スルガ銀行杯での活躍を誓うR・シルバ 「亡くなった2人のためにゴールを」

渡辺達也

現在のチーム状況から、シャペコエンセと対戦するスルガ銀行杯のことまで、R・シルバに話を聞いた 【撮影:大崎聡】

 2017年シーズン、浦和レッズは開幕前から優勝候補の一角に挙げられていた。序盤こそ順調なスタートを切ったが、6月4日の柏レイソル戦から3連敗を喫するなど徐々に失速。7月30日には、チームを率いて6年目のミハイロ・ペトロヴィッチ監督を解任、堀孝史コーチが新監督に就任した。

 そんな中、アルビレックス新潟から今季加入したラファエル・シルバは、浦和の特殊なシステム、戦術にいち早く順応し、結果を残してきた。

 なぜ、彼は新参者にとってはハードルが高いといわれる浦和のサッカーに順応できたのか。現在のチーム状況や母国ブラジルのシャペコエンセと対峙(たいじ)する8月15日(火)のスルガ銀行チャンピオンシップ2017(スルガ銀行杯)に至るまで、本人に話を聞いた。(取材日:17年7月27日)

いつか浦和の一員になりたいと思っていた

R・シルバは「いつか浦和の一員になりたいと思っていた」と語る 【撮影:大崎聡】

――16年シーズンのオフには、たくさんのクラブからオファーがありました。その中から浦和を選んだのはなぜですか?

 浦和はビッククラブで、常にタイトルを獲得するために戦うチーム。毎年、素晴らしい結果を残すチームの一員になりたい。そういう理由で選びました。

 もちろん、サポーターからのプレッシャーも、ほかのクラブとは違いますし、タイトルを獲得しなければいけないという責任の重さもあります。それを理解した上で浦和を選んだんですけれども、新潟でプレーしていた当時から、いつか浦和の一員になりたいと思っていました。

――新潟でプレーした2年半で見せた活躍が、多くのクラブからのオファーにつながったと思います。

 僕にとって、あの2年半は貴重な経験でした。日本のサッカー、環境に慣れるという意味でも、いろいろと勉強になりました。今、浦和は厳しい状況ですけれど、僕が新潟でプレーしていた2年半は、常に残留争いをしていて、もっと悪い状況でした。ですが、そういう状況が僕を強くしてくれたと思っています。

――外から見た浦和と、実際に中に入ってプレーした時の浦和とでは、違いはありますか?

 僕が思っていた浦和と、ほとんど変わりませんでした。日々の練習で100パーセントの力を出し切らないといけない。チームメートであっても、いい意味でライバルであって、お互いに刺激し合うような練習も必要。実際に、そういう戦いもあります。チームになじむのには、それほど時間はかからなかったですし、戸惑いもありませんでした。

「周りの選手を生かす」という意識は常にある

今季は興梠とのコンビで多くのゴールを生み出してきた。常に「周りの選手を生かす」という意識を持っている 【(C)J.LEAGUE】

――1トップとシャドーと2つのポジションでプレーしていますが、どちらが自分に合っていると思いますか?

 やりづらさは、どちらのポジションにもないです。それぞれに良さがあります。シャドーでプレーすれば、前を向いてボールをもらえることが多くなるので、ドリブルを生かすことができます。

 1トップは、シャドーよりも前を向いてボールをもらう機会は少なくなりますが、よりゴールに近い位置でプレーできるので、ゴールを決める可能性が高くなります。僕は、どちらのポジションでも問題ないです。

――今シーズン、興梠慎三選手がたくさんゴールを決めており(第18節終了時点で12得点)、それはR・シルバ選手が加わったことが大きいと思います。周りの選手を生かすという意識はありますか?

 興梠選手はすごく質の高い選手ですから、僕がピッチの中で彼を生かすということは、とても光栄なことです。素晴らしい選手なので、彼を生かすことは難しいことではありません。彼のポテンシャルと僕のポテンシャルが組み合わさったことで、さらにチームの力になったことはうれしいこと。彼だけではなく、周りの選手を生かしたいという気持ちは常に持ってプレーしています。

――R・シルバ選手の加入は、浦和に足りなかった「ストライカー」というラストピースと考えられていましたが、それよりもチームの中で自分をどう生かすかという考えなのですね。

 浦和というのは、そういうチームでなければいけないと思います。個人の選手の力、1人に頼るチームではありません。実際に自分たちが結果を出していた時は、お互いのコンビネーションで相手を打開して勝っていました。自分たちの力はそこにありますし、1人の選手に頼る必要はないと思っています。

 もちろん、僕のラストパス、僕のゴールでチームが勝てば、それを超える喜びはありません。ですが、僕のポテンシャルというのは、個人で打開してゴールを決めるというよりも、周りとの連係で何かを生み出すというものだと思っています。ですから、浦和に移籍しても、すぐにひとつのピースとしてチームにハマったのだと思います。

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著者プロフィール

1957年生まれ。『週刊プレイボーイ』をはじめ、専門誌などに幅広く執筆するスポーツライター。国内サッカーに精通し、カテゴリーを問わず取材を行なっている。ワールドカップは90年イタリア大会から6大会連続で取材。近著に『名波浩対談集』(集英社)、『もう一回蹴りたかった』(望月重良共著/ぴあ)がある

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