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侍ジャパン稲葉新監督への期待と懸念
強化本部の新設は明るい材料

選考で重視された4つのポイント

侍ジャパンの監督就任が発表され、記者会見で意気込みを語る稲葉新監督
侍ジャパンの監督就任が発表され、記者会見で意気込みを語る稲葉新監督【写真は共同】

 米国にわずか1点、重い1点が届かずに準決勝敗退した第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)から4カ月。野球日本代表「侍ジャパン」は7月31日、前回大会限りで退任した小久保裕紀前監督の下で打撃コーチを務めていた稲葉篤紀氏が後任になると発表した。


 3月から選考していたという侍ジャパン強化委員会の井原敦委員長は東京五輪での金メダル獲得に目標を絞り、そのポイントとして(1)求心力(2)短期決戦対応力(3)国際力(4)五輪対応力の4点を掲げた。そうして全会一致で決まったのが、稲葉新監督だ。現役選手として北京五輪やWBCに出場、小久保ジャパンで打撃コーチを務めた経験を評価したと井原委員長は明かしている。


「国を背負って戦う東京五輪という大舞台での頂点を目標に据えた場合、国際大会の経験は大変重要と考えました。短期決戦に向けたチームの作り方、戦い方を熟知されており、小久保前監督が培った常設侍ジャパンを継続、発展させて、金メダルにつなげてもらえると考えています」


 そう話すと、周囲が懸念材料と考えるであろう点についてはこう加えている。


「監督経験につきましては、小久保前監督と同様にこれからの3年間で経験値を高めて五輪に臨まれると判断しています」


 稲葉氏が(1)から(4)について持っているのは、あくまで選手、コーチとしての話だ。それらを監督として発揮できるかは、蓋を開けてみるまでわからない。実際、稲葉氏は要請を受けるにあたって監督経験のなさを不安に感じたというが、「3年後の五輪に向けて自分自身に何ができるのかという思いが上回りましたので、監督を引き受けさせていただきました」と話している。


 侍ジャパンの指揮官には東京五輪の金メダルが厳命される一方、就任条件に“制約”があるのも事実だ。侍ジャパンという常設チームの顔になることが求められ、プロ野球の現役監督には託しづらい。反面、その報酬は割に合わないと見られ、現実的な候補は限られてくる。

国際大会で監督としてのレベルアップを

 そうして浮かび上がった稲葉監督に対し、指揮官としての経験がないなら、これから積ませればいいと侍ジャパン強化委員会は考えたわけだ。極端に言えば今年11月の「アジアチャンピオンシップ」、2019年の「プレミア12」を東京五輪までの準備期間と捉えるなら、負けてもいい。そうした大会で采配を重ね、五輪本番までに稲葉監督がどれだけレベルアップできるかがカギになる。


 第4回WBCで小久保前監督は攻撃面で柔軟な打順変更、相手に応じての作戦変更など好采配を振ったのに対し、投手陣は権藤博コーチ任せだった。投手コーチに任せるのは一つの手段と言えるが、クローザーを固定しない起用法に現場から戸惑いの声も聞こえた。さらに言えば、今季のペナントレースで絶好調の則本昂大(東北楽天)だが、WBCでは持てる能力をチームに還元できなかった。その要因は起用法と無関係ではない。


 前任者同様、稲葉監督が投手コーチにその起用法をすべて任せる場合、前回WBCのようにうまくいかなかった際、しっかり口を挟めるのか。小久保前監督にとって33歳上の権藤コーチに物を言える関係ではなかったならば、そうした存在を投手コーチにするのが間違いだった。今回は他のポジションも含め、コーチ陣の陣容も大きなポイントになる。

中島大輔
中島大輔
1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。著書に『人を育てる名監督の教え すべての組織は野球に通ず』(双葉新書)。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年『中南米野球はなぜ強いのか』を上梓。

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