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監督たちが彩る夏の甲子園
うならされた采配、起用を振り返る

明徳・馬淵監督、あえて行かせた伝令

日大山形との延長戦を制し喜ぶ明徳義塾の2番手・市川(写真中)
日大山形との延長戦を制し喜ぶ明徳義塾の2番手・市川(写真中)【写真は共同】

「伝令はね……あえて北本(佑斗)に行かせたんよ」


 明徳義塾(高知)・馬淵史郎監督の、”馬淵節”が響く。


 日大山形(山形)との1回戦は、接戦になった。明徳は6回に3対3の同点に追いつくと、その裏から2年生の市川悠太をマウンドに。試合はそのまま延長にもつれたが、明徳は12回、敵失と今井涼介のタイムリーなどで3点を勝ち越した。迎えた裏の守り。簡単に2死を取りながら、四球とヒットで一、二塁とされると、馬淵監督はタイムを取り、降板していた先発の北本を伝令に走らせたのだ。


「あえて」というセリフには、こんな理由がある。センバツの1回戦。早稲田実(東京)に2点をリードして9回2死までこぎつけた明徳だが、最後の打者の投ゴロをまさかのエラーで生かしてしまう。そしてそこから同点に追いつかれると、延長10回で敗れているのだ。9回、次打者の怪物スラッガー・清宮幸太郎を意識するあまり、痛恨のエラーを犯したのが当の北本。だから勝利まであと一人、という場面での伝令に起用したわけだ。


 一発なら同点の場面。しかし、あと一人からのむずかしさを伝える絶妙な間で肩の力が抜けた市川は、最後の打者をショートフライに打ち取る。


 6対3で試合終了。「厳しい試合を勝ったのは自信になるよ」とにんまりの馬淵監督は、これで夏の甲子園通算31勝。智弁和歌山・高嶋仁監督に次ぐ、単独2位に躍り出た。

前橋育英・荒井監督と誕生日の縁

荒井監督に「バースデー白星」をプレゼントした前橋育英ナイン(写真は7回裏、堀口の適時二塁打で生還する二塁走者・黒沢)
荒井監督に「バースデー白星」をプレゼントした前橋育英ナイン(写真は7回裏、堀口の適時二塁打で生還する二塁走者・黒沢)【写真は共同】

 その明徳と2回戦で当たったのが、前橋育英(群馬)だ。荒井直樹監督、実はかつて、明徳の練習を見学したことがある。


「なかなか勝てない時期、10年ほど前でしょうか。実戦的で、ワンプレーに対する厳しさ、緊張感を見て、すごく刺激になりました。その明徳さんと甲子園で試合させてもらうのはありがたい」


 16日、第8日第2試合。それこそ「緊張感」のある試合は、1点をリードした育英が7回、効果的な2点を追加して3対1で逃げ切った。実はこの日は、荒井監督の53回目の誕生日。初出場で優勝した2013年も、2回戦が誕生日だった。荒井監督は朝の散歩のあとのミーティングで、「誕生日に甲子園で試合ができるなんて、こんな幸せなことはない」とナインに告げている。


 9回。2死から1点を許してさらにピンチが続く。ここで、右手の指がつった皆川喬涼に代わり、緊急救援したのがセンターの丸山和郁だ。2ボール、打者の途中からというむずかしい場面だったが、丸山は最後の打者を三振で締めてゲームセット。丸山はこの日の朝、「絶対に日本一になりましょう」と書いた色紙を荒井監督に贈っていたという。そしてなによりは、白星のプレゼントだ。


「それでも、馬淵さんは春夏通算で甲子園49勝。私は9勝ですから、まだまだです」

楊順行
楊順行

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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