苦境の“BIG4”に迫る若手選手たち
男子テニスは世代交代の時代へ

ズベレフとは旧知の仲、23歳ドミニク・ティエム

4月のバルセロナ・オープン準決勝でマリー(左)に勝利したティエム
4月のバルセロナ・オープン準決勝でマリー(左)に勝利したティエム【写真:なかしまだいすけ/アフロ】

 そのズベレフとともに今月、ファッション誌『VOGUE』の誌面を「男子テニス新世代の到来」の見出しで飾ったのが、23歳のドミニク・ティエム(オーストリア、世界ランキング8位)。3歳の年齢差はあるものの、二人は少年時代から互いを知り、大会期間中には会場近くのアミューズメントパークに一緒に出かけるほどの友人である。ズベレフの兄のミーシャは、そんな二人を「自然体」だと言い表した。


 今後、ライバルとしてテニス界をけん引していくだろう両選手の、プレースタイルは対照的だ。ベースラインからの、攻撃的で安定感あるストロークを主軸にするズベレフに対し、ティエムは全てのボールに体ごとぶつかるように飛び込んでは、全力で右腕を振り抜き重いスピンショットをたたき込む。特に彼のトレードマークとなっているのが、翼を広げた猛禽類(もうきんるい)のように雄大なフォームで放つ片手バックハンド。躍動感あふれるコート上の姿は、勝敗に関係なく見る者たちの心を捉える。

ナダルを破ったカナダの18歳、シャポバロフ

強さを取り戻したナダルを破り、一気に注目を浴びたシャポバロフ
強さを取り戻したナダルを破り、一気に注目を浴びたシャポバロフ【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 そのようなティエムと環境面やプレースタイルでも共通項が多いのが、18歳にしてランキングを69位にまで急上昇させてきた、カナダのデニス・シャポバロフである。昨年のウィンブルドンジュニア優勝者は、8月上旬のカナダ・マスターズでフアンマルティン・デルポトロ(アルゼンチン)、さらにはラファエル・ナダル(スペイン)までをも破り、地元のファンを熱狂させた。


 この若きサウスポーも、ティエム同様にバックハンドは片手打ち。ダイナミックなプレーを見せると同時に、硬軟自在な多彩なショットを巧みに操る。またティエム、そしてズベレフとも共通するのが、親がテニスコーチだという点だ。シャポバロフの母親は元テニス選手であり、カナダで自らテニスアカデミーを経営する。シャポバロフは幼少期から母親の手ほどきを受け、毎日アカデミーで好きなだけ汗を流してきた。小柄だったシャポバロフに他のコーチたちが両手バックハンドを進めるなか、片手で打つことを推奨し続けたのも、母親だったという。


 これら次代の王者候補生たちに共通するのは、いずれもテニスに囲まれた環境で育ち、なおかつ押し付けられたのではなく、「大好きだから」という理由で、自らテニスを選んだという自覚を持っている点だろう。そして冒頭のズベレフのセリフに象徴されるように、自分たちこそがテニス界の未来を担うのだという、確たる覚悟を抱いていることだ。


 もっともその自覚も覚悟も、テニスを選んだ時のように、そしてオフコートで見せる若者らしい姿のように、どこまでも自然体――。BIG4の一角、マリーは絶好調とは言い難く、ジョコビッチは今季残り試合を欠場する。そんな中で彼らニュージェネレーションが、今年の全米オープンで、新時代の扉を開くかもしれない。

内田暁

テニス雑誌『スマッシュ』などのメディアに執筆するフリーライター。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、08年デルレイビーチ国際選手権での錦織圭ツアー初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)や、アスリートの肉体及び精神の動きを神経科学(脳科学)の知見から解説する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。京都在住。

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