ハリル「私はここで仕事を続ける」 日本代表、W杯ロシア大会出場決定会見
11月には高いレベルのチームと対戦したい
11月の国際マッチに関しては「高いレベルのチームと対戦したい」と発言した 【スポーツナビ】
先ほど話したこととは違ったことだった。私はこのチームでのビジョンをずっと伝え続けているが、このチームの仕事の中でいくつかの段階がある。昨夜、第2段階が終わり、今、第3段階が始まった。それは最も厳しく難しいW杯だ。これからW杯に向けての準備が始まる。それは今日から始まっており、本番3週間前に準備を始めるものではない。このチームの意欲をできるだけ大きなものにし、勇敢に戦えるようにしたい。ロシアW杯にツーリストとしていきたくはない。まだまだ成功を収めるためには改善点がある。このチームのトレーニングをしている中で、選手たちのメンタルの状態を来日当初によくないと感じた。W杯での敗退、アジアカップでの敗退の影響があったからだ。
私はW杯で結果を残したい。国民はこのチームに誇りを感じていると思うが、W杯は単なる試合ではない。国家のプロモーションという意味でも非常に大きな意味をもっている。W杯期間中、狂気、大きな情熱を見せる国々をいくつも見てきた。そしていつの日か日本で、サッカーが圧倒的なナンバーワンスポーツになってほしいと思っている。その主役が選手たちだ。その準備をしようと選手たちには話をした。しっかりトレーニングをして、チームのために何がいいのかを日々考えなければならない。
私のマネジメント、チームの作り方にも批判はあると思う。私が若手を使うと言ったときに、卒倒しそうな人たちもいた。だが私は自分で責任をもって、そのように行ってきた。もちろんいつも最善策だったわけではないが、その時点でベストだと思うチームを作ってきた。いわゆるベテラン、スター選手も尊重しながら、若い選手も起用しようと思っている。
昨日の井手口(陽介)のプレー、最終的に彼が素晴らしいプレーをした裏でどのようなことが起こっていたのか、皆さんは知らないと思う。そういう準備もある。それに関して本を1冊書けると思う。でも、私の近くにいる人でもそういったことに価値を見いだせない人もいる。違った形にもっていける。ただもちろん、試合でその姿を見せることができなければ、そして結果も伴っていなければ、今の状況はまったく違っていたかもしれない。そして、国内海外問わず日本人選手全員に代表でポジションを勝ち取る努力をしてもらいたい。
私はリスクを冒しながら行なったかもしれないが、日本サッカーにとって大きな一歩になったと感じている。以前は34歳の今野(泰幸)を招集した。それは彼がその段階でトップフォームだったからだ。そしてUAE戦で彼はMVPになった。コーチングスタッフが常にチェックしているが、私もチェックしている。井手口が今日はいいプレーをしたと報告があり、しかしまだ21歳だという意見もあった。でもフランス代表には18歳の選手もリストアップされている。大きな一歩だった。
選手たち全員に、日本人選手全員に、準備をしなさいと言いたい。ロシアW杯に向けて準備をしないといけない。アルゼンチン、ドイツ、フランスなどと今後は対戦しないといけない。恐れていかないほうがいい。というように選手たちに正直に私が感じていることを話した。そしてこのグループに感謝したい。このグループには27人の選手全員を含んでいる。
まだフィジカル的に準備ができていない選手もいた。私は初日から心配ごともありながら、非常にいいポジティブな2得点となり、浅野(拓磨)や井手口など若い選手が点を取ったことも喜んでいる。久保(裕也)、原口(元気)もいたりして、いつも新しいことが起こったりする。代表はみんなのもので、個人のものではない。私はいいコンディション、いいプレーをしている選手にチャンスを与えたい。
そのように行なっているので、私の判断が大多数を納得させていないかもしれない。もしかしたら協会内でもそうかもしれない。このチームを前進させようとしている。素晴らしい性格の選手たちだ。これからは次のチャレンジに向けていい準備をしていきたい。
――W杯に向けた具体的な改善点は? また、11月の国際マッチを強化に使うことができるが、どのようなリクエストがあるか?
