【WRESTLE-1】怪物・芦野がイケメン退けV4を達成 武藤は地方団体の“天下統一”もくろむ

高木裕美

黒潮“イケメン”二郎(右)の挑戦を退け、V4を達成した芦野祥太郎 【写真:前島康人】

 WRESTLE-1の年間最大のビッグマッチ「プロレスLOVE in YOKOHAMA」が2日、神奈川・横浜文化体育館で開催された。

 WRESTLE-1は全日本プロレスから分裂する形で、武藤敬司が中心となり、2013年9.8東京ドームシティホールで旗揚げ。15年には武藤敬司を校長とする「プロレス総合学院」が設立され、翌年には卒業生による新団体「プロレスリングA.C.E.」も旗揚げされるなど、若手育成に努めている。その一方で、船木誠勝、AKIRA、真田聖也(SANADA)、KAIらベテラン・中堅メンバーが大量に離脱。また、武藤も“プロレスの達人"たちを集結させた「PRO-WRESTLING MASTERS」のプロデュースに力を入れており、WRESTLE-1本隊からは一線を引いている。

 なお、今年4月より、カズ・ハヤシが新社長、近藤修司が副社長に就任。社長だった武藤が代表取締役会長に、15年5月よりCEOを務めていた高木三四郎が相談役になっていたが、「ちょうどいいタイミングだから」と、今大会をもって高木が相談役を辞任。なお、今後もWRESTLE-1とDDTプロレスリングの友好関係は継続する。

モンスター・芦野と人気者・イケメンの激突

バルコニーからのムーンサルトアタックを見せたイケメン 【写真:前島康人】

 メインイベントのWRESTLE-1チャンピオンシップでは、35分以上に及ぶ戦いの末、王者・芦野祥太郎が黒潮“イケメン”二郎を下し4度目の防衛に成功。V5戦では元王者である稲葉大樹と対戦することが決定した。

 芦野は今年3.20後楽園大会で河野真幸から王座を奪取して以来、先輩たちを次々と撃破。元コーチであった近藤修司からは「オレたちはとんでもないモンスターを生み出してしまった」と評されるほど、安定した強さを発揮し、さらにリング上では選手を容赦なく批判する毒舌ぶりで敵を作りまくっている。

 一方、黒潮は実家の居酒屋「鍋家黒潮」に来店した演歌歌手から贈られたジャケットを着てファイトしたことがきっかけで、現在のジャケットスタイルが定着。また、福山雅治の「HELLO」に乗り、客席に乱入しながら散々じらす入場シーンは、大「イケメン」コールを起こし、雑誌Numberによる「プロレス総選挙」では6位を獲得するなど、絶大な会場人気を獲得。7.12後楽園で開催された「WRESTLE-1 GRAND PRIX 2017」では1日3試合を勝ち抜き、初優勝。今回の王座挑戦権を獲得した。

芦野は団体を愛し続けるからこそ批判していく

35分以上続いた熱戦は、芦野がアンクルホールドでイケメンを捕らえ、タップを奪った 【写真:前島康人】

 セグウェイに乗って登場し、観客の度肝を抜いた黒潮は、リング上でもトンパチぶりを発揮。序盤にエプロンから場外へのティヘラを繰り出せば、10分過ぎには1階からバルコニーによじ登り、手すりの上を歩いてムーンサルトアタックを敢行。芦野も30分過ぎ、ジャーマンスープレックス3連発から、黒潮のお株を奪うムーンサルトプレスを繰り出すも、黒潮がこれをかわし、お返しのジャーマン2連発からファイヤーサンダー、イケメンプレス2連発。だが、芦野は2発目をかわしてアンクルホールドでとらえると、さらにコーナーに黒潮を乗せての雪崩式ジャーマンスープレックスから再度アンクルロックで捕獲。さんざん耐えた黒潮だが、ついにマットを叩いた。

 試合前からの予告通り、黒潮初戴冠の「ハッピーエンド」を阻止した芦野は「誰よりもWRESTLE-1を愛してるから、オレがベルトを守る必要がある。だから今後も若手をディスるし、イケメンも批判する。でも、それはWRESTLE-1を良い団体にするため」と、ファンから愛されるよりも、自分が団体を愛し続けると断言。

 一方、実力的にも人気的にもピークを迎えながら、あと一歩、ベルトに届かなかった黒潮は「完敗です」とキッパリ。それでも、「WRESTLE-1はオレが面白くする。ちょっと休んで、また走り続けたいと思います」と悲願の王座戴冠へ意欲を見せた。

キャリア1年未満の挑戦にむかつきとうれしさのチーム246

近藤のキングコングラリアット2連発で熊ゴローをしとめ、チーム246が再びタッグ王者に 【写真:前島康人】

 セミファイナルのWRESTLE-1タッグチャンピオンシップでは、カズ・ハヤシ&近藤修司のチーム246が、土肥孝司&熊ゴロー組を破り王座奪還。次期挑戦者には河野真幸&伊藤貴則組が名乗りを上げて、防衛戦が決定した。

 初代王者組としてWRESTLE-1の歴史を作り上げ、今年4月からは社長&副社長として団体を支えるチーム246は、ベテランならではの試合運びで王者組を圧倒。熊ゴローの得意技であるセントーンを逆に見せ場にして観客の声援をあおると、連係でも息の合った動きを見せる。王者組も、カズを肩車した土肥をさらに熊ゴローが担いで倒す荒技を敢行。近藤にもサンドイッチラリアットから熊ゴローがダイビングセントーンを決めるも、カズに救われた近藤がラリアット合戦を制し、キングコングラリアット2連発で熊ゴローの首を刈り取った。

 近藤が「プレーヤーとしても結果を残した。文体も盛り上がってる。次はここを満員にしましょう」と、選手&フロントの両方の立場から団体を盛り上げることを誓うと、さっそく伊藤が現れ、「次、やらせてもらっていいですか」と挑戦表明。キャリア1年未満の新人からの下克上宣言にも「半分ムカついてるけど、半分うれしい」と、どんどんタイトルマッチを行って、団体を活性化させていくことを誓った。

薬剤師の資格を持つ異色レスラーが王者返り咲き

吉岡世起がWRESTLE-1クルーザーディビジョン王座返り咲き 【写真:前島康人】

 WRESTLE-1クルーザーディビジョンチャンピオンシップでは、吉岡世起がアンディ・ウーを倒し、約半年ぶりに王座返り咲き。薬剤師の資格を持つ異色レスラーが、ベルトを失った4.19後楽園大会のリベンジを果たした。

 アンディはドラゴンスープレックス、雪崩式スパニッシュフライなどの大技を繰り出すも、吉岡は得意の蹴りで応戦すると、ヒザ蹴りからのSKで勝利。「これはゴールではなくスタート。もっとオレを強くするために刺激をくれ。オレはこのベルトを上に持っていく」と、“強い挑戦者”の登場を求めた。

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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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