田中将大、早くもワースト被弾数も… マリナーズの打者が感じた復調の気配

丹羽政善

マリナーズ戦の3回、ギャメルに一発を浴び今季26本目の本塁打を許した田中 【写真は共同】

 やはりボールは飛ぶのかもしれない。いや、飛ぶのだろう。

 22日(現地時間)に行われたマリナーズvs.ヤンキースの一戦、同点の8回にロビンソン・カノが、デービッド・ロバートソンの外角低めの真っ直ぐを捉えた打球は、低空のままレフトフェンスを超えていった。打者がカノとはいえ、左打者がセーフコ・フィールドのレフトスタンドへ、あの角度で運んだ打球は記憶にない。

「夏のセーフコ・フィールドは、飛びますけどね」とマリナーズの岩隈久志。雨が多いシアトルだが、確かに夏になると空気が乾燥し、打球の飛距離が伸びる。しかし、“とはいえ”という打球は、カノの一発に限らない。

「そうですね、“とはいえ”ですね」。岩隈も同意した。

相性のいい球場で2発被弾

 この試合は田中将大が先発。セーフコ・フィールドではそれまで3戦3勝、防御率1.17と相性は良かったが、3回に2本塁打を許すなど一挙4点を奪われた。

 立ち上がりは無難。初回、2回とも、1本ずつヒットを許したが、いずれも2アウトから。制球も安定していた。ところが3回、先頭のマイク・ズニーノに粘られた後、フルカウントからの7球目――田中いわく、「抜けたカット」が真ん中に入ると、それを左中間へ運ばれた。

 この打球に関してはもっとも、ボールに関係なく、昨年も柵越えしていたのではないか。ズニーノは三振が多くムラのある打者だが、パワーは非凡だ。

 しかし1死後、真ん中やや内よりのカーブをベン・ギャメルに右中間へ運ばれた一発に関しては、まさかの飛距離だった。昨年は57打席で1本塁打のギャメル。これではサンプルが少なすぎて参考にならないが、マイナーでは2015年に551打席で10本塁打を放ったのが最多。マイナー通算では2964打席で27本しか本塁打がなく、決して、長打力のある打者ではない彼が、今季早くも6本目をマーク。対照的に田中は、この1本で今季の被本塁打が26本となってキャリアワーストを更新した。

「ボールが飛ぶかもしれない」という声

 その翌朝のこと。岩隈が、興味深いことを口にしている。

「(打球が飛ぶのは)今年だけじゃないかもしれない」 

 もっと前から?

「そう、ここ何年か徐々に。5年前だったら(スタンドに)入らなかったような打球が、ホームランになっているような気がする」

 実はズニーノさえ、「ボールが飛ぶかもしれない」と話していた。普通、打者は自分たちの技術が上がったと考えるが、彼はキャチャーでもあるだけに、別の視点がある。

「キャッチャーの立場で言えば、これが入るか、という打球はある」

 田中の調子自体、悪くはなかった。

「試合全体を通して前回(レッドソックス戦)と比べるなら、シャープさはなかった」と話した田中だが、4回以降、6回で降板するまではパーフェクト。その3イニングで要した球数はわずか27球だった。東北楽天時代のチームメートだった岩隈の目にも、「丁寧に投げている」と映り、「腕も振れていた」と印象を語っている。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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