日本のサッカーはこれからも進化できると思っている。私は選手たちにとある資料を渡している。それは日本のサッカーのアイデンティティーを見つけるためだ。バルセロナのように、ブラジルのように、フランスのように考えるのではなく、日本らしくなる。そのためには自分たちの特徴、弱点を含めてとらえないといけない。
私は全く違うサッカー(の世界)からこちらに来た。戦術、プレースピードがより高いレベルのところから来た。そしてそこに近づけるために前進している。たとえばフィジカルの面ではたくさんのテストを行なってきた。そのテストも信頼性の高いものにしてきた。そして、国内でプレーしている選手と海外の選手に準備の違いが見られた。
たとえば国内の選手が代表に来たとき、代表のトレーニングのリズムに慣れるのに苦労する。そして現代サッカーは101パーセントのフィジカルコンディションでないとプレーできない。この試合は戦術的にも分析すべきゲームだと思う。たとえばオーストラリアとの2戦、アウェーとホームでまったく違う戦術的なチョイスをした。戦術が好きな人にとっては面白いかもしれない。アウェーでは深いブロックを形成した。なぜならそれがいいと思ったからだ。昨日の試合では90分間を通して高い位置でボールを奪った。引いて守ってしまうと、1メートル90センチの選手がペナルティーエリアに入ってくるため、できるだけ高い位置でボールを奪った。
フィジカル的な戦いを見せた。DFだけの話ではない、浅野、大迫(勇也)、岡崎(慎司)、元気、日本代表のマラドーナである乾(貴士)。彼らの守備での貢献がどれだけ大きかったか。相手はフィジカル的に体格のある選手だったが、そういう戦いができた。速く走ろうということも言ったが、井手口のボールを持ったときのスピードアップ、山口(蛍)の役割もセレッソ(大阪)のものとは違うものだった。トレーニングの時間があまりなかったので、ボードを使ってたくさん説明した。
これから日本代表の改善点はどこかといえば、戦術的、技術的、テクニックはある程度のレベルにまで達しているが、それをスピードと組み合わせなければいけない。そしてメンタル面。そこに関してもたくさん話をしている。コンプレックスでもあるかもしれない部分を、サッカーで大国と言われている国々へのコンプレックスをなくしたい。そして自分たちへの自信もだ。
試合で何が起こってもおかしくない。自分たちの可能性を信じて自信を持たないと。違ったサッカーのアプローチをして物事を前に進めようとしている。ただ、トレーニングの時間があまり取れないのが残念だ。
今日現在、日本のFIFA(国際サッカー連盟)ランキングを把握していないが、トップ10に入ってもらいたい。おろかな発言なのか、楽観的すぎるかは分からない。私は55位から16位まで上げたことがある。可能だということだ。そういうことで、自分のビジョンを伝えようとしている。そしてもちろん、私の周りにいる人たちも私は説得して、納得させようとしている。
私は常に勝者になりたいと思って、勝ちたいという強い意識がある。負けることは嫌いだ。私の性格は常に穏やかではないかもしれないが、選手たちに伝えている。つまり大きな仕事をしながら、たくさんのことをいじっていかなければいけない。選手たちにもかなりダイレクトに修正点を言う。もちろんダイレクトに言われてうれしくない選手もいるだろう。もしかしたらそういう習慣がないかもしれない。だが、私はこのチームとの関係に愛着をもっている。そして全員で進化しようと選手に伝えた。私のやり方が満場一致ではないだろう。何かを変えるためには少し揺さぶる必要もある。
過去どのようやってきたかは、それぞれの指導者のやり方があるので批判したりはしないが、私は私のやり方でやっている。それが成功するかは分からないい。今回W杯出場を決めたことは喜ばしい。この時点で満足し切ってしまってはいけない。さらに大きなものを目指さないと。W杯が終わってはじめて私が満足したかが分かる。私はもっともっと欲している。病気かもしれない。私は勝つことが大好きだ。それをチームにも持ってもらいたい。これからも大きな仕事を成し遂げないといけない。進化するために。もちろん、私を解雇する力はいつでも会長にある。でも友情はなくならないだろう。
