レンジャーズが日本人選手と契約する理由 ダルビッシュ移籍も大谷獲りにシフト?

丹羽政善

数週間前までレンジャーズの一員としてプレーしていたダルビッシュ。5年半の間在籍し、チームを代表する日本人選手となった 【写真は共同】

「なんでここにいるの?」
 
 すれ違いざま、東京ヤクルトのクローザーだったトニー・バーネットが話しかけてきた。
 
「ここにはもう、日本人選手は誰もいないぞ」
 
 バーネットはこの1年半、日本人メディアと顔を会わせるたびに「オス」と軽く頭を下げ、球場を後にするときなどは、「オツカレサマデシタ」と言いながら帰っていったが、そんな彼とのやり取りも、しばらくすることはないのかもしれない。
 
 8月8日(現地時間)、ニューヨーク。
 
 メッツとの2連戦を前にレンジャーズのクラブハウスへ行くと、エイドリアン・ベルトレ、カルロス・ゴメス、コール・ハメルズらがいて、見慣れた光景がそこにあった。

 ただ、1週間ほど前までとは、やはり、空気が違う。
 
 もちろん、2012年に移籍してきたダルビッシュ有がドジャースにトレードされたことがその大きな要因だが、考えてみれば、レンジャーズのクラブハウスから日本人選手が消えたのは10年以来となる。その前にも、伊良部秀輝(02年)、大塚晶文(06〜07年)らが所属し、イチローが所属していたマリナーズとの対戦も多かったことから取材をする機会も多く、レンジャーズに日本人選手がいることは、当たり前だった。
 
 そのことが偶然か必然かといえば、おそらく後者だろう。

日本人選手は過小評価されている

 日本人選手が増えたのは、05年10月にジョン・ダニエルズがGM(ゼネラルマネージャー)に就任してからだ。彼は、28歳41日という史上最年少でゼネラルマネージャーに就任すると、年明けた06年1月にまずは大塚をトレードで獲得。その年大塚は、32セーブをマークすると期待に応えた。
 
 07年には東北楽天のクローザーだった福盛和男と契約。これは完全に失敗に終わったものの、10年のオフに建山義紀、11年7月にはオリオールズから上原浩治(現カブス)をトレードで獲得するなど、立て続けに日本人投手を補強した。そして、12年にはポスティングでダルビッシュを落札。この年、レンジャーズには3人もの日本人選手が在籍することになった。翌13年には上原が去ったが、今度は田中健介(マイナー)が加入し、元北海道日本ハムのメンバーが3人に。その後、15年には藤川球児(現阪神)が移籍し、日本人獲得の流れは続いた。
 
 彼ら以外にも、ダニエルズGMは06年のオフに松坂大輔(現福岡ソフトバンク)がポスティングされると 入札に参加し、黒田博樹(元広島)がメジャー移籍を目指したときにも、動いている。さらには、大谷翔平(日本ハム)や安楽智大(楽天)の獲得も視野に入れた。
 
 そんな日本人選手との関係。数年前、ダニエルズGMに聞くと、こう答えた。
 
「日本人選手は、まだまだ、過小評価されている」
 
 彼にしてみれば、埋もれた存在が、日本にはたくさんいると映る。
 
「日本である程度の実績を残した選手なら、即戦力として期待出来る」
 
 考えてみれば、元広島のコルビー・ルイスやバーネットの獲得もそんな一連の流れであり、彼らがいかに日本でのスカウティングに力を入れているか知れよう。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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