ダルビッシュ第2章は支配的なスタート “ベストチーム”で感じる明るい未来

杉浦大介

ドジャースでの初先発で支配的なピッチングを披露したダルビッシュ 【写真は共同】

 期待通りの支配的なパフォーマンスだったと言っていいのだろう。

 8月4日(現地時間)、トレード期限に電撃的にドジャースに移籍したダルビッシュ有が、ニューヨークでのメッツ戦で新天地での初先発。7回を投げて3安打、1四球、10奪三振で無失点というほぼ完璧な内容で6対0での勝利に貢献した。

「初回は変な感じがありました。守っている選手も違いますし……。でも2回からは普通にいつも通り投げることができたと思います」

 試合後にダルビッシュはそう振り返ったが、実際に開始直後は少なからずの緊張が感じられた。先頭打者のマイケル・コンフォートに安打を許すと、3番のジェイ・ブルースを歩かせて1死一、二塁のピンチを招く。しかし、ここで後続を抑えて無失点で切り抜けると、以降はスムーズな投球を続けていった。

「ドジャースに来ての緊張というか、前回10点取られているので、今日もやったらやばいんじゃないっていうので、大丈夫かなというのがあった」

 本人のそんな言葉通り、レンジャーズでの最後の登板となった7月26日のマーリンズ戦では自己ワーストの10失点と打ち込まれた。悪夢のマウンド直後で、しかもドジャースでのデビュー戦。個人的なプレッシャーのかかる先発機会で、自身としては6月12日以来となる勝ち星を得た意味は大きい。

「スタジアムは満員だった。プレーオフのような雰囲気とまでは言わないが、選手、コーチ陣もユウの登板にエキサイトしていて、エネルギーに満ちあふれていた」

 デーブ・ロバーツ監督がそう振り返った通り、この日のシティ・フィールドは華やかな雰囲気だった。名門ドジャースの年に1度のニューヨーク来訪とあって、アレックス・ロドリゲス、ジョー・トーリ、ボビー・バレンタイン、サンディ・コーファックスといった球界の重鎮たちもフィールドに姿を見せた。

ビッグ・ユニットのような2カ月も可能

 そんなビッグステージで、主役になったのは30歳の日本人右腕。『Elias Sports』によると、1900年以降、初先発で10奪三振以上&1四球以下をマークしたドジャース投手は今夜のダルビッシュが初めてだったという。“快刀乱麻”と呼んでも遜色はないパフォーマンスを見て、関係者、ロサンゼルスからこのゲームに注目したファンも、あらためてダルビッシュの力量に感嘆したはずだ。

「ダルビッシュはキャリアを通じてナ・リーグのチーム相手には1試合平均11.8奪三振、WHIPは1.06、被打率2割8厘。そんな彼なら、98年のランディ・ジョンソンのような2カ月を過ごすことだって非現実的ではない」

 ダルビッシュのドジャース移籍が決まった7月31日、日米の両方でプロ生活を送り、現在は解説者を務めるCJ・ニコースキーがそうツイートしていた。さて、“ランディ・ジョンソンのような2カ月”とは?

 98年、マリナーズから当時はナ・リーグに属していたアストロズに7月31日に移籍して以降、ジョンソンは10勝1敗、防御率1.28というとてつもない数字を残した。この年、アストロズはチーム史上唯一のシーズン100勝以上となる102勝を達成。その原動力になった通称ビッグ・ユニットの怪物的な働きは、メジャー史上でも燦然(さんぜん)と輝いている。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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