10月、11月に(代表チームの)活動があるが、W杯予選が終わったあとの最初の2試合は日本で行われると思われる。まだ世界各国で予選が行なわれているので日本開催になると思うが、11月になれば海外に行けるかもしれない。そして高いレベルの国と対戦できるかもしれない。それがどのチームになるかは決まっていない。アレンジできたら発表があると思う。私は非常に高いレベルのチームと対戦したいと思っている。その時点でどこまでできるのか、日本のレベルがどこにあるか見るためだ。
現時点の状況では、W杯で結果を残せないと思う。9カ月後は変わっているかもしれない。W杯で戦えないという意味ではない。9カ月後にはこのチームの姿が変わっているかもしれない。重要なのはけが人を多く出さないこと。日本のベストプレーヤーがW杯で使えればと思う。
私のサッカーのビジョンは変えない
この試合に前にトレーニングセッションと呼べるのは火曜、水曜だけだった。戦術トレーニングをして、負荷をかけない内容にした。その中で2つ、3つ変えながら試した。まず、代表の活動がない期間にコーチングスタッフがすべての試合を視察したり、映像を見たりしている。国内も海外もそうだ。現場に足を運んだり、映像を見たりだ。そうした報告もあり、選手たちの状態が分かる。なので、チームの8割は出来上がっていた。中盤と前はまだ決まり切っていなくて、いろいろと考えていた。たとえば20歳そこそこの選手が2人いるとか、若い選手を使うことに全員が納得していたわけではない。若い選手がこうしたプレッシャーの中で応えられるのかという心配もあった。
しかし最後の2回のトレーニングの後、決断した。そして説明の部分で個別にもグループでもポジション別でも説明した。そしてオーストラリアのメンバーを見たとき、中盤の枚数を増やしてくると予想した。1トップもMF的な特徴をもった選手が入った。その後ろにMFが4人。よって試合直前にメンバーが出たあとにも選手たちから説明が出て、中盤でどういった戦術をとり、どうやって前からプレッシャーをかけ、逆サイドをどう見るのか。どの高さでブロックを形成するかなど、試合直前にもたくさん質問があり話し合った。
セットプレーもわれわれが予測していた選手、背の高い選手が入っていなかったのでマークの仕方を変えた。細かいことがたくさんあり、細かい指示をたくさん出したが、選手たちがそのすべてを実行してくれたことに驚いている。攻撃にも戦術がある。グラウンダーで速いスピードでプレーしようと。蛍がクラブであまりやっていないかもしれないことかもしれない。個人プレーでも見せてくれた。2人ともいいシュートを持っている。シュートも要求して、井手口がファインゴールをした。このような形で代表でプレーするのはほぼ初めてだったが、私は誇りを感じた。
そして長谷部(誠)の戦術的な役割があり、(吉田)麻也がいて、前線の選手たちも犠牲心を持って頑張った。このチームはもっとトレーニングの時間があればよくしていける。つまり、選手たちとたくさん話し合ったということだ。そして直前まで分からない部分もあったので、話し合って直前に決めた。セットプレーなどだ。相手は(最終予選で)コーナーから5得点取っている。それを守るためだった。すべての細かいことができたのはスタッフが細かいところまで詰めてくれたからだ。そして、コーチングスタッフ、特に日本人のコーチングスタッフにお願いして、若い選手とたくさん話してもらった。ドクターやトレーナーにも声をかけてほしいとお願いした。
そのように全体で励まし合って進めた。会長もホテルに足を運んでいただき、応援の言葉をもらった。全員で準備してきた。うまくいかなければ責任は私。私はそれを受け入れなければならない。このように全体で協力し合って結果を残せたので良かった。私のサッカーのビジョンに変化はないし、続けたいと思う。