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オリックス吉田正尚、本塁打連発の秘密
小柄な体で飛距離を生み出す理由とは!?
173センチとプロ野球選手としては小柄な体ながら飛距離抜群のホームランを連発するオリックス吉田。ホームランを打てるポイントはどこにあるのか!? 打撃フォームからその秘密に迫る
173センチとプロ野球選手としては小柄な体ながら飛距離抜群のホームランを連発するオリックス吉田。ホームランを打てるポイントはどこにあるのか!? 打撃フォームからその秘密に迫る【写真は共同】

 現在最もホームランが似合う選手と言っても過言ではないだろう。オリックスの吉田正尚のことである。


 本数もさることながら、何よりすごいのがその弾道と飛距離である。そして173センチというプロ野球選手としては小柄な身長とのギャップが観客を魅了していることは間違いない。そんな吉田のバッティングについて、飛距離を生み出す秘密をアマチュア時代からのフォームの変遷にも触れながら解説する。

オリックス吉田のホームラン動画

(映像提供:パ・リーグTV&スポナビライブ)

高校時代は巧打者の評価

 筆者が吉田を初めて見たのは2009年6月6日の高校野球春季北信越大会、対桜井戦でのことである。敦賀気比で1年生ながら「4番・レフト」で出場し、3打数1安打の結果を残した。メモには「明らかに他の選手と比べてヘッドスピードが違う」と書いており、当時から素質の片鱗を見せていたことがうかがえる。しかし高校時代はその後も翌年のセンバツ、2年秋と3年春の北信越大会と合計4試合を見たが、当時はホームランバッターという印象は全くなかった。3年春の対北越戦のメモには「力みなくバットが振れ、芯でとらえる技術が高い」とあり巧打者として評価していることがうかがえる。


 そんな吉田の印象が大きく変わったのは青山学院大入学後のことだ。大学で最初に吉田を見たのは、彼が1年だった12年5月1日の対中央大戦。「6番・DH」で出場し、鍵谷陽平(北海道日本ハム)からいきなりライト前ヒットを放ってみせたが、とにかく驚かされたのが振りの強さだ。ホームランこそ出なかったもののそのスイングは完全にスラッガーのものになっていた。その後も卒業までに吉田のプレーを見る機会は8試合あったが、時には迷いが見られることはあったものの、着実にスイングの迫力はアップしていった。そして4年時にはNPB選抜との交流戦で高橋光成(埼玉西武)から一発を放ち、高校日本代表からも2打席連続弾を放つ活躍を見せ、大学ナンバーワンスラッガーの評価を不動のものとする。その後の活躍は言うまでもないだろう。

前に大きく振れるフォロースルー

体全体での押し込みが飛距離の秘密のひとつ。この写真でも後ろ肩が一塁ベースを向くほどインパクト時に体全体でボールを押し込んでいることが分かる
体全体での押し込みが飛距離の秘密のひとつ。この写真でも後ろ肩が一塁ベースを向くほどインパクト時に体全体でボールを押し込んでいることが分かる【写真は共同】

 改めて現在の吉田のスイングを見てみると、最大の特長は大きなフォロースルーにあり、これが高校時代から大きく変わったポイントでもある。以前はインパクトの後もヘッドの位置は頭よりも低くすぐに体に巻きつくようなスイングだったが、現在はバットを放り投げるのかと思わせるくらい前に大きく振れており、ヘッドの高さも頭よりはるかに上になっている。ここまで前で大きく振れる選手は、プロ選手でも他に見当たらない。


 そしてこのフォロースルーを生み出す源になっているのが、下半身と体幹の強さである。右足が着地した時にグリップはしっかり後ろに残っており、バットの角度も地面に対して約45度とスムーズに振り出すには理想的な位置である。そこから両脚の内転筋を使って体を回転させていくが、鋭く回りながらも両足でしっかり踏ん張っているのがよく分かる。これだけ鋭く回転しても姿勢が崩れないのは体を支える強い下半身の賜物である。

強靭な下半身と体幹が生み出す飛距離

 そして注目してほしいのはインパクトの後の上半身の動きだ。普通の打者はミートした後に後ろ側の肩が投手の方を向く程度だが、吉田は完全に一塁ベースの方まで向いている。強靭な体幹の筋肉を使い、インパクトしてから体全体でボールを押し込んでいるからここまで上半身が回転するのであり、その力がボールに伝わっているのだ。強靭な下半身が生み出す安定した鋭い回転、インパクトしてからボールを押し込む体幹の力、この二つが吉田の圧倒的な飛距離を生み出す要因と言えるだろう。


 高校を卒業して木製バットになってから苦労する選手は多いが、吉田は逆に強打者へと変貌を遂げており非常に珍しいケースである。ちなみに高校1年の時に67キロだった吉田の体重は現在87キロにまで増え、当時とは見違えるような体つきになっている。それでいながらスイングのキレと柔らかさを失っておらず、単純なトレーニングだけでなく自分のバッティングを追求してきたことがうかがえる。その強烈なスイングは諸刃の剣で腰を痛めることが多いが、その試練に完全に打ち勝ち、名実ともに球界を代表する打者となることを期待したい。

西尾典文
西尾典文
1979年、愛知県生まれ。大学まで選手としてプレーした後、筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から技術解析などをテーマに野球専門誌に寄稿を開始。修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材し、全国の現場に足を運んでいる

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