【新日本プロレス】夏の祭典は“4強”が決勝かけ両国決戦 G1クライマックス後半戦 振り返り

高木裕美

IWGP王者として“夏男”を目指すオカダ 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 新日本プロレスの真夏の祭典「G1 CLIMAX 27」は、8日の神奈川・横浜文化体育館大会を終え、いよいよ“クライマックス”に突入。あとは東京・両国国技館3連戦(8月11〜13日)を残すのみとなった。

 今年は28日間に渡り、全国各地で全19大会が行われ、全20選手がA、B2ブロックに分かれて総当たりリーグ戦で対戦。残る両国3連戦では初日の11日にAブロック最終公式戦、中日の12日にBブロック最終公式戦、そして、最終日の13日に各ブロック1位同士による優勝決定戦が実施される。

 優勝者は来年1.4東京ドーム大会のメインイベントでIWGPヘビー級王座へ挑戦できる権利証を獲得することが通例となっている。

Aブロックは棚橋vs.内藤が今年3度目のシングルで決着

過去2回優勝を果たしている棚橋は、Aブロック首位タイ。優勝決定戦進出を賭けて内藤と対戦する 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 Aブロックは現在、棚橋弘至、内藤哲也の2選手が6勝2敗の12点で並び、11日の最終公式戦で優勝決定戦進出を賭けて激突する。

 この試合の勝者となれば、文句なしの決勝進出。また、もし30分時間切れ引き分けとなっても、共に13点となり、再度1位タイで並ぶため、改めて延長戦や再試合という形で両者間で決着をつける形となる。

 棚橋と内藤は今年、IWGPインターコンチネンタル王座を賭けて2度対戦。1.4東京ドームでは25分25秒、デスティーノで内藤が勝利しているが、6.11大阪城ホールでは棚橋が25分56秒、テキサスクローバーホールドでリベンジを果たし、王座を奪取した。また、リング上の戦いではないが、今年開催された雑誌『Number』の「プロレス総選挙2017」では、内藤がぶっちぎりの1位を獲得。棚橋は2位に甘んじている。

 過去のG1の成績においては、棚橋は過去優勝2回(07年、15年)、準優勝3回(04年、10年、13年)。一方、内藤は優勝1回(13年)、準優勝1回(11年)。13年はこの両者で優勝決定戦を争っている。

 かたや本隊のエース、かたや反体制を掲げる制御不能なカリスマと、いまや両極端な2人だが、共通点も多い。共に幼少期からのプロレスファンであること、かつて新日本マットで黄金時代を築いた武藤敬司から多大なる影響を受けていること、「天才」と称されたことがあること、そして、過去には会場を覆いつくすほどの大ブーイングを浴びていたことだ。

「似たもの同士」の2人が雌雄を決する

4年ぶり2度目の優勝を狙う内藤。Aブロック最終戦で棚橋と雌雄を決する 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 棚橋はかつて、デビュー4年目に起きた致命的なスキャンダルもあり、特に男性ファンからは「チャラ男」扱いを受けていたが、師匠・武藤からの全日本プロレス移籍話を断り、「冬の時代」を迎えた新日マットを必死に支え続けたことで、徐々に観客の支持も拡大。試合後の濃厚なファンサービスで来場者の満足度を上げ、「プロレス女子」だけではなく、男性ファンも獲得した。

 一方、内藤にとって、もともと棚橋は憧れのレスラーであり、デビュー当初はタッグも結成していた。12年の1.4東京ドーム大会では、武藤との一騎打ちも実現。かつて武藤や棚橋が達成した「20代でのIWGPヘビー級王座戴冠」を宣言し、新日本最高峰のベルトにひたすら憧れ、こだわり、もがき苦しんだが、その姿は、観客の共感よりも、反感を呼ぶことに。そこまでしても結局ベルトには届かなかったことで、やがて「正統派エース」の道をはずれ、独自路線を歩んでいくことになった。

 8日の横浜大会で行われた6人タッグ前哨戦では、内藤が棚橋の古傷である右腕に集中砲火を浴びせ、鉄柵を用いて破壊。試合後も握手を求めるとみせかけ、腕をかばってエアギターで応じた棚橋の右腕めがけてドロップキックを炸裂させるなど、なりふり構わぬ姿勢を見せた。

 果たして、棚橋が2年ぶり3度目の優勝を果たし、リング上で優勝旗を破壊した前回以上の「伝説」を作るのか。それとも、内藤が4年ぶり2度目の優勝で、14年1.4東京ドーム大会のセミファイナルに“降格”した雪辱を晴らすのか。観客は新日本復活の礎を築いたエースを支持するのか、それとも、会社批判を繰り返す反逆児を推すのか。今年3度目の一騎打ちで、その審判が下される。

飯伏幸太がベルト戦線に復帰するか

棚橋越えを達成したときに身に付けた飯伏の「カミゴェ」 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 また、両国では、現在バッドラック・ファレと並んで3位タイ(5勝3敗=10点)の飯伏幸太にも注目だ。

 飯伏は開幕戦の内藤に続き、ファレ、真壁刀義にも敗れ、優勝争いにあと一歩及ばなかったものの、8月1日には地元・鹿児島で棚橋から念願の初勝利。神と崇める棚橋を破ったことで、フィニッシュとなった新技のニーを「カミゴェ」と命名。当初は「カミゴエ」と発表されたが、後に、もう1人の尊敬するレスラーである中邑真輔のボマイェにあやかり、「カミゴェ」に正式決定した。

 飯伏は最終戦では、昨年の準優勝者である後藤洋央紀と対戦。後藤には15年の「NEW JAPAN CUP」決勝戦で勝利しており、飯伏はこのNJC優勝の権限を使って当時AJスタイルズが保持していたIWGPヘビー級王座への挑戦を実現させている。現IC王者である棚橋に公式戦で勝利したことで、タイトル戦線復帰の機運が一気に高まってきた飯伏が、再び後藤を下し、新たなベルト獲りの足がかりとなるのか期待される。

【Aブロックここまでの成績】
内藤哲也(6勝2敗=12点) 最終戦=棚橋
棚橋弘至(6勝2敗=12点) 最終戦=内藤
飯伏幸太(5勝3敗=10点) 最終戦=後藤
バッドラック・ファレ(5勝3敗=10点) 最終戦=永田
後藤洋央紀(4勝4敗=8点) 最終戦=飯伏
石井智宏(4勝4敗=8点) 最終戦=ザック
ザック・セイバーJr.(4勝4敗=8点) 最終戦=石井
真壁刀義(3勝5敗=6点) 最終戦=YOSHI-HASHI
YOSHI-HASHI(2勝6敗=4点) 最終戦=真壁
永田裕志(1勝7敗=2点) 最終戦=ファレ

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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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