていかないといけない」

 

 デジタル化により、サッカー観戦のスタイルは少しずつ変化を遂げている。Wi−Fiを使ったイベントへの参加や、SNSなどによるサポーター同士の交流など、観戦だけではないスタイルが確立されることで、来場者はより多くの楽しみを得ることができるようになった。ファン・サポーターが何を求め、スポンサーがどこに価値を見いだすのか。試行錯誤を続けながら、他クラブにはない価値を提供するための努力を続ける。国内19冠を誇る鹿島アントラーズ。その強さの一端を担うのは、こうした未知への探究心と根底にある危機感なのかもしれない。


(文中敬称略、取材・文:木村郁未/スポーツナビ)

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