連敗中に中村悠平が見せたリーダーシップ 〜燕軍戦記2017〜

菊田康彦

これからは心を鬼に

連敗中にミーティングを招集した中村悠平 【写真は共同】

 ただし、中村にはまだ気がかりな点がある。

「負けてるからかもしれないですけど、今年は甘さであったりぬるさであったり、そういうところが目に付いちゃうんですよね。宮本さんとか相川さんがいた頃は、もうちょっと規律があったと思うんですよ。フレンドリーなのはヤクルトのいいところですけど、こういう時(連敗中)はもうちょっとピリピリ感があってもいいと思うし、一つのミスやプレーに対して『なんでああいうことになったんだ』と、みんなで言い合えるようにならないといけないのかなと思います。宮本さんたちが作ってくださった伝統は残さなきゃいけないし、僕は直々に自主トレにも連れて行ってもらいましたしね」

 だからこそ、これからは自身も心を鬼にすると誓う。

「僕はたぶん優しい部類だとみんなに思われていて、それはそれでいいと思うんですけど、自分でも少しずつ変わっていこうという決心というか……。これからは自分がチームを引っ張って、嫌われ役じゃないですけど、ダメなものはダメってピッチャー陣にもしっかり言えるようにやっていこうと思ってます。いろんな人の話を聞くと、古田(敦也)さんもバシバシ言ってたみたいですし」

「自分にとっては非常に大きな出来事」

 根底にあるのは「勝ちたい」という強い気持ちだ。

「やっぱり負けるのは悔しいし、同じ相手に何度も負けたくない。僕は負けず嫌いなんです。そうはいっても僕一人じゃゲームに勝てないんで、みんなの意識を1つにして束になってやらないと。『ケガ人が出てるからしょうがない』で責任は逃れられないんで、選手としては」

 その意味でも、初めて自ら招集した野手だけのミーティングは意義のあるものだった。

「自分にとっては非常に大きな出来事だったと思います。これをきっかけに、自分ももう一回りも二回りも大きくなって、キャプテンシーというかそういうものを持ってやらなくちゃいけないと思いますね。自分が言うことで、自分もしっかりしなくちゃいけないのは確かですし、それはそれでいいことなのかなと思います」

 交流戦中の10連敗に続く今季2度目の大型連敗を止めたのもつかの間、7月23日の阪神戦に敗れ、ヤクルトの借金は再び「28」となった。3位のDeNAとは16.5ゲーム、5位の中日にも9.5ゲームもの大差をつけられている。クライマックスシリーズ進出も絶望的な状況だが、中村には1試合たりとも無駄にできる試合はない。残り55試合、すべてを糧にしてナインとともに成長していく。

 いつの日か「ヤクルトは中村のチーム」と呼ばれることを目指して──。

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著者プロフィール

静岡県出身。地方公務員、英会話講師などを経てライターに。メジャーリーグに精通し、2004〜08年はスカパー!MLB中継、16〜17年はスポナビライブMLBに出演。30年を超えるスワローズ・ウォッチャーでもある。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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