【ボクシング】世紀の一戦か、“茶番”となるか メイウェザーvs.マクレガーいよいよ決戦

杉浦大介

マクレガー「たった今、ラスベガスはアイルランドになった」

全米で話題沸騰メイウェザー(左)vs.マクレガーの一戦は、日本時間27日にゴングが鳴る 【Getty Images】

 まるで欧州サッカーのビッグゲームの会場にでもいるように感じたファンも多かったのではないか――。現地時間8月25日、ついに翌日に迫ったフロイド・メイウェザーJr.(米国)対コナー・マクレガー(アイルランド)戦の前日計量が、試合と同じ米国・ラスベガスのT−モバイル・アリーナで行われた。最高で2万人を収容するアリーナはほぼ満員。この日のチケットは無料だが、ストリートでは65ドル程度でやりとりされていたという話も伝わってきた。そして、ファンの大半はマクレガーの支持者だった。

「アイリッシュを打ち負かすことはできない。たった今、ラスベガスはアイルランドになったんだ」

 母国の国旗を巻きつけて公開計量の舞台に登場した29歳のマクレガーは、壇上でそうまくし立てた。一部では154ポンドのスーパーウェルター級の体を作れるかを疑う声も出ていたが、結局は153ポンドで見事にパス。はかりの上でポーズを決め、ここで再び血気盛んなサポーターたちを喜ばせた。
「俺はプロフェッショナル。体重は守るさ。犠牲を払い、献身的な姿勢で取り組んできた。ピークの状態であることを見てほしい」

 この時点でファイトに勝ったような喜びようだったのは、体重調整が厳しかったことの表れか。あるいは試合決定直後から続いてきたファンサービスの一環か。ともあれ、ここでマクレガーのファンたちは“オーレー、オレ、オレ、オレー!”と大合唱し、アリーナはほとんど祭りのような騒ぎになった。

「リングの中央に足を踏み出し、そこから動くつもりはない。誰がやり遂げられるか見てみようじゃないか。明日には俺の体はずっと大きくなる。170ポンドに近い体重でリングに上がるんじゃないかな」

“茶番”の揶揄も……ファンを惹きつける一戦

アイルランドの国旗をまとうマクレガー 【Getty Images】

 真っ向勝負を誓ったマクレガーだが、例えサイズ面のアドバンテージがあったとしても、まともなファイトになるかを疑問視する声は消えない。ボクシングルールでは初めての実戦で、現代の最強王者に挑むのはやはり無謀。一部のマニアから“茶番”と揶揄(やゆ)される今戦が、“盛り上がるのは開始のゴングまで”というよくある結末に落ち着く可能性は低くないのだろう。

 ただ……例えそうだとしても、ファンをこれだけ惹きつけるマクレガーのカリスマ性にあらためて感心しているボクシング関係者は筆者の周囲にも少なくない。米国のボクシングはスポーツ・エンターテインメント。興行の世界で、ファンに愛されることの価値は軽視されるべきではない。アイリッシュの風雲児は、ファイト前の最後の公式イベントでも大アリーナを震撼させ、そのスターパワーを存分に披露して見せたのだった。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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